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マイクロソフト:AI推進で、CO2排出量が30%急増、気候目標の達成を脅かす

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マイクロソフト:AI推進で、CO2排出量が30%急増、気候目標の達成を脅かす

マイクロソフト(Microsoft)は2020年、10年後までに、自社の排出量を超える二酸化炭素を除去すると約束した。その目標は当時、気候変動に取り組む計画としては最も意欲的で包括的なもののひとつだった。しかし現在、同社が、人工知能(AI)の世界的リーダーになろうとする絶え間ない努力を重ねるなかで、この目標の達成は危ぶまれる状況になっている。

2024年5月15日にマイクロソフトが発表した最新の環境サステナビリティレポートによると、同社の現在の総炭素排出量は、2020年と比べて約30パーセント増加しているという。そのため、2030年までに炭素排出量をゼロ以下にすることは、このカーボンネガティブ目標を発表した当時よりも難しくなっている。

マイクロソフトのブラッド・スミス(Brad Smith)副会長兼プレジデントは、Bloomberg Greenの独占インタビューで、同社の目標を達成するためには、環境志向的な鉄鋼やコンクリート、炭素集約的でないチップを早急に利用できるようにする必要があると語った。「当社では2020年、カーボン・ムーンショットと名づけた目標を発表しました(訳注:「ムーンショット」は、月探査のような大胆な計画のこと)。これは、AIが爆発的に増加する前のことです」とスミスは述べた。「AIの増加とその電力需要に関する独自の予測を考慮に入れた場合、“到達すべき月”は、多くの点において2020年時点と比べて5倍も離れたことになります」

マイクロソフトの苦境は、AIの追求が、炭素排出量削減の取り組みとどのように衝突するかを示す初めての具体例と言える。生成AIという新たな市場における最初のリーダーになることを目標にしたマイクロソフトは、世界で最も時価総額の高い企業となったが、同社のリーダーたちは、需要についていくためには、環境を汚染するアセットへのさらなる投資が必要になることを認めている。

AI製品は膨大なデータ処理を行い、大量の電力を使用する。そのため、まずは既存のデータセンターの負荷が増加し、エネルギー使用量が増加する。だが、需要は非常に大きく、そのペースに合わせるためには、マイクロソフトは新しいデータセンターを建設しなければならなくなる。それには、炭素集約型のセメント、鉄鋼、マイクロチップが必要となる。

マイクロソフトは、増大するAI製品の需要を満たすため、2023年7月から2024年6月までに、データセンターの拡張に500億ドル(約8兆480億円)以上を費やす計画を立てていた。2024年7月から始まる次の12カ月では、この数字はさらに大きくなることが予想されると、最高財務責任者のエイミー・フッド(Amy Hood)は6月のインタビューで述べている。同社は2月以降、米国ウィスコンシン州、タイ、インドネシア、スペイン、ドイツ、日本で、新たなデータセンタープロジェクトを大々的に宣伝している。

スミスは、AIが世界にもたらす良い影響は、環境への影響を上回ると信じている。「私たちは基本的に、その答えはAIの拡大を遅らせることではなく、AIをより環境に優しいものにするために必要な作業を加速することだと信じています。確実に失敗する方法は、諦めることです」と同氏は述べている。

マイクロソフトの従業員のなかには、石油抽出を自動化し拡大させるためにAIを使う製品について声を上げる者もいる。1万人を超える従業員が、マイクロソフトに対して地球温暖化の影響を軽減するよう求めるグループを結成した。抗議の手段として辞職した者もいる。2人の元従業員は、次のように書いている。「自社技術を使用して石油生産の最大化に取り組むことは、自社の素晴らしい仕事すべてを否定し、化石燃料の時代を引き延ばし、計り知れない量の炭素を排出することになります。私たちは二人とも、大好きだった会社に失望させられたことを、心から悲しく思っています」

これに対してマイクロソフトの広報担当者は、「世界中の従業員は、わが社の持続可能性ミッションにおける中核です」と返答している。「私たちが重点を置いているのは、エネルギー転換の推進です」

これは、マイクロソフトだけの課題ではない。AI競争のライバルであるグーグル(Google)やメタ・プラットフォームズ(Meta Platforms Inc.)、アマゾン(Amazon)は、どこも意欲的な気候変動目標を掲げているが、その炭素総排出量は増加している。

