研究プロジェクトの主目的は、ファイバーワイヤーLED(いわゆるfi-LED)のより良い作製方法を見つけることだった。柔軟性のあるfi-LEDの作製には、材料の問題がつきまとい、発光の一様性や効率が損なわれることが多かった。この弱点の対策として、研究チームがハロゲン化金属ペロブスカイトと多孔質アルミナ膜を用いて量子細線を作製したのは適切だったようだ。得られた一連のフルカラーのfi-LEDはすでに、繊維を光らせる応用に適したものになっている。
香港科技大学によると、この研究は、短期的には「fi-LED分野を大幅に前進させる」という。そのうえで「今後の展開としては、fi-LEDの効率性と安定性の向上に注力することになるだろう。発光色の範囲を拡大するペロブスカイトの新たな構成を模索しつつ、そのような素子を市販の繊維製品に組み込んでいく」としている。
長期的には、この方式のfi-LEDを推し進めることで、将来のウェアラブルディスプレイ技術と、これまでになかった形状の光源全般が向上することが期待されている。水に沈める実験も実施されていることからすると、水泳プールやスキューバダイビングのような水中での利用も、十分に可能性がある。
「たわめたり、ねじったりすることができ、伸縮可能で、防水性もある」fi-LEDの登場で、ウェアラブル利用の未来は非常に有望に見える。とはいえ、もちろん実際の衣料ブランドは、ファイバーLEDを衣服に組み込むことに二の足を踏むかもしれない。特定の制服や装備が必要なシナリオ(例えばスキューバダイビング)を除くと、fi-LEDが新たなSFファッションの時代をもたらすことはないかもしれないが、実用化の可能性は確かに興味深いものといえるだろう。