データセンターで用いられる冷却システムに大変革をもたらすことができる、まったく新しい金属フォーム(foam、多孔質体)を開発したというのだ。
データセンターの負荷が上がり続けるなか、最適な稼働を維持するため、冷却システムの重要性が高まっている。データシステムにおけるエネルギー消費の4割近くが冷却システムで行われることも少なくない。
データセンターのための効率的な冷却ソリューション
データセンターは、複雑なAIワークロードの処理を求められることが増えている。こうした処理には、GPUやTPUといった専用のハードウェアが必要だ。
こうしたコンポーネントでは熱が大量に発生する。そのため、過熱を防ぎ、安定した性能を維持できる、高度な冷却システムが必要になっている。データセンターの冷却は、従来は空調制御システム(HVAC)システムに依存していた。しかし、サーバーの密度が高まり、空調方式では間に合わなくなってきている。
こうした限界に対処するため、液浸(えきしん)冷却やダイレクトチップ冷却など、効率を高めた冷却方法が登場している。液浸冷却では、サーバーを誘電性流体(電気を通さない液体)に浸し、ダイレクトチップ冷却では、チップに取り付けられたコールドプレートに冷却液を循環させる。どちらの方法も、チップから冷却媒体へと熱を逃がす熱交換がうまくいく必要がある。そこで、アフェロスの金属フォームの出番だ。
画像クレジット:アフェロス
アフェロスの金属フォームには、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼など、さまざまな組成のものがある。その構造の特徴は、開放気孔による多孔質体であることだ。気孔が相互連結していることで、表面積は、従来のソリューションの1000倍になる(密度は0.9~2.2g/cm³)。
アフェロスは、規模の変更が容易な粉末ベースの製法を採用しており、特許出願中だ。室温で稼働し、同社によると、特性の一貫した、セルの開放率が高い多孔質体が得られる。チョコレートムースやメレンゲなどの食品生産で確立された手法に基づいており、機械的に安定したフォームを作ることができる。
アフェロスの金属フォームは、熱伝導性が高く、熱交換効率を、従来のソリューションと比べて最大90%向上させることができる。これにより、冷却システムで使う冷却剤の温度が、ある程度高くても良くなるため、10~20%のエネルギー節約になる。運用コストの削減だけでなく、持続可能なデータセンター運営という、高まりつつあるニーズにも対応できるわけだ。
画像クレジット:アフェロス
ヒートシンクのようなパッシブ冷却の用途に最適な金属フォームであり、データセンターにおける単相式のコールドプレートや液浸冷却にも適している。二相式のダイレクトチップ冷却に利用できる可能性もある。さらには、その大きな表面積を生かした電極や触媒にも使うことができる。
アフェロスの共同創業者でもあるジュリア・カーペンター(Julia Carpenter)最高経営責任者(CEO)は、「VentureBeat」に次のように語っている。「この超高比表面積の金属フォームをチップに直接設置して、そこに液体を流すことができます。オンチップ冷却の場合、多孔性の高いキッチン用スポンジのように振る舞い、水や冷却剤を通して熱を逃がすのです。液浸冷却においても同様に機能します」
カーペンターCEOはまた、次のように語っている。「アフェロスの金属フォームは、熱伝達効率を向上させ、データセンターにおける冷却液の使用温度を上げることができるため、エネルギーの節約に直結します。これが極めて重要なのは、大量の水を消費する蒸発塔や、電力消費の激しい圧縮プロセスを用いることなく、外気との熱交換が可能になるからです」
この記事は、TechRadarのBenedict Collinsが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。