CLOSE

About Elements

美しい未来のために、
社会を支えるテクノロジーを

TANAKAは、「社会価値」を生む「ものづくり」を世界へと届ける「貴⾦属」のスペシャリスト。
そして、「Elements」は、わたしたちのビジネスや価値観に沿った「テクノロジー」や「サステナビリティ」といった
情報を中⼼に提供しているWEBメディアです。
急速にパラダイムシフトが起きる現代において、よりよい「社会」そして豊かな「地球」の未来へと繋がるヒントを発信していきます。

Elements

美しい未来のために、
社会を支える技術情報発信メディア

検索ボタン 検索ボタン

メルセデス・ベンツ、燃料電池自動車普及の一手となる車を市場投入

この記事をシェアする

Christoph Rauwald, ©2018 Bloomberg L.P.

燃料電池自動車は燃料の再補給の難しさ、さらに補給インフラの整備がその普及を妨げている。この状況に対し、メルセデス・ベンツが革新的な一歩となる車両を市場投入する。GLCクラスのプラグイン燃料電池車「Fセル」は燃料電池と、家庭用電源から充電できるバッテリーを連動させることでドライバーの燃料(水素)の再補給を簡易化する。

Bloomberg)──ドイツのメルセデス・ベンツは、運輸業界の顧客向けに、同社最新の燃料電池車の納車を開始した。燃料電池車はこれまで、水素の貯蔵と充填の難しさがネックとなってきたが、将来有望な技術として土台を固めるのが狙いだ。

メルセデス・ベンツGLCクラスのプラグイン燃料電池車「Fセル」は、水素燃料電池と、電源コンセントから充電が可能なバッテリーを組み合わせて搭載している。水素燃料の充填に関するドライバーの懸念を解消するためだ。

同社はFセルを当面、全サービス込みの値段として1カ月799ユーロ(約102700円)で貸し出す予定。契約終了後に、ドライバーは車を返却することになる。実際の道路で試乗してもらえば技術向上につながると、メルセデス・ベンツを所有するダイムラーは話す。

メルセデス・ベンツで電気駆動システム統合を統轄するユルゲン・シェンクは先ごろ、ドイツのシュトゥットガルトで記者たちの質問に答え、「コストと規格化についてはまだ目標を達成していないが、正しい方向へと向かっている」と述べた。「燃料電池は飛躍的進歩を遂げるだろう。ただし、それが自動車、小型トラック、バスのどれに搭載されるかはまだわからない」

メルセデス・ベンツの広報担当者によると、ドイツでは201810月末に納車が始まる。その後、日本でも販売される予定だという。

排出するのは水蒸気のみという燃料電池車は、コスト高と、水素貯蔵にまつわる複雑さ、インフラ不足が原因となって、普及がなかなか進まない。水素自動車開発に積極的なトヨタ自動車とヒュンダイ自動車はともに燃料電池車を販売している。日本は、2020年の東京オリンピック時に技術を披露できるよう、多額を投資して水素充填ステーションの設置を進めている。

BMWなどの他の自動車メーカーは、大型電気自動車用に、航続距離の長いモデルの試作に取り組んでいる。フォルクスワーゲン傘下のアウディは、2020年に燃料電池車の小規模量産を計画中だ。

ドイツは欧州最大の経済国だが、いまだに水素充填インフラがまばらにしか存在しない状況だ。ダイムラーのほか、化学工業メーカーのリンデ、石油企業のロイヤル・ダッチ・シェルやトタルが参加する水素インフラ共同事業「H2 Mobility」は、2019年中にドイツ国内100カ所に水素充填ステーションを設置することを目指している。ダイムラーによれば、2023年には設置数が約4倍になる予定だという。

短時間で水素を充填

燃料電池は、水素と酸素あるいは酸化剤の反応を起こして、化学エネルギーを電気に変換する。メルセデス・ベンツのFセルは、燃料電池に加えてバッテリーを搭載しており、最長航続距離は478km。水素タンクを満タンにするのにかかる時間はわずか3分だ。

メルセデス・ベンツは、2022年までに電気自動車10車種の投入を目指している。20189月にはそのひとつとして、同社初の全電動クロスオーバーSUVEQC」を公開した。2025年までには、同社が全世界で販売する車両の15%から25%を電動化する見込みだ。

電気自動車や燃料電池車は、道路を走行する際にいかなる物質も排出しないが、製造段階については話が別だ、とシェンクは言う。燃料電池や高電圧バッテリーを搭載した自動車を製造するための電力需要によって、地球温暖化の一因である二酸化炭素がかなり排出される。

プラグイン燃料電池車の場合は、ライフサイクルを終えるまでに、二酸化炭素の排出を、燃焼エンジンと比較して55%抑えることができる(さらにこの数値は、バッテリー充電のための電気が再生可能エネルギーから生まれたものではない場合の計算だ)。

シェンクは「これは、この技術が今後長く使われていくと信じるのに十分な理由だ」と述べた。

(第10段落にインフラについての詳細を追加した。)

記事執筆者の連絡先:Christoph Rauwald:crauwald@bloomberg.net
当記事担当編集者の連絡先:Anthony Palazzo:apalazzo@bloomberg.net、Elisabeth Behrmann、Tara Patel
©2018 Bloomberg L.P.

この記事は、Bloombergのクリストフ・ローウォルドが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。