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中国の研究機関、柔軟で透過性の高い三次元合成「電子皮膚(Eスキン)」を開発する

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中国の研究機関、柔軟で透過性の高い三次元合成「電子皮膚(Eスキン)」を開発する

近年、世界各地の研究チームが、柔軟でしなやかな新型電子機器の開発に取り組んでいる。こうしたデバイスの応用先は幅広い。例えば、医師による患者の健康状態のモニタリングを補助したり、リハビリを促進したり、スポーツのパフォーマンスを改善したりといった用途が想定される。

こうしたデバイスは、ユーザーが日常的に安全かつ快適に着用できるよう、透過性(通気性素材を使用し、液体と気体がデバイスを通過できる)を備えていなくてはならない。これらはまた、高い生体適合性(長期間にわたって装着しても人体に安全)および負荷抵抗性(伸ばしたり特定方向に引っ張ったりしても容易には壊れない)を備えている必要がある。

香港理工大学とその他の中国の研究機関に所属する研究者たちはこのほど、透過性素材を使用して三次元合成された柔軟な電子皮膚(Eスキン)を新たに開発した。学術誌『Nature Electronics』に掲載された論文によれば、このEスキンの基礎をなすのは、伸縮性のある有機繊維基質に、無機電子部品を高密度に埋め込むという構造だ。

論文著者のキウナ・ジュワン(Qiuna Zhuang)、ヤオ・クアンミン(Yao Kuanming)らは、「ほとんどの伸縮性電子機器システムは、低密度に合成されており、外部のプリント基板と有線接続されている。こうした構造が、機能に制限を課し、ユーザー体験を低下させ、長期間の使用を妨げている」と論文で述べている。「本論文では、透過性素材で構成され三次元合成された電子皮膚について報告している」

ジュワンやクアンミンらは、不透過性で柔軟性を欠くプリント基板を使うのではなく、柔軟で透過性をもつ素材でできた、皮膚に似た多層性回路基板を使用した。微小パターン加工を施したこの回路基板は、液体金属と繊維基質でできている。

「このシステムは、高密度の無機電子部品と、柔軟な有機繊維基質を、三次元パターン加工を施した多層液体金属回路、および柔軟なハイブリッド液体金属はんだを使用して合成したものだ」と、著者らは説明する。「この電子皮膚は、高い柔軟性、耐久性のほか、織物に似た空気と水分の透過性を示し、1週間にわたって皮膚に装着できる十分な生体適合性を持つ」

研究チームが開発した伸縮性の高い新素材は、負荷への抵抗性が極めて高いこともわかった。実に1500%まで引き伸ばした状態でも電気特性が保たれたのだ。加えてこの電子皮膚は、空気と水分の両方を透過させるため、長時間装着しても皮膚に発疹や炎症が生じることがない。

今回提唱された素材について、以前に開発されたジメチルポリシロキサン(PDMS)素材の伸縮性電子皮膚と比較すると、新素材はより薄く、より柔軟であることがわかった。さらに性能を検証するため、研究チームはこの電子皮膚を使用して、生体信号を記録し別のデバイスにワイヤレス転送する生体電子機器を開発した。

「我々はこのプラットフォームを使用し、ワイヤレス、バッテリー式、バッテリー不要の皮膚装着型生体電子機器システムを開発し、生体信号の安定した記録、信号の処理と分析、電気刺激、ワイヤレス通信といった複雑なシステムレベルの機能を実現した」と、著者らは述べている。

研究チームが今回開発した、透過性と柔軟性を備えた電子皮膚は、将来的に、生体プロセスをモニタリングする安全で信頼できる方法に利用され、さまざまなデバイスの開発に使用される可能性がある。加えて、柔軟な回路基板と液体金属はんだを組み合わせた、同様の生体適合性デバイスをデザインするうえでも示唆を与えるだろう。

※メイン写真:超伸展性ハイブリッド液体金属はんだを利用した、安定性の高い三次元ハイブリッド・インターフェース。提供元 Zhuang et al.

この記事は、Tech XploreのIngrid Fadelliが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。