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2050年のテクノロジー。それは救世主か、それとも破壊をもたらすか

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imaginima

未来予想など、愚か者がやることだ。当たっていれば陳腐に思えるし、外せば、1943年に「コンピューターは全世界で5台ぐらいしか売れない」と断言したIBMの創立者トーマス・ワトソン(Thomas Watson)のようだと言われてしまう。

2004年に、未来のテクノロジーについての記事を『ガーディアン』紙で書いたデヴィッド・アダムス(David Adams)は、こうしたリスクを認識していた。予測がうまくいかなかった例として、まさにワトソンのこの予測まで引用している。

2020年の現在から見て、アダムスはワトソンより正確に未来を予測していたことは明らかだ。現在を予測する際にアダムスは、テクノロジー予測の多くの落とし穴をうまく避けていた。空飛ぶ車が登場するとも言わなければ、瞬間移動や超光速旅行といったSFの技術が実現されるとも言わなかったのだ。

だがある意味でいえば、アダムスの予測は過度に悲観的だった。テクノロジーはこの16年間で飛躍的に進歩している。その中でも、最も進歩したのはAIと言えるだろう。

アダムスは2004年の記事の中で、ロボットが近いうちに人間と対話できるようになる可能性が低い理由を説明し、「人工知能の脳は、変化や予測不可能な出来事には対処できない」と書いている。

アダムスの記事のなかで、オックスフォード大学のロボット工学専門家ポール・ニューマン(Paul Newman)は、「写真の木と、本物の木の違いをロボットに教えるのは、根本的に非常に困難だ」と語っている。現在もオックスフォード大学で研究を続けるニューマンはそののち、幸いにも、自分の悲観主義が根拠のないものであったことを証明した。同氏が2014年に共同設立したオックスボティカ(Oxbotica)は、無人自動車の技術を開発し、世界中の自動車メーカーに販売している。同氏が以前言及していた問題は、無事に解決されたはずだ。

細かいことを気にせずに見た場合、「2020年の予測」が当たらなかった重要ポイントはふたつある。ひとつは技術、もうひとつは社会にまつわるものだ。

アダムスは、「ガジェット好きなら、ひとつのキーパッドで電話、PDA(タブレット)、MP3音楽プレーヤーを操作できるようになるかもしれない」と書いている。「あるいは、腕時計やポケットベル、ラジオからの出力を、ひとつのスピーカーに統合できるかもしれない」

家電製品が多機能になり、相互の接続性が大幅に向上するという発想は正しかった。だが、明確に予測しきれていない「穴」があった。スマートフォンだ。

「単機能の家電」が半世紀にわたって続いていたなかで、ひとつのデバイスにこれほど多くの機能を詰め込めるようになると見抜くのは難しいことだった。アダムスが記事を発表してからわずか3年後、iPhoneが登場し、あらゆるものを変えた。別個にMP3プレーヤーを持ち歩かなくてよくなった。2020年のわれわれは実際に、別個にカメラも財布も車のキーも、携帯しなくなっている。

スマートフォンを予測できなかったのは、技術の進歩を見落としたからだ。だが、他にも見落とした点がある。それは、こうした変化する力に対する社会の反応だ。

2004年に行われた予測は、根本的に楽観的なものだ。アダムスは記事の中で、生体認証の医療データが、かかりつけ医のコンピューターに送信されることや、ユーザーの「電子手帳」の予定に基づいて、洗濯機が自己の修理を自動的に手配すること、衣類に付けられた無線自動識別(RFID)チップがカスタマイズされた広告を表示したり、現在地をもとに電話を調整したりすることを予測している。

そして、これらすべてが信頼感に基づいている。これらの変化がよいもので、企業はそれらを善意に満ちたものにするはずだと信じているのだ。

アダムスのインタビューを受けた人のひとりは、「プライバシーの喪失が非常に耐えがたいものになり、どう対処していいかわからなくなっています」と認めた上で、2020年のテクノロジーについては、こう説明した。「しかし、その目的や、提供される情報の量、その行く先、さらにはその代償として、スーパーでそれほど長く列に並ばなくてもよくなるといったことが明確になるなら、その代償を受け入れるでしょう」