質問に対してグーグルの広報担当は、AIに関係するエネルギー使用量と炭素排出量の増加を予測することは難しい、と回答した。そして、さまざまな方法があるなかでも、グーグルは、クリーンエネルギーの開発を増大させ、炭素除去クレジットを購入することで、環境への影響の低減を目指していると述べた。アマゾンの広報担当は、2040年までにネットゼロを達成することに「引き続き尽力する」と述べ、原子力を含む新たなクリーンエネルギー源の実現に向けた取り組みを大々的に宣伝した。メタ・プラットフォームズからは回答を得られなかった。

AIは、エネルギーを大量に消費するものの、マイクロソフトの炭素排出量の増加には、(少なくとも理論上は)ほとんど影響しないとされている。というのも、その電力を100%再生可能エネルギーで賄っているからだ、と同社は環境サステナビリティレポートで説明している。

各企業はこうした主張を行うためにさまざまな仕組みを利用しているが、その信頼性について言えば、それぞれにかなりの違いがある。企業によっては、再生可能エネルギー開発会社と長期電力購入契約(PPA)を結び、新しいエネルギー発電所のリスクを肩代わりしてもらうかたちで、新しい太陽光発電所や風力発電所の立ち上げを行うところもあれば、再生可能エネルギークレジット(REC:renewable energy credit)を購入することで、グリーン電力を使用していると主張しているところもある。だが、このクレジットは安価なため、グリーンエネルギーの新たな需要を刺激する役割をほとんど果たしていないというのが、研究者の一貫した見解だ。

マイクロソフトでは、両方のアプローチを組み合わせて使用している。こうした取引を追跡しているブルームバーグNEF(BloombergNEF)によれば、マイクロソフトは、PPAに参加する企業の中では最大手のひとつだという。だが、2022年の環境報告書によれば、同社はRECの大量購入者でもあり、この手段を通して、エネルギー使用量の約半分がクリーンであると主張しているという。マイクロソフトは、RECを大量に使用することで、炭素排出量の大幅増加を実質的に隠しているのだ。

マイクロソフトの広報担当者は、「当社は主要戦略としてPPAに重点を置いており、今後数年かけて、電力と分離して取引されるREC(unbundled REC)の使用を段階的に廃止する予定です」と述べている。

他には、どういう方策があるのだろうか。スミスは、マイクロソフトの最高サステナビリティ責任者であるメラニー・ナカガワ(Melanie Nakagawa)とともに、環境サステナビリティレポートで明確な手順を説明した。そのなかで最も重要なのは、効率を上げることだ。これまでと同量のエネルギーやコンピューティングを使用して作業量を増やすことができれば、データセンターの必要性が抑えられ、炭素排出量と電力使用量が削減される。ほとんどの場合、「当社の気候変動目標の達成には、資金投入が必要となります」とスミスは述べている。「しかし効率を上げれば、資金を節約できます」

マイクロソフトは、持続可能な航空燃料の購入でも先頭に立っており、出張による炭素排出量の一部削減を実現している。また、排出量の少ない鉄鋼、コンクリート、燃料を製造するための“飛躍的な進歩を加速する”企業と提携したいと考えている。こうした技術は小さな規模で動き出しているものの、価格は高く、商業規模で利用可能になるには程遠い状況だ。

安価な再生可能電力は、マイクロソフトの気候変動目標への努力を助けてきている。だが、同社の2023年の電力使用量は、ヨーロッパの小国に匹敵する規模であり、スロベニアの使用量を軽々と超えている。スミスは、グリーン電力にアクセスし続けるうえでの最大のネックは、発電場所からデータセンターまでの送電線がないことだと述べた。そのためマイクロソフトでは、送電網建設の加速化を政府に求めるロビー活動を強化していくという。

こうした取り組みにもかかわらず、2029年のマイクロソフトの炭素排出量が高い状況のままだったら、同社はどうするのだろうか。炭素除去クレジットを大量に購入することは「常に可能性としてあり得ますが、そうならないようにしたいと思います」とスミスは語った。

空気から二酸化炭素を除去する方法は無数にある。巨大なファンを備えた装置を使う方法もあれば、植樹という方法もある。しかし、こうしたクレジットは高価で、マイクロソフトが出張時に社内炭素税として適用している1トンあたり100ドルと比べれば、何倍にもなる。

「こうしたことへの投資や支払いについては、惜しまず行うべきです」とスミスは述べる。気候変動は「人間が生み出した問題であり、人間が解決できる問題なのです」

この記事は、BloombergのAkshat Rathi and Dina Bassが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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