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世界がパラジウムを求める理由

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パラジウムの需要が急上昇しており、市場価格は高騰している。背景としてあるのはガソリン車の需要増加だ。パラジウムは自動車産業においてガソリンの触媒として用いられているためだ。

(Bloomberg)──自動車産業で広く用いられている貴金属パラジウムが、史上最高値を更新した。

パラジウム価格の急騰は、供給不足に対する懸念と、さらなる価格上昇に賭ける投機家の参入によって加速されている。パラジウムは、用途の大半がガソリン自動車向け触媒コンバーターの製造であり、消費者がディーゼル車よりガソリン車を選ぶ傾向がますます高まるにつれて需要が増大している。

他の貴金属の大半に価格の下落が見られた1年間において、パラジウムの急騰は例外的だった。史上最高値にある主要貴金属のひとつであり、過去2年間で価格がほぼ倍増している。

パラジウムの価格は1023日、ニューヨーク午後5時時点で1.8%値上がりし、1オンス=1144.20ドル(約129000円)となった。それまで、一時は2.5%高の1152.54ドル(約129900円)まで上昇した。

パラジウム価格の上昇がここ数日で加速している背景には、パラジウムの最大産出国であるロシアと米国との間の政治的緊張の高まりと、パラジウムの主要消費国である中国の景気刺激策がある。

マレックス・スペクトロン・グループ(Marex Spectron Group)の貴金属トレーディング責任者、デヴィッド・ゴヴェットは、「今年は供給が不足する、とすでに予測されていました」と語り、今後起こり得るロシアとの供給問題が、この困難な事態をさらに悪化させる可能性があると指摘した。「先物相場がタイトになってきており、市場の現物取引量もかなり大きい状態です」

以下では、パラジウム価格の急騰について、知っておくべきポイントをまとめた。

供給逼迫

上場投資信託(ETF)によるパラジウム保有量の急減は、供給の奪い合いが起こることを示す最大の兆候だ。

この保有量はここ数年縮小しているが、これは弱気のシグナルではない。収益の上がるパラジウム貸出事業が行われていることを示している。この場合、借り手は、パラジウムを利用するためのプレミアムをETFホルダーに支払う。

市場供給不足

消費者がディーゼル車でなくガソリン車に目を向けるのに伴い、市場は供給不足状態が続いている。ガソリン車では、自動車触媒にパラジウムが多く使われる傾向がある。米金融大手シティグループ(Citigroup)によると、供給不足は2020年まで続き、過去20年で「最も逼迫した」市場になる可能性が高いという。

鉱山会社には恩恵

鉱山会社にとって、価格の上昇は朗報だ。南アの鉱山会社シバニェ・ゴールド(Sibanye Gold)の株価は1023日、ヨハネスブルク市場で14%急騰した。シバニェ・ゴールドは2017年、米国のパラジウム生産大手であるスティルウォーター・マイニング(Stillwater Mining)の買収を完了した。

南アの鉱業大手アングロ・アメリカン・プラチナム(Anglo American Platinum)の株価は3.5%上昇した。

代替の金属は?

パラジウムの急騰により、最大消費者の自動車産業が消費量を削減し、代わりにプラチナを触媒コンバーターにより多く使用しようとする可能性が高まる。パラジウムがプラチナと比較してこれほど高値になったのは17年ぶりだ。

パラジウムとプラチナの両方とも、種々のエンジン形式で使用される量は、効率と価格に応じて変化する。自動車触媒の設計には数年を要する可能性があるが、過去にはかなり大規模な転換が起きたことがある。

2000年代はじめ、パラジウムの価格上昇を受けて、自動車産業は2002年までの2年間でパラジウムの使用量を50%近く削減するとともに、プラチナの購入量を37%増加させた。

あまりに急?

オランダ・ABNアムロ銀行(ABN Amro Bank NV)のアナリスト、ジョーゼット・ボエレは、短期間的に見ると、価格がファンダメンタルズに先行して変動しているように見えると述べる。

パラジウムの14日間の相対力指数(RSI)は約77であり、70という基準を上回っている。この基準は一部のチャートウォッチャーにとって、パラジウムが「オーバーボート(買われすぎ)」になった可能性があることを示唆するものだ。

──記事執筆にあたり、スザンヌ・バートンとマーヴィン・G・ペレズから協力を得た。

記事執筆者の連絡先:Nicholas Larkin(ロンドン):nlarkin1@bloomberg.net

当記事担当編集者の連絡先:Lynn Thomassonlthomasson@bloomberg.netJoe Richter

©2018 Bloomberg L.P.

 

この記事は、Bloombergのニコラス・ラーキンが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。