CLOSE

About Elements

美しい未来のために、
社会を支えるテクノロジーを

TANAKAは、「社会価値」を生む「ものづくり」を世界へと届ける「貴⾦属」のスペシャリスト。
そして、「Elements」は、わたしたちのビジネスや価値観に沿った「テクノロジー」や「サステナビリティ」といった
情報を中⼼に提供しているWEBメディアです。
急速にパラダイムシフトが起きる現代において、よりよい「社会」そして豊かな「地球」の未来へと繋がるヒントを発信していきます。

Elements

美しい未来のために、
社会を支える技術情報発信メディア

検索ボタン 検索ボタン

変幻自在で剛性も持つ、機能性素材が誕生

この記事をシェアする

米ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクール(SEAS)の研究チームが、考えられるあらゆる形を取り、その形を保つことができる形状変化材料を開発した。ロボット工学からバイオテクノロジー、建築まで幅広い応用分野に活用できる新タイプの多機能材料の開発に道を開く研究成果だ。

研究論文は、『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された。

論文主執筆者のハーバード大教授(応用数学・有機進化生物学・物理学)、ラクシュミナラヤナン・マハデバン(Lakshminarayanan Mahadevan)は、「現在の形状変化材料や構造は、少数の安定配置のあいだを移行できるだけですが、今回の研究では、任意の範囲の変形能力を持つ構造材料の開発方法を示しました」と話す。「この構造体は、幾何学的配置と構造の独立した制御を可能にし、新タイプの変形可能ユニットセル(最小単位の構造)を用いて機能的形状を設計するための基礎を築くものです」

shape-shifting-material-seas-multifunctional-hg.jpg
ハーバードジョン大学 A.ポールソン工学応用科学部(SEAS)の研究者はあらゆる形状を保持できる形状変化材料を開発し、さまざまな範囲で使用できる新しいタイプの多機能材料への道を開いた。ロボット工学やバイオテクノロジーから建築まで、様々な用途への応用が期待できる。

形状変化材料の設計における最大の課題の一つは、「適合性(conformability)」と「剛性(rigidity)」という、相反するように見える2つの要件のバランスを取ることだ。適合性は、新たな形状への変化を可能にするが、適合性が高すぎると形状を安定して保持できない。剛性は、材料を所定の位置に固定する助けになるが、剛性が高すぎると新たな形を取れなくなる。

研究チームはまず、2つの剛性要素(支柱とレバー)と、2本の伸縮自在な弾性ばねから成る、中立的に安定している(neutrally stable)状態にあるユニットセルから始めた。中立的に安定している物とは、ピクサー映画のオープニングを見たことがある人ならすでに見ているのだが、ロゴに登場する電気スタンドのキャラクターがそれに当たる。ピクサーの電気スタンドはどんな姿勢でも安定している。これは電気スタンドの形状に関係なく、調整された方法で伸びたり縮んだりするばねによって、重力が常に相殺されるからだ。一般に、中立的に安定したシステムでは、剛性要素と弾性(適合性)要素の組み合わせが、ユニットセルのエネルギーの釣り合いを保ち、各セルを中立的に安定した状態にする。これは各セルが、無限通りの位置や向きのあいだを移行でき、そのどれにおいても安定状態になることを意味する。

論文の共同筆頭執筆者で、SEAS博士研究員のガウラブ・チョーダリー(Gaurav Chaudhary)は、「中立的に安定したユニットセルを手にすることによって、材料の幾何学的配置を、その力学的反応から分離できます。こうした分離は、個別的および集団的なレベルの両方において行われます」と指摘する。「ユニットセルの幾何学的配置は、セル全体の大きさと、可動支柱1本の長さの両方を変えることで変更できます。一方、ユニットセルの弾性応答は、構造内のばね剛性か、支柱や連結の長さのどちらかを変えることで変化させることができます」

こうしたユニットセルは、どんな安定形状にも変形できることから、研究チームはこれを「全能形態材料(totimorphic materials)」と命名した。研究チームは個々のユニットセルを、中立的にで安定したジョイントで連結し、個々の全能形態セルから、2次元と3次元の構造体を構築した。

研究チームは、数理モデル化と現実世界における実証実験の両方において、全能形態材料の形状変化能力を示した。1枚のシート状に連結された全能形態セルが、湾曲したり、ねじれてらせん形になったり、異なる2つの面を持つ形状に変形したり、荷重に耐えたりもできることを実証した。

論文の共同筆頭執筆者で、SEAS博士研究員のS.ガンガ・プラサート(S. Ganga Prasath)は、「今回の研究では、このような形状変化要素を組み立てて、異質な力学的応答を示す任意の形状を取ることが可能な構造にできることを証明しています」と説明する。「この材料は幾何学に基づいているので、サイズを縮小してロボット工学やバイオテクノロジーでセンサーとして利用できるようにしたり、サイズを拡大して建築スケールで利用可能にしたりできるでしょう」

「まとめると、この全能形態材料は、変形応答をさまざまな規模で制御できる新タイプの材料への道を開くものです」と、マハデバンは話した。

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。