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NASA/JPL-Caltech

隕石を食べる微生物が、地球外生命の探索を手助けするかもしれない

  • 未来
2020/4/15

地球外生命体は、どんな姿をしていて、どんな痕跡を残すのだろう? もし地球以外の惑星に植物やプランクトンに相当する生物がいて、その星の大気を酸素で満たしていたら、あるいは高度な文明が存在して人工衛星を打ち上げていたら、惑星全体に変化が及び、地球のわたしたちもそれに気づくかもしれない。だがもし、地球外生命体が小さいサイズで、数も少なければ、その影響力はわずかなので、地球のすぐそばにいたとしても発見するのは困難だろう。

わたしたちの太陽系のなかに、もし地球外生命体がいるとしても、これまでその植生や運動が観測できていない事実からして、ごく単純な微生物だろう。火星土壌の奥深くに潜んで、有害な紫外線から身を守っているかもしれない。あるいは、小惑星のなかに休眠状態のまま隠れていて、好適な環境に不時着するのを待っているのかもしれない。

ウィーン大学の研究チームは、こうした微生物がいたとしたら、どうやって自力で生存し、どんな痕跡を残すかを考察するため、地球上でもっともタフな生物のひとつ「メタロスファエラ・セデュラ(Metallosphaera sedula)」に目を向けた。彼らは『ネイチャー』に掲載された論文で、微生物が隕石を食べたら何が起こるかを詳述したのだ。

「ここから、生命の探索に関わる重要な情報が得られればと思っています」と、論文の共著者であるウィーン大学の生物物理化学者、テティアナ・ミロイェヴィッチ(Tetyana Milojevic)は言う。

メタロスファエラ・セデュラ(M. sedula)という微生物は、細菌(バクテリア)ではない。アーキア(古細菌)と呼ばれる、まったく異なる生命の一系統だ。アーキアが最初に発見された場所は、熱く塩分濃度の濃い水たまりで、ほとんどの生物にとって致死的な環境だった。そして、つわもの揃いのアーキアのなかでも、M. sedulaの生存能力は桁外れだ。この生物が好む環境は、摂氏70度前後の高温と、胃液なみの酸。さらに、高濃度の重金属汚染にも耐えることから、ミロイェヴィッチはこの種を「多重極限環境微生物」、つまりさまざまな面で極端な環境を好む微生物の好例だと考えている。

しかもミロイェヴィッチによれば、M. sedulaはクマムシのように、脱水状態で長期間生存可能だ。隕石の中に埋もれていれば、深宇宙の放射線被曝にも耐えられるかもしれないという。

しかし、M. sedulaが架空の宇宙微生物の代替物とみなせる最大の理由は、その食性にある。地球上の多くの生物は、植物のように太陽光から代謝エネルギーを得たり、深海の熱水噴出孔を熱源として利用する。一方、M. sedulaは、金属から電子を奪って繁栄する。金属を豊富に含む隕石の内部は、この種にとっては食べ放題の宴会場のようなものだ。

ミロイェヴィッチらは、M. sedulaがどんな金属を好み、どう分解するのかを知らなかった。そこで同氏らは、ウィーン自然史博物館から隕石を借り(彼女に言わせれば「丁寧にお願いしただけ」だという)、「微生物用ビュッフェ」を準備した。微生物の一部は、隕石の粉末を混ぜた溶液で培養。一部は、コイン大の隕石の薄片に直接置いて、経過を観察した。

Microbes feast on the rusty goodness of a blended meteorite shake.

微生物の「餌やり」の方法を考えるのは難しくなかった。問題は、食事を終えたそれらを薄切りにして分析する方法であり、その開発には数年を要した。

ほとんどの微生物の体は柔らかいが、M. sedulaの場合、金属を食べれば食べるほど、石のように硬くなっていく。「(硬化した微生物が、)切断に使う器具を壊してしまうんです」と、ミロイェヴィッチは言う。最終的に、微生物の硬い部分とやわらかい部分をできるかぎり分離する方法が見つかった。研究チームは、M. sedulaが3つの方法で生息環境を変化させることを明らかにした。これらはいわば、「生命の指紋」の候補だ。

第一に、この微生物は確かに隕石を食べた。ミロイェヴィッチは冗談めかして、自身の研究目的は「最高の食料環境を用意して微生物を喜ばせる」ことだと話した。地球外から来た石のかけらにはさまざまな種類の金属が含まれていたが、M. sedulaが食べたのは鉄だけだった。これにより、微生物が定着した表面に、2種類の鉄が一定の割合で混ざりあう痕跡が残された。もしも将来の探査ミッションで火星の石が回収され、これと似た鉄の混合物が見つかったら、それはM. sedulaの親戚にあたる地球外生命体が存在する証拠かもしれない。

第二に、鉄をむしゃむしゃ食べたM. sedulaは、副産物として硫酸ニッケルを排出した。この副産物の存在も、微生物の生体活動が起こっている証拠であり、地球外微生物のすみかの発見に役立ちそうだ。火星探査機にこの化合物の検知システムを搭載すれば、火星の生命を探索できる可能性がある。「ニッケルが蓄積している場所は、集中的に探索する価値がありそうです」と、ミロイェヴィッチは言う。

最後に研究チームは、M. sedulaがどんな微小化石を残すかを検討した。通常の化石の場合、骨が石に置換される受動的プロセスには数百万年の時間を要する。一方、金属を食べる微生物は、ほんの数週間で、食べたもの(金属)に姿を変える。M. sedulaは、金属を細胞膜に蓄積させ、死後は、金属とその他の元素で構成された、硬いドーナツ型の殻を残すのだ。

「短い一生のうちに、石を食べて、石になるんです」と、ミロイェヴィッチは言う。この硬い外殻が火星の石や隕石に見つかれば、そこにかつて生命がいたことは、ほぼ確実だ。この構造が時の試練に耐えられるかどうかは別の話だが。

この微生物が地球外物質だけを頼りに生きていけるとわかったいま、ミロイェヴィッチの次なる疑問は、M. sedulaが地球外の環境条件を生き抜けるかどうかだ。例えば、国際宇宙ステーションの外の「宇宙の荒野」にさらしたら、どうなるだろう?

しかしミロイェヴィッチは、本当は、手付かずの火星の石を手にして分析する機会を待っている。「地球外古微生物学」を実践したいと思っているのだ。「必要なことはすべて知っているつもりです」と、彼女は語った。

この記事は、Popular Scienceに掲載されました。

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One organism’s space rock is another organism’s nosh. (NASA/JPL-Caltech/) Microbes feast on the rusty goodness of a blended meteorite shake. ( Courtesy of Milojevic/)

この記事は、Popular ScienceのCharlie Woodが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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