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金:最も展延性が高い元素の事実と歴史と用途

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金は、海賊の戦利品であり、超小型回路の材料でもある。少なくとも紀元前4000年から宝飾品に使われ、数十年前からはがんの治療にも使われている。虹の「根元」にあるとされる壺にも入っているし、宇宙飛行士が装着するバイザーのコーティングにも使われている。金は、古さと新しさ、そして神話と科学をシームレスに橋渡しする元素なのだ。

金の特性

元素周期表の79番目に位置する金は、認識しやすい元素の一つだ。展延性と光沢を併せ持ち、金属加工の材料に適している。化学的に言えば、金は遷移金属だ。遷移金属は、最外殻の電子(原子核を取り巻く負の電荷を帯びた粒子)だけでなく、外2層の電子殻を使って、他の元素と結合できる点でユニークだ。これは、遷移金属に含まれる大量の電子が、原子核を取り巻く複数の電子殻に電子が規則正しく配置されるのを干渉するために生じる現象だ。

  • 原子番号(原子核に含まれる陽子の数):79
  • 原子記号(周期表の記号):Au
  • 原子量(原子の平均質量):196.9665
  • 密度:1立方センチ当たり19.3グラム
  • 室温相:固体
  • 融点:華氏1,947.7度(摂氏1,064.18度)
  • 沸点:華氏5,162度(摂氏2,850度)
  • 同位体(原子番号は同じだが、中性子数が異なる原子)の数:18~59。どこに同位体の線を引くかによって異なる。人工的につくられた金の同位体の多くは、マイクロ秒~ミリ秒で崩壊し、他の元素に変化する。安定同位体は1種
  • 最も一般的な同位体:Au-197。天然に存在する金の100%を占める

金はどのように形成されるのか?

Explosion in space

金は、既知の宇宙に存在する元素のごく一部を占める。その希少性の理由は、形成に必要なエネルギーの量が想像を絶するほど大きいことだ。『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』によれば、金は恒星の中で形成されるが、超新星爆発を起こしている恒星や、とてつもなく強力な衝突で一つになった高密度の恒星に限られる。

太陽に代表される恒星は、核融合によってエネルギーを生み出している。核融合とは、軽い元素が融合して重い元素になることだ。まず、最小の元素である水素を主成分とする恒星があるとしよう。中心核の巨大な圧力と熱で核融合が進み、その過程でヘリウムが生成される。水素が少なくなり、恒星のライフサイクルが次の段階に入ると、ヘリウムを融合して重い元素をつくり出す。そして、同じことが繰り返される。

このプロセスは鉄元素まで続き、突然、バランスが変化する。オレゴン大学の資料によれば、鉄の融合はエネルギーを生み出さず、むしろ消費するためだ。自身の巨大な圧力と重力に対抗する内部エネルギーの生成手段を失うと、恒星は崩壊を開始する。NASAの資料によれば、恒星が大きい場合、超新星爆発という大規模な爆発が起きる。そして、超新星爆発の驚異的なエネルギーによって、金を含む重い元素が生成される。

歴史上の金

東欧から中東、エジプトのファラオの墓まで、古代世界の至るところに金が登場する。オーストラリア政府の資料によれば、5000年前、巨大なナイル川古代エジプト王国の繁栄の鍵を握っていた。川の水のおかげで、流域は作物に恵まれ、市民や軍隊に十分な食料を供給できた。そして、その水とともに、輝く黄色の金属も流れてきた。砂金だ。エジプト人はこの美しい金属を熱心に集めた。これらは純粋で展延性に優れるため、ほとんど精錬することなく、魅力的な装飾品に加工できることを発見したのだ。

金を装飾品にしていたのは古代エジプトだけではない。英国ロンドンの郊外で埋葬されていた石器時代の女性は、金の首飾りを身に着けていた。紀元前3世紀のケルト人は金歯を使用していた。紀元前128年に死去した中国の王は、金箔で装飾された戦車をはじめとする貴重な品々とともに埋葬されていた。

