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8.9度も体を冷やすことができる、プラスチックと銀ナノワイヤーでできた冷却繊維

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8.9度も体を冷やすことができる、プラスチックと銀ナノワイヤーでできた冷却繊維

熱波が都市を襲うと、歩道や車道、建物の影響で、空気がさらに熱く感じられる。都市のヒートアイランド現象の結果、こうした施設のすべてが太陽熱を吸収して再放出し、気温がさらに上昇する。

そうなると、涼しくなるためには、太陽放射からだけでなく、舗装道路やコンクリートに跳ね返るあらゆる放射からも身を守らなくてはならない。現在開発されている、プラスチックと銀ナノワイヤーでできた新しい布地は、これを実現する。着ている人の体を、他の布地と比べて華氏16度(摂氏約8.9度)も涼しく保つことができるのだ。

温暖化が進む世界において、暑さは深刻な問題になっている。2024年6月後半には、熱波が米国の大半に広がると予想されており、シカゴ、ニューヨーク、ボストンなどの都市では特に危険な気温になると予測されている。こうした気温は、「ヒートドーム」によって引き起こされる。高温の空気の塊が、長時間にわたって、ある領域に閉じ込められる現象だ。2021年にオレゴン州ポートランド周辺に発生したヒートドームでは、気温は華氏116度(摂氏約47度)に達し、同市を含むマルトノマ郡では69人が死亡した。

それに加えて、気温が高くなると、多くの人がエアコンの設定を上げるようになり、大気中に放出される温室効果ガスが増えることになる。

先述した新しい布地は、こうした状況をわずかでも緩和できるかもしれない。この布地は「放射冷却」と呼ばれる、物体が熱エネルギーを周囲に放出することで冷える仕組みを使用する。放射冷却機能を備えた布地はすでに存在するが、そのほとんどが、太陽の熱を反射するだけだ。これは、「野原であれば非常にうまく機能します」とシカゴ大学の分子工学教授であるポーチュン・シュー(Po-Chun Hsu)は述べている(シューのチームは最近、新しい素材に関する論文を学術誌『Science』に発表した)。だが、都市部ではそうはいかない。

他の布地は、足元の街路や、周囲の建物から発せられる熱を反射することはできない。太陽光線が直接もたらす熱と、「太陽光で熱せられた街路から放出される熱」は、同じではない。波長が違うのだ。そのため、両方を反射するには、素材は、2つの異なる「光学特性」を備えていなければならない。

これを実現するために、研究チームは3層の布地を作成した。最上層はポリメチルペンテン(PMP)でできている。包装によく使われるプラスチックの一種で、研究チームは、これを繊維に紡ぐ方法を考案する必要があった。2番目の層は銀ナノワイヤーシートで、赤外線放射を鏡のように反射する役割を持つ。この二つの層が一緒になって、太陽放射と、周囲の物の表面から反射される空間放射の両方を遮断する。3番目の層は、ウールや綿といった従来の布地を使用できる。複数の層になっているが、主な厚みは従来の布地のもので、最上層は人間の髪の毛の約100分の1だ。

アリゾナ州で行われた屋外テストで、この布地は、屋外スポーツでよく使用される「ブロードバンド・エミッター」生地と比べて華氏4.1度(摂氏2.3度)低い温度を保った。また、ドレスやシャツによく使用される通気性のある布地である通常のシルクと比べると、華氏16度(摂氏8.9度)低い温度を保った。

この「クールダウンする布地」は、衣類だけでなく、建物や車内にも使用できる、と研究チームは述べている。食品の保管や輸送にも利用できるため、気候問題に大きな影響を与えている冷蔵の必要性が軽減されるという。シューの研究チームは現在、他のチームと協力して、この布地が猛暑のなかにいる人々の健康にどのようなメリットをもたらすかを調べている。

世界保健機関(WHO)によると、熱中症は実際に気象関連死の原因の第1位だ。高温は、心血管疾患や糖尿病などの問題を悪化させる可能性もある。気候変動によって熱波の頻度が増え、その深刻度も増すにつれて、酷暑にさらされる人の数が増加し、そうした人々が直面する潜在的な健康リスクも増大している。研究チームは、自分たちが開発した布地が皮膚温度を下げられるという成果を確認した。しかし「この成果は、実際の公衆衛生のメリットにどうつながるのでしょうか?」とシューは述べる。「この成果を次のステップに進めるには、この点が重要になるでしょう」

この記事は、Fast CompanyのKristin Toussaintが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。