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NASAは「もうひとつの地球」を見つけたのかもしれない

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NASA's Goddard Space Flight Center

天文学者に対して、「生命が存在する惑星が宇宙にいくつあるか」と質問したとき、彼らは、「考えられる答えは2つしかない」と言う可能性が高いだろう。つまり、「1個」か「無数」のどちらかだ。

われわれは、「ゼロ」という答えについては排除できる。地球では明らかに、生物が豊富に生息しているからだ。これは、これまでのところ、冒頭の質問への答えは「1個」であることを示唆する。

だが、もしもう1個見つかったとしたなら、答えは2個を通り越して一気に無数へと跳ね上がる。その理由はこうだ。

この地球で生命の発生を可能にした要因の重なり合いは非常に複雑であり、確率的・統計的にいえば生命の発生は1回しか起こり得ない、という宇宙を仮定することはできる。だが、もし2回以上起こり得るなら、なんらかの制限がある必要性があるだろうか。(実際に、自然界で2~3回しか起きないほど非常に稀な事象もあり得るかもしれない。しかし、「ゼロか、1か、無数か」という考え方はもともと、無神論、一神論、「無限の多神論」などを論じる神学者たちからやって来たものだ。惑星科学者はそうした論じ方を気に入って、自分たち自身の考え方であると主張している模様なのだ)

人類は、常に「無数」を望んできた。地球が、玄関の明かりの灯る唯一の惑星だとすると、それはひどく寂しい宇宙と思われるからだ。系外惑星(太陽以外の恒星を公転する惑星)の発見が最近急増しているなか、天文学者たちは現在、銀河系内にある事実上すべての恒星について、少なくとも1個の惑星が公転していると考えている。

銀河系(太陽系を含む銀河)には最大2500億個の恒星が存在し、宇宙には他の銀河が約1000億個存在する。つまり、計り知れないほど膨大な数にのぼる場所に、生命が繁栄している可能性があるわけだ。

天文学者らが、生命存在可能な惑星の探査で重点を置いているのは、地球に似た岩石惑星で、大気と水があり、公転軌道が「ハビタブルゾーン(生命生存可能領域、ゴルディロックスゾーンとも呼ばれる)」内にある惑星だ。ハビタブルゾーン内では、惑星の表面温度が、水が液体の状態で存在するのにちょうど適した温度になっている。

米航空宇宙局(NASA)は1月6日、「大当たりが出た」と発表した。地球からわずか100光年の距離にある好条件の恒星のハビタブルゾーン内に、地球サイズの系外惑星を発見したのだ。

この恒星は「TOI 700」、惑星は「TOI 700 d」として知られている。TOI 700 dは、TOI 700を公転する3つの惑星のうちで、最も外側に位置する惑星だ。

TOI 700は、太陽より小さく、温度が低い恒星グループである赤色矮星に分類される。赤色矮星は、表面温度が比較的低いため、生命存在可能な惑星の探査対象には適さないと当初は考えられていた。だが実際には、惑星が中心星という「暖炉」に十分近い軌道に位置していれば、多量の光と熱を受け取ることができる。TOI 700 dもそうなのだ。

TOI 700は、NASAのTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite、系外惑星探査衛星)によって発見され、スピッツァー宇宙望遠鏡によって環境データと化学データが測定された。TESSは、搭載する4台の望遠鏡を用いて、公転している惑星が中心星の前を横切る際に中心星の光に生じるわずかな減光を探査している。

スピッツァー宇宙望遠鏡は、主に赤外線スペクトル領域で観測を行う。赤外線は温度の指標となるため、この観測によって、組成や化学的性質などに関する多くのデータが得られる。

TOI 700を公転する他の2つの惑星は、軌道が中心星の熱源に近すぎるため、水が蒸発してしまう。TOI 700 dは、地球と比べて約2割大きく、中心星から約1500万マイル(約2400万キロ)の距離を公転している。これは、地球が太陽から9300万マイル(約1億5000万キロ)の距離にあるのに比べると、はるかに中心星に近い。だが、赤色矮星は比較的温度が低いため、TOI 700 dが受け取るエネルギーは、地球が太陽から受け取るエネルギーの86%ほどになる。

これに基づくTOI 700 d環境のコンピューターモデルは、惑星が「潮汐固定」の状態にあり、中心星に常に同じ面を向けて公転していることを示唆している。それでも、惑星の大気が、夜の面に熱を分配する助けになる可能性があるため、昼の面と夜の面の境界領域では確実に快適な温度になっていると考えられる。

TOI 700 dのあるモデルでは、水が豊富で大気主成分が二酸化炭素(CO2)という、大気と水を失う以前の古代の火星に似た惑星になっている。また別のモデルでは、乾燥した、雲のない惑星になっている。研究者らは、全部で20種類のTOI 700 dモデルを作成している。このうちのいずれかひとつが正しいか、もしくは、どれも正しくない可能性がある。

これほど非常に多様なモデルが生まれることは、人類の想像力と無知の両方を示している。同じひとつの惑星について、信ぴょう性のあるモデルを十数種以上も考え出せるだけのデータを収集できた一方で、その中に正しいモデルがあるとしても、どれが正しいモデルであるかを指摘するのに十分なデータは得られていないわけだ。

生命存在の可能性に関しては、推測さえも不可能だ。だが、太陽系外惑星科学はまだ始まったばかりの研究分野であり、最初の系外惑星が発見されたのは1992年のことだ。現時点では、研究の「補助輪段階」さえもまだ通過していない。TOI 700 dが何かを証明しているとすればそれは、異常なほど多くの系外惑星に対して、異常なほど多様な可能性が存在する可能性がある、ということだ。

冒頭で紹介した「天文学者の多項選択式問題」に答えようとする試みについて賭けをするつもりなら、「無数」という答えに賭けることを検討してみよう。

この記事の初出はTIMEのSpace(宇宙)ニュースレターに掲載されたものです。Space関連記事をいち早く受け取るには、ここをクリックしてサインアップしてください。

この記事は、TIMEのJeffrey Klugerが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。