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プラチナと希土類元素の合金が、燃料電池コストを削減する未来

  • マテリアル
2022/12/7

高価な白金と、安価な希土類元素のランタン(La)を組み合わせて、次世代燃料電池の触媒として機能する合金を生成する方法を、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の研究チームが考案した。燃料電池の性能向上と低コスト化につながる研究成果だ。大型輸送車両は、バッテリーによる動力供給がしにくいが、今回の研究成果によってその脱炭素化が容易になるはずだ。

自動車の動力をクリーンにする競争においては、バッテリーが水素燃料電池に勝ったのかもしれない。しかし、さまざまな原因によって、内燃エンジンから蓄電池への切り替えが難しい輸送形態も多い。特に、船舶や航空機、長距離トラックなどの大型輸送車両では、提供するサービスに必要なバッテリーの重量や体積が障害の一つとなる。この場合、代わりに何らかのクリーンな動力に頼る可能性が高いと、大半の輸送アナリストが示唆している。

燃料電池は、水素の化学エネルギーを電気に変えることで車両に動力を供給できる。その他に発生するのは、水と熱だけだ。これまでのところ、人工衛星からスペースシャトルまでのさまざまな装置で最も広く利用されている燃料電池のタイプは、100年近く前に発明されたアルカリ電解質形燃料電池(AFC:Alkaline Fuel Cell)だ。次世代に注目される可能性が高いのは、固体高分子形燃料電池(PEMFC)のようなタイプだ。PEMFCも水素を使って電気を生成するが、はるかにコンパクトなため大型輸送車両にとっては特に魅力的なものとなる。

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白金とランタンを組み合わせたナノ粒子を電極触媒として作用させ、電気と水を生成する水素燃料電池の化学反応を高速化

燃料電池の電気化学反応効率を向上させ、燃料電池のコストを削減し、化石燃料との競争力を高める上でカギとなるのは、より優れた触媒(化学反応を加速させる物質)を見つけることだ。

発電に関与する主要な化学反応である酸素還元反応(ORR:Oxygen Reduction Reaction)を可能にする全ての「電解触媒」の中で、群を抜いて優れているのが白金だが、残念なことに希少金属であり安価ではない。特にPEMFCにとって、白金の途方もない高コストは大きな導入障壁となっている。すでに高価なこの電解触媒が、腐食性の高いPEMFC環境においては、比較的少数回の使用サイクルを経るだけで急速に劣化することは、状況をさらに悪化させる。

学術誌『Nano Research』に2022年9月22日付けで掲載された論文の執筆者の一人で、中国科学院の長春応用化学研究所に所属する電気化学者シユアン・チュー(Siyuan Zhu)は、「そのため、電解触媒の探求が進行中です」と語る。「低価格で劣化に対する耐性がより高く、より長期間にわたって安定的であると同時に、供給する電流密度、すなわち単位体積当たりの電流の大きさが極めて優れており、PEMFCのコンパクトさを保証し続けられるような電解触媒が必要なのです」

コスト削減のための主な選択肢として検討されているのは、白金の触媒活性の促進・向上が可能な、他のより安価な金属を白金と合金化させることだ。それにより、電解触媒として必要な白金の量を「希釈」するわけだ。

これまで、白金と合金化させるための主な候補は、いわゆる後期遷移金属だった。遷移金属とは、周期表の中央部分(dブロック)を占める元素だ。鉄やマンガン、クロムは、dブロックの中央にある遷移元素であり、カドミウムや亜鉛などの「後期」遷移金属は、dブロックの右側にある。

後期遷移金属は、PEMFCの過酷な腐食環境においては溶解を免れないことが判明している。これは、性能の低下を確実に招くだけでなく、溶解した金属が、酸素還元反応の副生成物とさらに反応して、システム全体に制御不能な損傷を引き起こす。

だが、周期表の中央ブロックの左側にある、イットリウムやスカンジウムなどの早期遷移金属は、はるかに安定性が高い。この2つの早期遷移金属と白金との合金は、これまでで最も安定性が高いことが、理論計算で明らかになっている。

早期遷移金属の中で、これまで見落とされていたグループがある。希土類元素(rare-earth element:REE)だ。希土類(レアアース)は、その名前にもかかわらず、実際には地殻中に非常に多く存在し、触媒の電気化学的活性に大きく寄与することができる。これまで、白金との合金化の候補として希土類を調査する上での問題は、コストではなく、低い伝導性と、酸性媒質中で溶解性を持つことだった。原理上、この問題はどちらも、白金と希土類の合金を生成するための合成法を用いることで克服できる。だが現在まで、実行可能な合成法に関する報告はほとんどなかった。

今回の研究チームは、白金と、希土類のランタン(La)との合金を生成するための合成法を考案した。

この技術は、わずか2つのシンプルなステップからなる。研究チームはまず、容易に入手可能なランタン塩とトリメシン酸を用意し、この2つの前駆物質を自己組織化させ、ナノスケールの「棒」を形成した。次に、このナノ棒に白金を摂氏900度で含浸(がんしん)させた。この非常に高い温度は、2つの金属の合金化プロセスをスムーズに進めるために必要なものだ。

結果として生成された白金-ランタンのナノ粒子に対して、燃料電池内での性能を調べるストレステストを実施した。今回の合金電解触媒は、研究チームの予想を上回り、燃料電池サイクル3万回を経ても、優れた安定性と活性を提供した。

白金との合金化の候補物質として、ランタンの成功が実証されたことにより、研究チームは現在、その他の希土類元素についても、ランタンの電解触媒性能を上回ることが可能かを確かめるため、白金との合金化を試みたいと考えている。

研究論文:Ultra-Stable Pt5La Intermetallic Compound towards Highly Efficient Oxygen Reduction Reaction

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。