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透明な太陽電池が窓を再発明する
Ann Arbor MI (SPX) Aug 18, 2020
電源としても機能する超高層ビルの実現が一歩近づいた。ミシガン大学の研究者が率いるチームが、無彩色で透明な太陽電池の効率性で新記録を打ち立てたのだ。
このチームは、8.1%の効率性と43.3%の透明度を達成した。使用したのは従来のシリコンではなく、有機(炭素系)素材だ。色は少し緑がかっているが、サングラスや自動車の窓ガラスのグレーに非常に近い。
この研究を率いたスティーヴン・フォレスト(Stephen Forrest)は、「窓はどのビルでも正面にあり、そこは有機太陽電池にとって最適な設置場所です。というのもこの電池は、シリコンにはない、非常に高い効率性と透明度を兼ね備えているからです」と述べる。同氏は、工学分野で「ピーター・A・フランケン(Peter A. Franken)冠特別教授」と「ポール・G・ゲーブル(Paul G. Goebel)冠教授」の称号を有している。
ガラスのファサードをもつビルでは通常、ガラスにコーティングを施すことで、太陽光の一部(スペクトルの可視部分と赤外線部分の両方)を反射・吸収して、建物内の明るさと熱を抑制している。
今回の透明な太陽電池は、このエネルギーを捨てるのではなく使用することで、建物の電力需要を減らすことができる。フォレストのグループが『米国科学アカデミー紀要』に発表した太陽電池の透明度は、既存の一部の窓とほぼ同じだ。
電気工学とコンピューター・サイエンスを専門とするアシスタント科学研究員であるヨングシー・リー(Yongxi Li)は、以下のように述べる。「われわれは新材料を開発し、その構造を作り上げましたが、そのプロセスのなかでは、太陽光の吸収率の高さ、電圧と電流の高さ、抵抗の低さ、無彩色な透明度のすべてを同時に実現するために、いくつかの点を調整する必要がありました」
新材料は、見た目が透明になるように設計された有機分子と、近赤外線を吸収する有機分子が組み合わされている。近赤外線は、太陽光スペクトルのうち不可視の部分で、太陽光エネルギーのうち多くを占めている。
研究チームはさらに、赤外線から得られる電力と、可視範囲の透明度の両方を増大させられる光学コーティングを開発した。このふたつの性能は通常、両立しない。
無彩色の新材料は、酸化インジウムスズ電極で作られている。銀電極では効率性は10.8%に改善し、透明度は45.8%になった。だが、このバージョンは少し緑がかっていて、窓には使用できない場合もある。
透明な太陽電池の性能は、その光利用効率で表される。光利用効率とは、窓に当たる光のエネルギーのうち、電気、または内側の透過光のいずれかとして使用できる量の割合を示すものだ。
これまでの透明な太陽電池の光利用効率は約2~3%だが、酸化インジウムスズ電池では3.5%、銀電極を使用したバージョンでは5%だ。
どちらのバージョンも、他の透明な太陽電池よりも毒性の低い材料を使用して、大量生産することが可能だ。透明な有機太陽電池は、現地の緯度に合わせてカスタマイズすることもできる。太陽光線が直角に当たるときが最も効率的であるという事実を利用するためだ。太陽電池は、窓の二重ガラスの間に配置できる。
フォレストと研究チームは現在、この技術の改善に取り組んでいる。次の目標は、光利用効率を7%にすることと、電池の寿命を約10年に延ばすことだ。また、透明な太陽電池窓を、新しい建物や既存の建物に設置する際の経済的側面についても研究している。
研究レポート: “Color-Neutral, Semitransparent Organic Photovoltaics”
この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。