The mask of Tutankhamun

金は、富の象徴、そして単位となり、時代を超えて世界中でその魅力を認められた。エジプトのファラオとその墓が金をまとった数千年後、アステカ帝国における黄金の富は、貴金属を求めてスペインからやって来たコンキスタドール(侵略者)たちに略奪された。『ナショナル・ジオグラフィック』誌によれば、さらに年月を経て19世紀半ば、カリフォルニアの「ゴールドラッシュ」で財を成すため、米国西海岸に労働者が押し寄せた。つまり金は、人類を外交や集団移動、さらには大量虐殺に駆り立ててきた。この金属がなければ、私たちの歴史は全く違うものになっていただろう。

オーストラリアの歴史においても、金は大きな役割を果たしている。19世紀後半、ゴールドラッシュに沸いたこの地に多くの人が押し寄せ、オーストラリアの人口は3倍に増加した。オーストラリア政府によれば、現在も金鉱山はあちこちにあり、金の採掘が続けられているという。一方、エボリューション・マイニング(Evolution Mining)という企業は、金を探しているときに別の宝を見つけた。金鉱を探して、オーストラリアの奥地を掘削していたとき、衝突クレーターの外縁に形成される「シャッターコーン(表面に無数の溝を持った岩石)」とよく似た岩石を掘り当てたのだ。Forbesによれば、エボリューション・マイニングは高度なマッピング技術を駆使し、直径約3.1マイル(約5km)に及ぶ隕石衝突クレーターの存在を確認した。金鉱よりさらに希少な発見だ。

金のカラットとは?

金の宝飾品のほとんどは純金製ではない。ネックレスや指輪に含まれる金は、カラット単位で計量される。純金は24カラットだ。米国の金塊保管所があるフォート・ノックスなどに保管されている金の延べ棒は、純度99.95%の24金とされている。

宝飾品をつくる際、金にほかの金属を加えると、金の純度が下がり、カラットの数字も小さくなる。例えば、12金の場合、金と合金の割合は重量比で1対1だ。

カラットの語源はイナゴマメだ。古代アジアの市場では、金の重さを量るとき、てんびんの片側にイナゴマメを乗せていたのだ。

フォート・ノックスにはどれくらい金があるのか?

米国では1937年、金準備の増加に対応するため、ケンタッキー州のフォート・ノックス陸軍基地に、米国政府の金塊貯蔵庫が開設された。最初の金塊は、造幣局本部のあるペンシルベニア州フィラデルフィアから、軍が護衛する列車によって運ばれてきた。

フォート・ノックスの建物は、鉄骨とコンクリートの壁でできている。20トンの鋼製扉で守られているにもかかわらず、1970年代には、フォート・ノックスの金塊が消えたという噂が流れた。人々の不安を和らげるため、造幣局の局長が、議員やジャーナリストを貯蔵庫の一室に案内し、8フィート(約2.5メートル)近い高さまで積み上げられた3万6236本の金塊を見せた。

米造幣局によれば、財務省が保有する金の約半分がフォート・ノックスに保管されている。財務省によれば、金塊1本当たりの重さは400トロイオンス(約12.5キロ)。1トロイオンスは約31.1035グラムだ。2021年時点の保有量は1億4730万トロイオンス(約4580トン)で、現在の相場では約1300億ドルの価値がある。フォート・ノックスの保有量は1941年12月31日、史上最高の6億4960万トロイオンス(約2万200トン)を記録したと造幣局は報告している。

フォート・ノックスに保存されてきた貴重品は、金塊だけではない。例えば、第2次世界大戦中には、独立宣言や憲法、権利章典がフォート・ノックスで保護され、1944年、ワシントンD.C.に返還された。造幣局によれば、マグナ・カルタや、ハンガリー王に受け継がれてきた聖イシュトバーンの王冠、剣、つえ、宝珠、ケープなども、歴史上のある時点でフォート・ノックスに保管されていたという。

愚者の黄金とは?

