「LPU100」と名付けられたこのコンピューターは、100個の発光源を備えたレーザーアレイを備えており、レーザー干渉と呼ばれるプロセスを使って計算を実行する、とライトソルバー(LightSolver)の担当者は3月19日の声明で述べている。
このプロセスでは、解決されるべき最適化問題が、プログラマブル空間光変調器(programmable spatial light modulator)と呼ばれる装置によって、レーザーの経路上にある物理的な障害物上にエンコードされる。これらの障害物によって、レーザーの動作が、エネルギー損失を最小化するように調整される。まるで、下り坂を流れる水が、最も抵抗の少ない経路をたどる最適なルートを自然に見つけ出すようにだ。
レーザーは、状態をすばやく変えてエネルギーの浪費を最小限にし、エネルギー損失の最も少ない状態を実現する。そしてこの状態は、問題のソリューションと直接的に対応している。
この状態を実現したら、LPU100は、従来型のカメラを使ってレーザーの状態を検出して解釈し、元の最適化問題の数学的解に変換する。
同社によると、LPU100は、ベクトル行列乗算のような計算負荷の大きい複雑な演算を、わずか10ナノ秒で実行できるという。これは、最速のグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)と比べて数百倍速く同じタスクを実行できることを意味する。
ハイペリオン・リサーチ(Hyperion Research)の研究担当シニアバイスプレジデントで、量子コンピューティング・チーフアナリストを務めるボブ・ソレンセン(Bob Sorensen)は声明の中で、ライトソルバーの提供する技術は「高度なコンピューティング技術を利用する幅広いユーザーにとって、参入障壁が低い」と評している。
ベクトル行列乗算は、膨大な数の結果が生成される可能性がある複雑なタスクを処理するための鍵となっている。その一例が、車両経路の決定の問題だ。輸送や配送の分野では、複数車両の最も効率的なルートを決定することがロジスティクス上の課題となっている。
ライトソルバーが公開したベンチマークテストの結果によれば、LPU100は、複数車両にとって最も効率的なルートを10分の1秒未満で特定し、人気の高いロジスティクスツール「Gurobi Optimizer(グロービ・オプティマイザー)」を上回った。グロービは、10秒以内に解決策を見つけられない場合が多かったという。
また、コーネル大学の研究チームが発表した以前の研究によると、LPU100は、問題解決アルゴリズムの効率性テストに使われる「MAX-2-SAT」や、最適解を見つけるために多数の組み合わせの並べ替えが必要な難しい問題を扱うアルゴリズムの性能評価テスト「3-Regular 3-XORSAT」で、従来のGPUを上回る性能を示した。
LPU100は、ライトソルバーが「量子にヒントを得た」とする技術を採用しているが、量子ビットや量子力学の法則に基づいているわけではない。その代わりに、複数の演算を超高速で同時に処理するという、従来のコンピューターでは実現不可能な原理を取り入れている。
ライトソルバーによると、LPU100のレーザーアレイは100個の連続変数を扱えるため、理論的には、天文学的な変数の組み合わせ(120の100乗)を含む計算問題に対応できるという。
このため、金融、航空宇宙、物流、製造など、大量のリソースを必要とするデータ需要がある業界にとりわけ適している、と同社は述べている。
量子コンピューターは、極低温下でなければ動作しないほか、実験的な側面が依然としてかなり強い。また、スーパーコンピューターは、大量のエネルギーを消費し、専用の収容施設を必要とすることが一般的だ。これに対してLPU100は、電子回路で演算を行うわけではないため、室温で効率的に動作する上、デスクトップコンピューター並みのコンパクトなサイズを維持できる。
さらに、「よく知られたレーザー技術と市販の部品」のみで構築されている。「このため、リソースを大量に消費する量子コンピューターやスーパーコンピューターに代わる、実用的な選択肢となる」と、ライトソルバーの担当者は述べている。
ライトソルバーは現在、一部の大企業顧客に対して、クラウドプラットフォーム経由でLPU100を利用し、最大100万個の変数を含む問題を処理できる機能を提供している。