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世界初※1、ナノサイズ結晶粒を有する白金材料の製造技術開発に成功

純度99.9%以上の純プラチナとして、世界最高のビッカース硬度500 HV以上と強度2,000 MPaを達成
高い加工性により、幅広い産業への応用を期待

2024年10月30日

田中貴金属グループの中核企業として産業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業株式会社は、白金(プラチナ、Pt)材料において、結晶粒径※2をナノサイズに制御したバルク体※3の開発に、世界で初めて成功したことを発表します。

本新技術では、一般的な金属バルク体の平均粒径が、小さくても約10µm程度とされていた中、平均結晶粒径をナノサイズで制御することが可能であり、一般的な白金材料の10倍の硬度と4倍の強度を有する純度99.9%以上の高純度な白金材料が製造できます。

貴金属を含む金属材料では、結晶粒サイズを小さくすればするほど、各金属の特性が高まることが知られています。近年、鉄鋼材料や非鉄金属では、強加工により極めて大きな塑性ひずみ※5を与えることや再結晶組織を形成することで、結晶粒径のナノサイズ化を実現しています。金属材料は、強加工により一時的に加工硬化※6しますが、純度の高い貴金属材料については、数時間~数日で結晶を構成する原子の再配列や新たな結晶粒の核生成と成長が起き、材料の硬さが低下(軟化)する現象が顕著に現れるなどの理由から、強加工により結晶粒を微細化することは非常に困難でした。

今回、田中貴金属工業では、製造プロセスを最適化することにより、白金において、結晶粒径をナノサイズに制御しながらバルク化することに成功しました。本技術で製造された白金材料は、硬度・強度が一般的な白金よりも格段に向上します。これは、材料全体に対して、高密度で小角粒界、大角粒界あるいは転位をはじめとする格子欠陥が存在するためであり、純白金にもかかわらず、一般に知られる白金の特性とはかけ離れた特性を示します。高純度な白金かつ高い機能を発現する新規材料として、エレクトロニクス産業や宇宙航空分野など、幅広い産業への適用が期待されます。

(※1):2024年10月30日現在、自社調べ(白金材料のバルク体における特許、論文調査より)
(※2)結晶粒、結晶粒径:金属材料は原子が規則正しく配列した構造を持ちます。この構造の中で原子配列の向きが異なる個々の領域を結晶粒といい、そして結晶粒のサイズを結晶粒径といいます。
(※3)バルク、バルク体:物質表面ではなく内部の3次元的な結合を持つ原子の塊をバルクといいます。そのバルクの構造を有する固体をバルク体といいます。
(※4)EBSD:結晶構造をもつ材料に電子線を照射して、材料表面で生じる後方散乱回折を解析することで材料の結晶情報(結晶系・粒径・配向性など)を調べる手法です。
(※5)塑性ひずみ:材料に外力を加えて生じたひずみのうち、外力を取り除いても元に戻らないひずみのことです。
(※6)加工硬化:金属に応力を加えることにより塑性ひずみが蓄積して金属が硬くなる現象です。
(※7)ロイヤルピュアプラチナ:純度99.9%を保ちながら通常の純白金材料よりも硬度・強度が高い田中貴金属工業オリジナルの素材です。

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