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GX推進やEV普及を支えるパワー半導体の進化。その土台を支える素材開発の現状に迫る

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「SiC」「GaN」を使った次世代のパワー半導体 

南川: SiC(シリコンカーバイド)やGaN(ガリウムナイトライド)などの新しい素材を使ったパワー半導体は、電力の変換効率が例えば97〜98%へと上がります。1%~2%の向上は、大きな差です。

SiCはテスラが最初に量産採用をしました。通常のシリコンでは125度程度の耐熱上限ですが、SiCは250度でも耐えられる設計です。車のエンジンルームのような熱くなる場所でも、エンジンやモーターのすぐ近くにSiCパワー半導体を載せることが可能になります。そうすると、フォームファクター(形状や大きさを構成する要因)が小さくなりますので、非常に有利になるんです。

GaN(ガリウムナイトライド)は周波数が高く取れるのが特徴です。周波数が高く取れると、交流から直流、直流から交流への電源の変換、もしくは周波数を変換する際の効率が良くなります。

電源の効率化に有利で、パソコン電源の小型化にも貢献しています。

現状では、通常のシリコンに比べてSiCは5〜6倍、GaNは7〜8倍以上の価格と言われています。市場はまだ限定的ですが、今後量産とともに価格帯が下がれば、用途が広がると思います。

安部:そうですね。材料の観点からも、SiCやGaNは安定的な結晶成長が難しいという課題を解決してきた開発の歴史があります。

南川:パワー半導体の材料開発で何が重要なポイントだと思いますか。

安部:田中貴金属グループは半導体のパッケージング材料に長らく携わってきました。ボンディングワイヤから始まり、現在はダイボンド材や活性金属ろう材にも広がっています。

そうした知見から、パワー半導体向け材料では、放熱性と信頼性の両立が大事と捉えています。

新しく台頭してきたSiCやGaNは、シリコンと物理特性が異なり、例えば実際のチップの厚みまで加工した際に、シリコンはしなやかで、SiCは硬いと聞いています。

チップ化して最後基板に接合する際に、熱膨張係数の違いによって生まれる反りに対し、基板が硬いと応力緩和が十分にできずに、チップと基板の隙間やボイド(空洞)が生じるケースがあるのです。ボイドは接合層の緻密さ、ひいてはチップの放熱性や信頼性に影響があります。

次世代の素材開発におけるポイントは、物理特性の違うチップや基板に対して、継電材料や接合材料の最適化により、性能と信頼性を担保することだと思います。

南川:確かに、パワー半導体は長期使用するケースが多いですよね。太陽光発電であれば、パネル寿命は15年と言われており、それくらい持ってもらわないと困る。やはり信頼性は非常に大切ですね。

安部:加えて、SiCは高耐電圧のため、同じ電流・電圧に対してはチップサイズを小さくすることができます。シリコンと比べたときに同じ耐電圧でもチップのサイズが3分の1から4分の1になると言われています。ただし小型化すると熱は溜まり易くなり、放熱性のニーズが高まります。次世代パワー半導体の材料開発は放熱性、低抵抗、信頼性の追求だと思っています。

南川:材料開発は根気が必要なもの。長い時間を掛けて、コツコツと開発を続けていく側面が大きいと思います。それは日本企業の得意なところですから、パワー半導体で日本は重要なポジションにいると思いますね。

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