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酸化グラフェンとキトサンのスポンジ、電子廃棄物からの金回収効率を10倍向上

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酸化グラフェンとキトサンのスポンジ、電子廃棄物からの金回収効率を10倍向上

シンガポール国立大学の化学者と材料科学者のチームが、英国のマンチェスター大学および中国の広東工業大学の研究者と協力して、電子廃棄物から金を抽出できるスポンジを開発した。酸化グラフェンとキトサンで作られたものだ。

『米国科学アカデミー紀要』に2024年10月7日付で掲載された論文は、このスポンジの作成方法と、実験で優れた結果が出たことについて説明している。

先行研究によると、不要になった電子機器から金や銀などの金属を抽出し、それらの材料をリサイクルすることは困難で、汚染源になる場合が多いことがわかっている。その結果はたいてい、得られる収量は少なく、さまざまな毒性汚染物質を生み出すことになる。

今回の新しいプロジェクトで、研究チームは、従来の方法と比べて安価で汚染が少なく、同時にはるかに効率的な方法で金を除去する方法を発見した。

研究チームは、今回の材料を意図的に選択した。両方とも、他の材料から金を抽出するのに使用されてきたものだ。グラフェンは、イオンを吸収する能力があることが実証されている。キトサン(天然のバイオポリマー[生体高分子])は還元剤としてよく知られており、今回は、金イオンを固体に変換するために触媒的に使用された。

2次元のグラフェン片にキトサンを自己組織化させることで、この2つの材料を複合材料にした。この工程で、金イオンに結合できる部位が材料上に形成された。グラフェンに吸着された金イオンを、キトサンが固体の金に変換することで、収集しやすくなる。研究チームは、この工程は非常に効率的だと述べている。

研究チームは、リサイクル会社から提供された実際の電子廃棄物を使用して、開発したスポンジをテストした。電子廃棄物は、混合溶液の形で提供されており、それはつまり、電子機器に存在する他の材料と一緒に粉砕され、液体に混ぜられた状態だった。処理前の測定では、金の濃度は3ppmだった。

新しく開発されたスポンジは、およそ17g/gのAu3+イオンと、6g/gより少し多いAu+イオンを抽出できた。研究チームによるとこの量は、既知の他の抽出工程と比べておよそ10倍だという。

詳細情報:Kou Yang et al, Graphene/chitosan nanoreactors for ultrafast and precise recovery and catalytic conversion of gold from electronic waste(電子廃棄物から金を超高速かつ正確に回収および触媒変換するための、グラフェン/キトサンによるナノリアクター)Proceedings of the National Academy of Sciences (2024) DOI: 10.1073/pnas.2414449121

※メイン写真:酸化グラフェンとキトサンのスポンジによるAu3+の抽出と還元(走査型電子顕微鏡[SEM]画像)。Au3+は黄色で示されている。画像クレジット:Kou Yang

この記事は、Phys.orgのBob Yirkaが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。