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米エネルギー省(DOE)ラボとマイクロソフト、AIベースのエネルギー貯蔵研究イニシアチブでバッテリー新素材を発見

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米エネルギー省(DOE)ラボとマイクロソフト、AIベースのエネルギー貯蔵研究イニシアチブでバッテリー新素材を発見

要点:

  • 米エネルギー省(DOE)に所属するパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)は2024年1月9日、マイクロソフト(Microsoft)との提携を発表した。「科学的発見を加速させる」ために人工知能を使うという提携であり、テストケースとして、エネルギー貯蔵をテーマにするという。
  • PNNLとマイクロソフトは、イニシアチブの発足を発表したと同時に、新たなバッテリー素材を発見したことも公表した。マイクロソフトによれば、「数年ではなく数週間」で発見に至ったという。この素材は、既存のバッテリーに比べてリチウム使用量を大幅に抑えられるものであり、現時点で順調に合成できているという。ただし研究チームは、量産化できる保証はないとも述べている。
  • 新素材の探索には、AIと従来の高性能演算を組み合わせた、マイクロソフトの「Azure Quantum Elements」サービスが利用された。このサービスを使うことで、3200万種の素材の組み合わせを18種の「有望な」候補に絞る過程が、わずか80時間で完了したとマイクロソフトは述べている。

インサイト:

PNNLのトニー・ピュールン(Tony Peurrung)科学技術担当副所長は、「マイクロソフトとの提携の目的は、AIを科学者に利用しやすくすることです。AIには、想定外なことや、従来の常識を外れているものの検証に値する素材やアプローチを発掘するポテンシャルがあります」と述べた。「今後、科学的発見のペースを加速させる興味深い旅が約束されており、これはその第一歩となるものです」

PNNLは、今後数年にわたってマイクロソフトとともに、「科学的発見と持続可能なエネルギーにおける先駆的ブレイクスルー」を目指して共同研究を行なうと表明し、まずは計算化学と素材科学にフォーカスすると述べた。

共同イニシアチブによる新たなバッテリー素材の発見、および、有効に機能するバッテリーの開発は、着手から完了までに9カ月もかからなかった、とPNNLは述べている。従来であれば、数年を要するプロセスだ。研究所は現在、追加的な改良を加え、新素材の性能を、既存のベンチマークに匹敵するレベルに引き上げるとともに、新素材のその他の機能的特性を探索している。

PNNLで最高デジタル責任者を務めるブライアン・エイブラハムソン(Brian Abrahamson)は、「我々は早い段階で、AIが有望な素材候補の特定を劇的に加速させること、また、アイデアを実験室で形にする我々の能力を高めてくれることに気づきました」と語る。

素材科学における従来のアプローチは、試行錯誤の段階に長い時間を要したと、マイクロソフトは説明する。AIは、このプロセスにおける人間の骨折り仕事を大幅に減らすことに成功した。

マイクロソフトによれば、このAIシステムは、学習を経て、利用可能なすべての素材を評価し、組み合わせを提案したという。AIは、3200万種の候補をふるいにかけて、安定した素材を選び出し、さらにこれらの中から、反応性と伝導率が最も優れたものを特定した。

Azure Quantum Elementsの製品責任者であるネイサン・ベイカー(Nathan Baker)は、「シミュレーションにおいて、従来ならば量子化学計算(quantum chemistry calculation:原子や分子の性質を、量子力学の原理に基づいた計算から予測する分析)が必要になるすべての段階で、代わりに機械学習モデルを利用しました。そのため、シミュレーションに基づくインサイトや詳細な観察結果が同様に得られるにもかかわらず、シミュレーションそのものを、最短で50万分の1の時間で完了できました」と説明する。

マイクロソフトによれば、この新素材は、リチウム、ナトリウム、その他いくつかの元素からなる固体電解質であり、従来のリチウムイオンバッテリーと比べてリチウム使用量が最大で70%少ないという。新素材はまだ研究段階にあり、科学的価値は、素材そのものよりも、むしろ発見にかかった時間の短さにあるとエイブラハムソンは語る。

Azure Quantum Elementsはその名に反し、現段階では量子コンピューターを利用していない。ただしマイクロソフトは、このシステムは「将来的に量子コンピューターを統合することを念頭に」設計されていると述べ、化学分野は「量子コンピューターの最初の応用先になるだろう」との展望を示した。

PNNLのプレスリリースは、こう述べている。「2つの組織は、AIが得意とすること、すなわち、どんな人間も把握しきれないような、無数の断片的な情報を統合する能力を応用するという一点に集中し、こうした分析に基づく結論を迅速に提示しました」

この記事は、Utility DiveのDiana DiGangiが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。