クロスバー接点は、電子機器の信号制御部品であるリレーやスイッチ等に使用される超小型の接点です。リレーは外部から電気信号を受け取り、電気回路の開閉や切り替えを行う部品であり、通信機器、設備機器、家電製品など多種多様なデバイスに広く使われています。電気回路の開閉を担うリレーに組み込まれている接点は、確実に動作しないとデバイスの誤動作や故障を引き起こす可能性があり、高い信頼性が求められています。

近年における電子機器の小型化に伴い、リレーの小型化も求められています。リレーは小型化が進むにつれ、接点の重みにより開閉時にバウンスが発生してしまうことが課題となっていましたが、接点自体の小型化・軽量化により抑制が期待できると言われています。バウンスが抑制されることで、より精密な電気信号の制御ができ、デバイスの誤作動などの軽減に貢献できます。

さらに、接点の小型化は省資源（省地金化）にも繋がり、低コスト化も見込めます。田中貴金属工業は、長年培った貴金属素材の研究開発の知見と、高い貴金属加工技術により、極小接点を開発することに成功しました。

■第5世代シグナルリレー向け次世代接点

リレーは1830年代の実用化以降、様々な電子機器に組み込まれるようになりました。リレーの中でも、比較的小さな信号（接点開閉電流2A以下）でより大きな信号を制御する方法をシグナルリレー・信号リレーと呼びます。電子機器の発展に伴い、シグナルリレーおよび接点研究開発が進み、リレーと中に組み込まれる接点の小型化も進みました。

田中貴金属工業では、1970年代からシグナルリレー向け接点の開発を行っています。1998年には、第4世代シグナルリレー向け接点（テープ幅0.3mm）、2023年には第5世代シグナルリレー向け接点（テープ幅0.25mm）の開発に成功しています。第5世代シグナルリレーは、通信機器、半導体検査装置、医療機器、ネットワークカメラ、スマート家電、自動車など、高い信頼性が求められる様々な分野で活用されています。

＜シグナルリレー向け接点小型化の歴史＞　※田中貴金属調べ

^（※1）バウンスやチャタリング：スイッチやリレーにおいて、双方とも意図しない接点の開閉が生じ、誤作動につながる好ましくない現象。バウンスは、接点の開閉時の衝撃で接点が跳ね、開閉を繰り返す現象を指し、チャタリングは、外部からの振動などで、開閉を繰り返す現象を指す。