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体温を電気に変換する、ウェアラブル熱電変換デバイス
ヘルス・トラッカーやフィットネス・トラッカー、バーチャルリアリティのヘッドセットまで、ウェアラブル機器は日常生活の一部となっている。しかし、継続して給電する方法がなかなか見つかっていない。
ワシントン大学の研究チームは、斬新な解決方法を開発した。柔軟で着用可能な、これまでにない熱電素子によって、体熱を電気に変えるのだ。この素子は、柔軟性と伸縮性がありながら、頑丈で効率が良いという、両立が難しいとされる特性を持つ。
研究チームは、2022年7月24日付の「Advanced Energy Materials」で、その成果を発表した。
同大学で機械工学のアシスタントプロフェッサーを務めるムハンマド・マラクーティ(Mohammad Malakooti)氏は、「何もしなければ周囲に無駄に放出されてしまう熱エネルギーを集めれば、100%のゲインになります。このエネルギーを自己給電の電子機器に使いたいため、高い出力密度が必要です」と語る。
「電子素子の製造に積層造形を活用することで、伸縮性を持たせ、効率を上げ、ウェアラブル機器にシームレスに統合できるようにしつつ、基礎的な研究上の問いに答えを出しています」
研究チームのプロトタイプ素子は、30%のひずみで1万5000回を超える伸縮サイクルの後でも完全に機能する。これは、ウェアラブル機器やソフトロボット学においては非常に望ましい特徴だ。また、従来の伸縮可能な熱電素子と比べると、出力密度が6.5倍に向上している。
この柔軟な素子を製造するため、研究チームは各層に工学的な機能特性と構造特性を持つ複合材を3Dプリントした。充填材には液体金属合金が含まれており、これが電気と熱の高い伝導性をもたらす。伸縮性がない、熱伝導効率が悪い、製造工程が複雑といったこれまでの素子の限界を、この合金で乗り越えるわけだ。
また、中空のマイクロスフェア(微小球)を埋め込むことで、熱をコア層の半導体に誘導しつつ、素子を軽量化した。
研究チームによると今回の素子は、伸縮性のある織物や湾曲した表面にプリント可能であり、今後、衣料品などに応用できる素子が出てくるかもしれない。ウェアラブル機器の未来の可能性と実生活における応用を彼らは期待している。
ワシントン大学ナノエンジニアリングシステム研究所の研究者でもあるマラクーティ氏は、「我々の研究の特徴の一つは、物質の合成から、素子の製造と特性までの全域をカバーする点です」と語る。「そのため、新材料の設計、工程の各段階の設計、創意工夫を自由に行うことができるのです」
論文の筆頭著者は、ワシントン大学の機械工学修士課程に在籍するヤンシャン・ハン氏。共著者に、マラクーティ氏のほかにレイフ=エリク・シモンセン氏がいる。この研究には米国立科学財団が資金を提供した。
この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。