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グーグルがフィットビットを買収した真の理由
グーグル(Google)は、フィットネストラッカーを手がけるフィットビット(Fitbit)を21億ドルで買収すると発表したとき、「ウェアラブル機器の革新に拍車がかかる」と述べた。少なくともデバイスおよびサービス担当シニアバイスプレジデントのリック・オスターロー(Rick Osterloh)はブログでそう述べていた。買収が完了すれば、フィットビットの独立企業としての歴史は幕を閉じる。フィットビットは創業12年のハードウェアメーカーで、自分を数値化する現象の火付け役と考えられている。今や多くの人々が1日の歩数を友人や愛する人と比べている。
グーグルはすでにウェアラブル技術に大金を投じている。2019年には、時計メーカーであるフォッシル・グループ(Fossil Group)の研究開発部門から技術と人材を4000万ドルで獲得した。しかし、グーグルはApple Watchやサムスン(Samsung)のGalaxy Watchといった競合製品に匹敵する製品を持っていない。フィットビットの優れた技術があれば、強大なライバルたちと互角に渡り合えるウェアラブル機器を開発できるかもしれない。スマートウォッチの売り上げは2023年までに倍増し、業界全体で340億ドルに達すると見込まれているため、グーグルが急ぐのも理解できる。しかも、グーグルにとっては、慣れ親しんだ戦略でもある。グーグルは2017年、スマートフォンメーカーHTCの一部を11億ドルで買収し、Pixelスマートフォンの生産を強化した。
しかし、グーグルはすでに優れたハードウェアとソフトウェアをいくつも持っている。フィットビットの買収から得られるものがほかにあるのだろうか?
今回の買収でいちばんわかりやすい魅力は、膨大な数にのぼるフィットビットの顧客の健康に関するデータだ。フィットビットのデバイスは10年以上にわたり、装着者の健康に関する測定値を追跡し、歩数、消費カロリー、運動といった行動を集計してきた。グーグルは基本的に広告企業であり、ユーザーのプロフィールを充実させるため、このような情報を必要としている。「生理カレンダー」のようなアプリはユーザーの情報をフェイスブック(Facebook)などと共有しているため、広告主はすでに人々の健康状態を情報に基づいて推測できる。
ただし、オスターローは「フィットビットの健康関連データをグーグルの広告に利用することはない」と断言している。それでは、グーグルにとってほかにどのような魅力があるのだろう?
アップル(Apple)をはじめとするグーグルの競合企業は、複雑なシステムの単純化に貢献すれば大きな利益を得られるかもしれないという可能性に魅了され、ヘルスケアをテクノロジー業界の次なる主戦場と捉えている。ヘルスケア分野において、グーグルは明らかに消極的だった。スタティスタ(Statista GmbH)の試算では、ヘルスケアテクノロジーの市場は2020年までに240億ドル規模に到達する見込みだ。グーグルはヘルスケアテクノロジーを専門とするグループ企業べリリー(Verily Life Sciences LLC)を通じて、心臓血管の健康、糖尿病などに取り組んでいるが、ヘルスケアを事業計画として公に推し進めたことはない。
しかし、フィットビットはまさにそれを事業として行っている。たとえば、保険会社などの企業、さらにはシンガポール政府と大きな利益が得られそうな契約を結び、その顧客や従業員、市民にフィットネストラッカーを提供している。ガートナー(Gartner, Inc.)のシニアアナリスト、アラン・アンティン(Alan Antin)はフィットビットについて、ヘルスケア分野の企業パートナーや利害関係者と一緒に仕事をしてきた豊富な経験があり、グーグルはその恩恵を得られる可能性があると分析している。「あまり知られていないが、フィットビットにはB2B企業としての一面があり、健康保険会社と提携したり、企業の健康プログラムを直接計画したりしている」とアンティンは言う。「グーグルのような企業にとってはやや難しいことだ」
フィットビットの最高経営責任者(CEO)を務めるジェームズ・パーク(James Park)は、ヘルスケア分野での成功を目指すテクノロジー企業にとって、鍵を握るのはフィットビットが築いているような関係だと述べている。パークCEOは10月、「TIME」のインタビューで、「ヘルスケアのシステムは驚くほど複雑で、大きな影響をもたらすためには、さまざまな大企業と協力する必要がある」と語っていた。「知っての通り、われわれの目標は、われわれの製品を世界中の多くの人々に利用してもらうことだ。そのための唯一の方法が、ヘルスケア分野の名だたる大企業と連携することだ」
グーグルはウェアラブル機器戦略の活性剤として、すでに確立されているフィットビットのユーザー基盤に加え、フィットビットがヘルスケア分野で築いてきた関係を必要としているのかもしれない。「もしグーグルが独自のスマートウォッチを作りたいと考えているとしたら、すでに販路があり、開発に必要なソフトウェア技術もハードウェア技術も揃っているため、すぐにも市場に参入できるだろう」とアンティンは言う。「しかし、私が述べたような(ヘルスケア分野における協力関係)は、それほど短期間で築くことなどできない。グーグルはそこに大きな価値を見いだしたのではないかと思う」
この記事は、TIMEのPatrick Lucas Austinが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。