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ロボット工学はどのようにして外科的診療を再形成するのか

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近年、医療におけるロボットの応用が、特に外科手術の分野で発展している。例えば、脳などの生死にかかわる部位において、複雑な手技を行うロボットアシスタントの導入などだ。

ロボット応用の多くはまだ初期段階にあるが、この記事では5つの事例をとりあげて、医療におけるロボット技術の急速な発展を見ていきたい。制御機構の設計の改善や、複雑な曲面への対処といった人体ならではの問題の解決が、進歩の加速につながっている。

デジタル・ジャーナルがお届けする「エッセンシャル・サイエンス」。今回は、ロボットを利用した最先端の医療技術を紹介する。

手術支援ロボットアームの改善

東京工業大学の研究チームは、手術に使用するロボットアームの新型コントローラーを開発した。このデバイスには、2つの異なる形態のグリップが取り入れられている。外科医が必要とする労力を軽減すると同時に、高い精度を実現することが目的だ。

ロボットシステムの最初のテストとして、研究チームはポインティング実験を実施した。これは、15人の外科医がロボットアームを操作して、針の先端をターゲットの穴に入れる実験だ。テストでは所要時間が測定され、また設置された障害物に触れてはいけないというルールで行われた。結果は成功と評価され、さらなる性能試験への道が開かれた。

Smart Tissue Autonomous Robot (STAR) has a 3D camera and the ability to see near-infrared wavelengths.
Children’s National Medical Center in Washington DC

開発されたロボットアームの詳細は、学術誌『The International Journal of Medical Robotics and Computer Assisted Surgery(医療ロボット工学・コンピューター支援手術に関する国際ジャーナル)』に、査読論文として掲載された。論文タイトルは、「Manipulation of a master manipulator with a combined‐grip‐handle of pinch and power grips(ピンチグリップとパワーグリップの組み合わせ式グリップハンドルによるマスタマニピュレータの操作)」だ。

脳動脈瘤の治療

医療技術開発者たちは、脳動脈瘤の治療にロボットが利用可能であると示した。さらに、この技術を導入すると、ステントやコイルなどの医療器具の位置設定の精度が向上することも示された。

臨床試験は、頭蓋内の基底部に、破裂していない動脈瘤をもつ64歳の女性患者1人を対象として行われ、脳神経血管内治療が成功した。

この新しいデバイスは、米国脳卒中学会(ASA)の主催で2020年2月に開催された国際脳卒中学会において発表された。

脳血管を移動する糸状のロボット

磁気で操作され、脳の狭い血管内を、すべるように移動する糸状のロボットも開発されている。マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発したこのロボットの目的は、患者の脳血管内部を医療従事者が遠隔操作ロボットを使って検査し、脳卒中との関連があると見られる閉塞や損傷などの異変を迅速に発見・対処できるようにすることだ。

糸状ロボットは、ハイドロゲルと、3Dプリントされた磁気駆動素材を組み合わせてつくられている。磁気を使って操作可能であり、血栓溶解剤を患部に届けることができる。

The Da Vinci robot Nimur

糸状ロボットの性能試験は今のところ、血栓や動脈瘤といった病変を再現した脳の主要血管の実物大シリコンレプリカを使用した概念実証研究として行われている。このモデルでの成功は、さらなる実験につながるだろう。

この研究は、「Ferromagnetic soft continuum robots(強磁性ソフト連続体ロボット)」というタイトルで、学術誌『Science Robotics』誌に掲載された

腫瘍治療に「マイクロロボットの集団」を利用

カリフォルニア工科大学の研究チームは、ここまで取り上げた事例よりもはるかに小さなロボットを使って、体内に薬を送り届けるロボットプラットフォームのデザインを提案した。体内の特定部位に薬を届ける際に、マイクロロボットの集団を利用するものだ。ロボットの制御と監視は、体外で医療従事者が行う。

彼らが考案したマイクロロボットは、マグネシウム金属でできた微小な球体だ。本体は、金とパリレン(難消化性プラスチック素材の一種)の薄膜で覆われている。ただし一部だけ、膜に覆われていない円形の部分があり、ここでマグネシウムが消化液と反応して気泡が生じる。気泡の流れができると、それがジェットの役割を果たし、球体の推進装置となる。ロボットはやがて組織に到達し、そこで薬を放出する。

以下の動画は、マイクロロボットの作用機序を解説したものだ。 
Play Video

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光音響コンピューター断層撮影と呼ばれる技術により、体内の適切な部位を特定して、マイクロロボットを注入する。マイクロロボットの制御は、高出力連続波近赤外レーザービームを用いて行われる。

このマイクロロボットのしくみは、学術誌『Science Robotics』に掲載された論文「A microrobotic system guided by photoacoustic computed tomography for targeted navigation in intestines in vivo(光音響コンピューター断層撮影を介し、生体の消化管内の標的箇所に到達するマイクロロボットシステム)」で解説されている。

超小型ロボットが大腸疾患の初期兆候をチェック

ロボットを利用した医療技術として紹介するこの最後の例でも、マイクロサイズのロボットが使われている。英国リーズ大学の研究者たちは、小さなロボットカプセルを大腸内で自在に移動させることが技術的に可能だと示した。この技術によりいずれ、ロボットを使ってマイクロ超音波画像を撮影できるようになるだろう。

File: Scientists have claimed that advanced tissue engineering techniques, such as freeze-drying heart valves after cellular materials have been removed and storing the biological scaffolds for later transplanting, could revolutionize the field of reconstructive heart surgery.Andy G/file (CC BY-SA 2.0)

リーズ大学の研究チームが開発したソノピル(Sonopill)は、画像撮影技術を搭載した超小型ロボットだ。従来の内視鏡検査はほとんどの患者にとって不快感と痛みをともなう侵襲的手技だが、将来的には、このようなタイプのロボットを使った方法が内視鏡検査に取ってかわると期待されている。

このシステムでは、磁石が取り付けられたロボットアームを体外で動かすことで、腸内の超小型カプセルを操作する。カプセルにも磁石が内蔵されており、アーム側の2つの磁石によって、手技をコントロールする。アームの操作は医師が直接行うのではなく、人工知能による制御が取り入れられている。

エッセンシャル・サイエンスについて

本記事は、デジタル・ジャーナルの定期コラム「エッセンシャル・サイエンス」の抜粋です。このコラムでは毎週、ティム・サンドル(Tim Sandle)記者が重要な科学のトピックを取り上げています。

A doctor checks the body temperature of a man returning from Iran at a quarantine zone to test for the COVID-19 coronavirus in the Pakistan-Iran border town of Taftan on February 25, 2020Banaras KHAN, AFP

2月最終週には、新型コロナウイルスをテーマに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のヒトからヒトへの感染拡大の規模は、公衆衛生当局による従来の推定よりも大きいとする研究を紹介しました。この結果は、より厳格な予防措置の必要性を裏付けるものです。

また、2月第3週には、スマートフォンを持ち運びできるラボに変え、基礎的な診断検査の実施を可能にするデジタル技術の発展を取り上げました。こうした技術は、遠隔地における医療サービスのニーズを満たすのに役立つでしょう。

この記事は、Digital Journalが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。