しかし実際には、圧倒的大多数の人々は、この15年間というもの、この代償を受け入れるという選択肢を与えられたことは一度もない。リスクにさらされるものの正体を知っていたら、多くの人はこの代償を受け入れなかっただろうということが、ますます明らかになっている。

さて、iPhone発表のわずか3年前に書かれたガーディアン紙の記事がスマートフォンの登場を予測できなかったとしたら、現在のわれわれは、どうすればその10倍先を的確に予測できるだろうか。

2050年の世界はいろいろな意味で、想像を絶するほど異なっているだろう。確実に予測できることは、人類はまだ2本の腕と2本の脚をもち、長時間シャワーを浴びていなければ不快な臭いを発することぐらいだ。

だが、私たちにとって有利に働く力もある。現在のインターネットは、2004年と比べるとはるかにしっかりと定着しているということだ。人々の生活に対してインターネットが持つカオス的効果は弱まる兆候が見えないものの、少なくともその予測不可能性は、予測どおりのものだ。

同様に、西欧諸国におけるスマートフォンの普及率は、今や十分に高くなっている。今後30年間で世界がどんなに変わっても、それはスマートフォンを所有する英国人と米国人の数が増えた結果とはならないだろう。

他の予測は、トレンドラインをたどれば論理的な結論にたどり着くくらい単純でありうる。2050年までに、少なくとも先進国では、電気自動車への切り替えがほぼ完了するだろう。また、「安価な機械化」よりも大気の質を優先し始めた中国などの発展途上国でも、同様の動きが見られるだろう。

「次の10億人」がネットに接続するようになるだろう。彼らは、たいていは格安スマートフォンを使い、ますますユビキタスになるセルラー接続を利用することになる。だが、こうした人々がネットで何をするかについては、全く見当がつかない。

2020年の現在、相互に相殺するような2つのトレンドが存在する。ひとつは、新しくネット接続が可能になった国において、プロバイダー(主にフェイスブック)が補助金付きの契約を使って、必要最低限の機能しかない簡略版のインターネットを人々に使わせようとする動きだ。これが大規模に成功すれば、現在のネットがもつ利点の大部分は国全体から奪われる。そして、フェイスブックの受動的な参加者になり、いくつかの地元メディア企業や決済会社を利用するしかなくなるだろう。

しかし、インドなど各国の規制機関や、競合するキャリアからの抵抗によって、新規参入国に「本当のインターネット」がもたらされる可能性はある。ただしそれも、国の規制機関が、中国やイランやロシアを真似した別の方向へと進み、完全に国家主義的なインターネットを構築して、フェイスブックを締め出すことがない限りは、という話だ。

彼らは、こう合理化するだろう。国民に国産サービスを使うよう義務付けるよりも、ネットの利益が国内で確実に生じるようにする方がよほどいいはずだ。また、それで検閲が容易になるなら、それも益と言えるだろう。

『ニュー・ダーク・エイジ テクノロジーと未来についての10の考察』(邦訳:NTT出版)という、不安になるタイトルの本の著者であるジェームズ・ブライドル(James Bridle)は、その考察において、次の10億人とは実際には誰なのかを見失ってはいけないと指摘している。

「わたしが気になって仕方がないのは、テクノロジー業界が『次の10億人のユーザー』の話をするとき、こうした人々が、気温の上昇や洪水に苦しめられることになるのをわかっていないことだ。話題は、国境を強固にすることばかりであり、この現実に対して、政治的にも社会的にも技術的にも準備ができていない」とブライドルは述べている。

なぜなら、単純なトレンドラインから未来を予測するのであれば、認めざるを得ないことがもうひとつあるからだ。それは気候問題だ。何が変化するかという詳細についてはここでは扱わないが、人間たちの反応についてはここで当然、扱うことになる。

ひとつの可能性が「プランA」で、「人類はやがて温室効果ガスの排出量について、正味ゼロを達成する」というものだ。このシナリオでは人類は、日常的な消費において植物性タンパクが肉に取って代わる世界で生活し、ネットワーク化された電動の大量輸送機関が、郊外やその先まで広がっている。テレビ会議とリモート出席の世界が実現し、仕事で飛行機に乗ることも確実に減っていく。そして英国の家の壁の内部には断熱材が入れられる(すべての未来がハイテクとは限らないのだ)。