黄鉄鉱は、愚者の黄金(fool’s gold)と呼ばれ、外見だけ金に似ている。金よりも一般的に存在する金属で、硬く、もろい鉱物だ。粉末にしたときの色は緑がかった黒だが、本物の金粉は黄色だ。黄鉄鉱は、硫黄から成り、第2次大戦中、工業用硫酸の原料として採掘された。現在は、車のバッテリー、家電、宝飾品、機械などに使用されている。

見つけたものが黄鉄鉱だったらがっかりするかもしれないが、や本物の金の近くで発見されることが多い。黄鉄鉱を手にした途端、掘るのをやめてしまう採掘者こそ、もしかしたら本当の愚者なのかもしれない。

金に関する興味深い事実

  • ローレンス・リバモア米国立研究所によれば、世界における金の3分の2が南アフリカで採掘されている
  • アメリカ自然史博物館の資料によれば、全世界で1年間に供給される金の78%が宝飾品に使われている。残りの用途は電子機器、歯科、医療など
  • 金の原子記号であるAuの由来は、ラテン語で金を意味するaurum(アウルム)
  • 宇宙飛行士のヘルメットには、金の薄膜でコーティングしたバイザーが装着されていた。金は、太陽からの有害な紫外線を遮断する
  • 世界最大の結晶自然金はベネズエラ産で、大きさはゴルフボールくらい。重さは7.7オンス(217.78グラム)で、約150万ドルの価値がある
  • 地震は金を生み出す。2013年、学術誌『Nature Geoscience』に、地震の際に断層や亀裂の水が気化し、金が残留するという研究結果が発表された
  • 全米鉱業協会によれば、紀元前560年、小アジアのリュディア王国で世界初の純金製硬貨が製造された
  • 金には、人工的な放射性同位体が複数存在するが(正確な数については、科学者の間で意見が割れている)、天然に存在するのはAu-197のみ
  • 金は食べられる──本当に食べたいのであれば。グルメ向けの食料品店には、お菓子からウォッカ、オリーブオイルまで、あらゆるものを輝かせる食用の金箔が売られている。おなかを壊す心配はない。金箔を販売するエディブル・ゴールド(Edible Gold)によれば、金は消化されず、そのまま排泄されるという。

金はどのように使われているのか?

金は、医療にも使われている。放射性同位体のAu-198を、悪性腫瘍がある場所に直接注入することで、体内の他の部分にあまり影響を与えることなく、放射線で腫瘍細胞を破壊できる。ある研究チームが2012年に『PNAS(米国科学アカデミー紀要)』で、Au-198のナノ粒子と、茶葉に含まれる化合物で前立腺がんを治療できると報告した。茶葉の成分が腫瘍細胞に引き寄せられ、放射線治療が行われている数週間にわたって、ナノ粒子が適切な場所に維持されるという仕組みだ(人に対するテストはまだ行われていない)。

金のナノ粒子でなければ薬が効かないケースもある。抗がん剤のTNF-αは、がんをとても効果的に殺すが、残念ながら健康な細胞にとっても驚くほど有害だ。しかし、米国立がん研究所のオンライン出版物「Benchmarks」によれば、TNF-αの薬剤を金のナノ粒子に結合させると、薬剤がターゲットで効率的に機能する。現在進行中の臨床試験では、腫瘍の治療が成功しているという。

人類が金を愛し続けることには、1つだけ問題がある。金を地中から取り出すときのことだ。米イリノイ州にあるノースウェスタン大学の博士研究員として化学研究を行うジーチャン・リュウ(Zhichang Liu)によれば、1年間に採掘される金2700トンのうち、約83%がシアン化法で抽出されている。この手法では、シアン化物を使って鉱石から金を浸出させる。残念ながら、シアン化物は有毒で、この手法は決して環境に優しいとは言えない。

しかし、金の宝飾品(や電子回路、ナノ医療)を愛する人にも希望はあるかもしれない。リュウのチームは2013年、学術誌『Nature Communications』に、有毒なシアン化物ではなく、無害な炭水化物によって、鉱石から金を抽出する方法を見つけたと報告している

リュウはLive Scienceの取材に対し、「実は、この方法は偶然見つけたものです」と語っている。リュウのチームは、多孔質材をつくるため、α-シクロデキストリンという環状オリゴ糖に、「金塩(Gold salts)」とも呼ばれる「金イオンが含まれる塩」を混ぜた。すると、驚いたことに、溶液からすぐに金が析出したのだ。

リュウによれば、ワンステップで容易に純度97%以上の金を抽出できるという。チームはこの手法の特許を取得。現在、投資家とともに、規模の拡大を進めているところだ。「シアン化法に代わる、環境に優しい方法を完成させたいと思っています」とリュウは述べている。

追加資料

この記事は、Live ScienceのStephanie Pappasが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。