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自己修復可能な「スマート」衛星、開発へ
「自己修復する人工衛星」という概念が、SFの世界から飛び出そうとしている。航空宇宙技術者たちは、宇宙空間で動かなくなった人工衛星を修理し、燃料補給を行うための技術を開発しているのだ。
シンシナティ大学の工学者たちは、宇宙空間で故障した人工衛星を修理するという目的のもと、単独で、さらには共同で機能するロボットネットワークを構築している。最新のスマートテクノロジーに基づく技術だ。
人工衛星のダメージ
人工衛星サービスプロバイダーのインテルサット(Intelsat)は2019年4月、地球軌道で運用している人工衛星の1つを失ったと発表した。つまり、動かすことのできない宇宙ごみになったということだ。この人工衛星に何かの物体が衝突したため、推進剤が宇宙空間に漏出した。この人工衛星は、動作不能になっただけでなく、同じ軌道を周回するほかの人工衛星をも脅威にさらしている。
こうしたとき、もし修復作業を担う別の人工衛星があれば、このダメージは修復可能だったはずだ。現在、そのための研究が進められている。
人工衛星は、ほかの物体に衝突される危険性があるだけでなく、太陽フレアにも弱い。特に影響を受けやすいのが、高軌道を周回することが多い通信衛星だ。太陽嵐が起こると、人工衛星は太陽フレアによって帯電し、部品が損傷しやすくなる。
経済的な必要性
米国防高等研究計画局(DARPA)のプログラム責任者だったゴードン・ロースラー(Gordon Roesler)は、天文雑誌『アストロノミー(Astronomy)』において、打ち上げられた人工衛星が修理・改善できない問題について語っている。ロースラーによれば、運用上の小さな問題が原因で、何百万ドルもする人工衛星が使用不能になり、大金がかかった事業が継続不能になってしまう場合があるという。こうした理由からいくつかの企業が、スマートな人工衛星の研究に関心を示している。
新しい研究計画
シンシナティ大学では、オウ・マ(Ou Ma)教授が人工衛星修理プログラムを率いている。研究のテーマは、地球軌道を周回する人工衛星を、ロボット工学技術を使って修理するというものだ。ほかの人工衛星とドッキングし、修理や燃料補給を担うロボット衛星の開発を目指している。
最初の目標は、修理を担う人工衛星が、ロボットアームを効果的に使用できるようにすることだ。この研究を支援するため、コロラド州のマクサー・テクノロジーズ(Maxar Technologies)が、人工衛星のインフラとロボットアームを提供することになっている。
研究チームはさらに、複数のロボット衛星が共同作業する方法も検討している。これまでの試験では、最大5基のロボット衛星が共同で修理作業に従事できるという結果が出ている。これを実現するには、複雑な自動ナビゲーションシステムが必要だ。現在、システム開発のため、さまざまなシミュレーションツールのテストが行われている。
研究論文
スマートな人工衛星の開発に関する論文は、「ロボティカ(Robotica)」誌で発表されている。タイトルは、「Collaborative Control of Multiple Robots Using Genetic Fuzzy Systems(ジェネティック・ファジィ・システムを使った複数ロボットの協調制御)」だ。
エッセンシャル・サイエンスについて
本記事は、デジタル・ジャーナルの定期コラム「エッセンシャル・サイエンス」の抜粋です。このコラムでは毎週、ティム・サンドル(Tim Sandle)記者が重要な科学のトピックを取り上げています。
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前回のコラムでは、遺伝子組み換え酵母によってビールの賞味期限を延ばし、さらに、味も良くすることができる可能性があるという研究を取り上げました。
前々回は、海の嵐が引き起こす超低周波地震「ストーム・クエイク」について紹介しました。新たに発見された気象現象として認識されつつあるストーム・クエイクについて、アメリカの海岸沿いで行われている研究を紹介しています。
この記事は、Digital Journalが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。