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新しい形態のウラン発見される
ウランの新しい化合物が発見され、現在の核廃棄物処理計画に影響を及ぼす可能性が指摘されている。
放射性廃棄物の処理については、多くの政府が地中深くに埋めることを計画している。しかし新しい研究によると、そのような保管状態では、これまで知られていなかったウラン化合物が一時的に生成され、この際に少量のウランが水に溶け出す可能性がある。水に含まれるウランはやがて、地下水に入り込む恐れがある。
英国では現在、使われる電力の20パーセントを原子力産業が供給している。英国の放射性廃棄物の量は750,000立方メートルと推定されている。オリンピックサイズ・プールの約300杯分だ。
これらの廃棄物は、現在は地表近くに保管されているが、危険性がなくなるまでには数十万年がかかると考えられている。
各国政府は、放射性廃棄物の安全な処理方法を検討中だ。地下数百メートルに埋める「地層処分」が、国際的な共通認識となりつつある。多くの国が、すでにそのための廃棄容器の製造を始めている。
英国マンチェスター大学の鉱物学者であるサミュエル・ショー(Samuel Shaw)教授は、「地球を不毛な場所にしてはなりません」と述べる。ショー教授は、同じくマンチェスター大学のキャサリン・モリス(Katherine Morris)教授と共に、『Environmental Science and Technology』誌で発表された論文を共同執筆した。
ショー教授によると、このような廃棄容器をどこに埋めるのであれ、地中には各種の微生物が生息していると説明する。いかなる人工の遮蔽容器も、数十万年にわたる劣化に耐えることは期待できない。そのため、放射性廃棄物はそのうちに、こうした微生物や、微生物がつくり出す化学物質が含まれる地下水に接触することになる。
ウランには、複数の酸化状態がある(元素が酸化物を形成したときの電子数が異なるものだ)。それはちょうど、各種の放射性同位体(原子核がもつ中性子の数が異なる物質)と似ている。一部の酸化物は、他の酸化物よりも、環境内で移動しやすい。地中ではウランは移動しないはずだが、地中微生物がつくり出した硫化物がある状態では、少量のウランが周囲の水に溶け出すことを示す複数の報告がある。この現象は、まだ誰にも説明できていない。
さらに詳しく調査するために、ショー教授の研究チームは、地層処分容器の環境を模倣した条件にさらしたサンプルを調べた。これらの新しいウランの形態を特定するために、チームは極めて強い光を使った。
オックスフォードシャーにある研究施設「ダイアモンド・ライト・ソース」のシンクロトロン(円形加速器)は、太陽よりも100億倍強い光線を出す。この光線を利用することにより、ショー教授のチームは、これまで確認されていなかった、硫化物が存在する場合に形成されるウランの新しい形態を特定することができた。この結果は、理論モデルでも確認された。
この研究が示すのは、硫黄原子に結合させるという環境条件では、ウランが移動しないはずの状態にあるのに溶け出すという、これまで知られていなかった化学形態を経るということだ。この過程においては、数時間で約1~2パーセントのウランが水に溶けだす。
英国政府の外郭団体である放射性廃棄物管理(RWM)グループによると、この研究は、放射性物質が適切に封じ込められなくなったことを意味するわけではない。今回の研究によって明らかになった内容については歓迎するが、新しく発見された形態は、非常に短期間で終わるため、懸念を抱くものではないという。
RWMの主任研究員であるチェリー・ツイード(Cherry Tweed)教授は、公式声明で次のように述べている。「今回示された証拠は、地層処分が高レベル放射性廃棄物の長期保管に最適であり、今後数世代にわたって人々や環境を守るものであることを、さらに確信させてくれました」
この記事は、The GuardianのAnna Demmingが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。