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人類が他の惑星を植民地化するまでに、どれくらいの時間がかかるのか?

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スペースXのイーロン・マスク(Elon Musk)CEOは、2050年までに火星に百万人規模の都市をつくりたいと考えている。これは人類がまだ火星の表面に降り立ってもいないことを考えると途方もなく無謀な願望に思えるが、実現可能なのだろうか。人類が他の惑星に移住するまでに、どのくらい時間がかかるのだろうか。そしてさらに、人類は太陽系の外の世界に移住することが可能なのだろうか。

こうした疑問に対する答えは、どの惑星の話をしているのかによって大きく変わってくる。火星であれば、数十年という期間は必ずしも非現実的なわけではない。宇宙工学研究オーストラリアセンターの副所長で、シドニーにあるニューサウスウェールズ大学の教授でもあるサーカン・セイダム(Serkan Saydam)は、火星への人類移住は数十年以内に実現できると述べている。

「人類は、2050年までに火星に移住できると思う」とセイダムはLive Scienceに語った。

セイダムは、未来の鉱業の研究を専門とする鉱業エンジニアだ。火星移住を成功に導く最初の大きな一歩は水だが、これは氷や含水鉱物から抽出できるとセイダムは述べる。水があれば農業を促進でき、2015年の映画『オデッセイ』のように火星で食物を育てることができる。氷や鉱物に含まれる水素を、ロケット推進剤のエネルギー源として使用することも可能だ。

しかし「2050年までの火星移住」について、科学的なコンセンサスがあるわけではなく、他の科学者は楽観的ではない意見を述べている。非営利団体「惑星協会」の共同設立者で、宇宙航行エンジニアのルイ・フリードマン(Louis Friedman)は、2019年にギズモードに対して「火星移住が近いうちに実現する可能性は低いと思う」と述べている。フロリダ大学の神経科学者で、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士と共同研究を行なっていたレイチェル・セイドラー(Rachael Seidler)もギズモードに対し、火星への移住について楽観的になりたがる人もいるが、「少し非現実的」に思えると話している。

しかし人類は、おそらく数十年以内に火星に到達はするだろう。中国は、2033年に火星への有人飛行の開始を計画しており、NASAも2030年代後半または2040年代はじめまでに宇宙飛行士を火星に送り込むことを目指している。人類が火星に到達できたら、次のステップは移住地の建設になるはずだ。

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移住という概念にはある程度の自給自足も含まれるが、それは地球からの完全な自立を意味するわけではない。セイダムは火星を、時々物品を輸入しなければならない離島になぞらえている。「火星の表面ではトラックを製造できないだろうから、機器や道具の大半は地球から搬送されるだろう。」とセイダムは述べている。

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火星が長期的な移住地として経済的に存続するには、何かを生み出す必要があるだろう。宇宙観光旅行は一つの選択肢だが、セイダムは、移住で成功するための鍵は採鉱だと指摘している。例えば、近くの小惑星でプラチナなどの貴重な鉱物を採掘する宇宙鉱業は、新たな宇宙経済を生み出す可能性があり、これによってさらなる投資や探査を促進すると考えられる。

火星は地球外の移住地として最も現実的な選択肢だが、人類にとって最も扱いやすい惑星というわけではない。火星の大気は95%以上が二酸化炭素で、気温は非常に低く、平均気温は華氏マイナス80度(およそ摂氏マイナス60度)くらいだ。地球からは宇宙船で約8.5カ月かかり、有害な放射線が降り注いでいる。

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一方、太陽系の外側にある惑星(太陽系外惑星)を探査すれば、ほぼ確実に、もっと住みやすい新たな生活の地が見つかるだろう。問題は、太陽系外惑星がとてつもなく遠い場所にあることだ。人類は太陽系外惑星に、宇宙船を送り込んでさえいない。太陽系から出た探査機はボイジャー1号と2号だけだ。1号と2号は太陽系を脱出するのにそれぞれ、 35年41年かかっている。太陽系外惑星は、それよりはるか遠方に存在する。

フランスのストラスブール大学にあるストラトブール天文台でブラックホールを調査している天体物理学者フレデリック・マリン(Frédéric Marin)はLive Scienceに対し、「現在の技術では、最も近い太陽系外惑星であっても到達するのに数万年はかかる」と語った。

それほどの移動時間がかかる以上、太陽系外惑星への移住は不可能に思えるかもしれない。しかし、科学的な好奇心から星間旅行についてコンピューター・シミュレーションを実行したマリンは、高速の宇宙船が登場すれば、近い将来、移動時間は大幅に短縮されると考えている。

「科学の進展により、100年ごと、1世紀ごとに、推進手段の速度が10倍に増えている」とマリンは指摘する。つまり1世紀経過するごとに、人類は宇宙をより高速で移動する方法を見つけ出しているのだ。太陽系外惑星への移動時間は、「数万年」ではなく「数千年」に短縮され、さらには「数百年」にまで短くなる可能性がある。

マリンは、人類に適した太陽系外惑星に、少なくとも500年以内に到達するという仮定のシナリオを提示している。数世紀にわたる太陽系外惑星への移動には、複数世代の人類で宇宙船を操縦する必要があるが、そのほとんどの人は、最終移住地となる太陽系外惑星を、自分が生きているあいだに見ることはないだろう。

マリンのシミュレーションは、複数世代が生活することになるコロニー船の最初の搭乗人数は500人程度が適していると示唆している。しかし、人々が残りの人生すべてを宇宙船で過ごすということにどのように立ち向かい、彼らの子孫が、恒星間航行を行うためだけに生まれてくるという運命にどのように対処するのかは、倫理的問題や不確実性を引き起し得るだろう。また、気候変動などの地球的課題により恒星間航行を開始する前に、人類が滅亡するおそれもある。人類が太陽系外惑星に移住できる保証は存在しないのだ。

この記事は、Live ScienceのPatrick Pesterが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。