プランAが失敗したら、プランBに頼るという可能性もある。プランBは、成層圏に二酸化硫黄が大量に注入され、空が乳白色になっている世界だ。多くの太陽光線を反射させて温室効果を止めることが目的だが、そのせいで、全世代が澄み切った青空を見ることはない。そこでは、空気中から二酸化炭素を抽出して、使われなくなった油井のなかに送り込む、専用の巨大処理工場が稼働している。避けきれない最悪の影響から逃れるため、住人が移住し、街全体が捨て去られる。

気候を操作するジオ・エンジニアリングを行うプランBは、人類の未来に関しては楽観的でも悲観的でもないと述べるのは、『After Geoengineering』の著者であるホーリー・ジーン・バック(Holly Jean Buck)だ。「最悪の事態は、プランAもプランBも失敗することだろう。これからの10年間で、何らかの形態のジオ・エンジニアリングが試されるとわたしは思う。この話題は現時点ではトーンダウンしているが、人々がその話をしたがらないことが原因なのだと思う。われわれには知識体系がなく、開発するには20~30年が必要だろう。ちょうど、世紀半ばの時期が転機になるはずだ。この頃になれば、気候変動が間違いなく明らかになっているだろう」

だがバックは、ブライドルと同様に、この違いを生む本当に重要な要因は、必ずしもテクノロジーではないと考えている。「住みやすい未来になるか、悲惨な未来になるかを決めるのは、社会的態度と社会的変化だ」

「現在は一時しのぎの時代だ。社会はかつて、長期的な計画を立てることができた。長期的インフラを構築し、少し先のことまでよく考えていた。それが現在はできていない。その場しのぎの解決策に飛びついている。われわれに必要なのは、文化によって価値を変化させ、熟考したうえで意思決定ができるようにすることだ」

他の可能性もある。テクノロジーが土壇場で勝利を収め、さらにそれが続いていくというものだ。デジタル・コンサルタント会社のパブリシス・サピエント(Publicis Sapient)で体験部門を統括するジョン・マエダ(John Maeda)は次のように述べている。2050年までに「コンピューターは、地球上で生きているすべての人間の脳を合わせた処理能力を超える。クラウドは、地球上で死んだ多くの人の脳からも思考を吸い上げる。われわれは、連携さえすれば生き残れる。だからわたしは、人類と未来のコンピューターの協力が続いていくと予測する」

この種の考え方は、シンギュラリティ(技術的特異点)として知られるようになった。思考機械(AI)の能力が人類を超え、進化が加速し、目まいのするような結果をもたらすようになる時点(おそらく瞬間)が存在するという概念だ。

『The AI Does Not Hate You』の著者、トム・チヴァース(Tom Chivers)は「AI研究者に、汎用AI(人間ができることをすべてこなせるマシン)が実現される時期について尋ねると、2050年までに実現できる可能性は半々だと考えていることがわかる」と語る。

「AI研究者たちはまた、AGI(汎用人工知能)は大きな変革を起こせると考えている。研究者たちの多くが、『病気と貧困の根絶』が可能だと記載された2015年の公開書簡に署名している。だが同時に」とチヴァースは付け加え、この分野で行われた2013年の調査を引用した。「たいていは、『最悪な結果(存在の根幹に関わるような破壊的状況)』、つまり人類滅亡になる可能性も15~20パーセントあると考えている」

汎用人工知能が発生するという50パーセントの可能性について思い悩むことには、おそらく意味がないのだろう。もしそうなったら、考えうる他のすべての予測は現実的には意味のないものとなり、この記事も、われわれが知っている人類も、忘れ去られるだろう。

また、超越的に優秀な人工知能が現れるが、人類を救うこともなければ滅ぼすこともないと仮定し、その見通しどおりに人類が生きるとしたら、起こりうる最悪のこととは何だろうか。われわれは「より良い世界」を、無意味に築こうとしているのだろうか。

この記事は、The GuardianのAlex Hernが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。