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細菌とナノ粒子の「バイオ・ハイブリッド」で、光から水素をつくる
炭素に依存した経済を脱し、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を実現することは、21世紀における最も切迫した世界的課題のひとつだ。このプロセスにおいて水素は、クライメート・ニュートラルな(気候変動に寄与しない)エネルギー源として有望視されており、重要な役割を果たすことが期待されている。だが、いわゆるグリーン水素経済では、水素の生産に関しても、再生可能エネルギーだけを利用して行うことが求められる。
さらに理想を言えば、生産過程でレアメタル触媒を使用しないことが望ましい。この触媒は環境に深刻な影響を与え、かつ高価なものだからだ。この課題を解決するため、ポルトガルのアントニオ・ザビエル化学生物学技術研究所(ITQB NOVA)の研究者イネス・カルドソ・ペレイラ(Ines Cardoso Pereira)とモニカ・マルティンズ(Monica Martins)は、光合成を行わない微生物を利用し、光を使って水素を生産する革新的技術の開発に取り組んでいる。
水素はエネルギー源として輝かしい新たな可能性を秘めているが、現在の水素生産はまだその大部分が化石燃料ベースでおこなわれている。一方、太陽エネルギーはさまざまな再生可能エネルギー源のなかで最も豊富であり、究極的には理想の資源だ。したがって、太陽エネルギーを水素のような貴重な燃料に直接変換する持続可能な技術が、いますぐにでも必要だ。
今回ドイツの学術誌『Angewandte Chemie International Edition』に掲載された論文は、バイオ・ハイブリッド・システムを用いた新たな水素生産アプローチを説明するものだ。バイオ・ハイブリッド・システムとは、多量の水素を生産する非光合成細菌と、その細菌が生成し、光を非常に効率よく取り込む硫化カドミウム(CdS)半導体ナノ粒子を組み合わせたものだ。
細菌エネルギー代謝研究室を率いるイネス・カルドソ・ペレイラは、「バイオ・ハイブリッドの開発は、とてもエキサイティングな新興研究分野です。生物学的システムが持つ高い触媒効率と特異性を、太陽エネルギーや電気エネルギーを非常に効率よく取り込む性質をもつ合成素材と組み合わせることができます」と語る。「この分野は急速に成長しています。最も期待できるアプローチは、手を加えないそのままの姿の微生物と、その表面に生成されるナノ粒子を組み合わせるものです。これにより、両者のあいだで直接のエネルギー移動が起こるのです」と話す。
研究チームは、数種の細菌を利用したバイオ・ハイブリッド・システムによる光駆動水素生産の可能性を調査した。すべてのバイオ・ハイブリッドが光からの水素(H2)生成に成功したが、なかでも、土壌細菌の1種であるDesulfovibrio desulfuricansを利用したシステムは突出した活性を示した。この細菌は、水素生成に必要な酵素であるヒドロゲナーゼを多く含み、また細胞外に硫化物ナノ粒子を効率的につくりだす。
こうして細菌自身が生成したナノ粒子が光を捕捉し、その光を利用して細菌が水素を生成する。その結果、D. desulfricansと硫化カドミウムのハイブリッドシステムは、高価で毒性を持つ触媒がなくても、高い水素生成活性と高い安定性を示し、きわめて効率的に太陽エネルギーを直接利用した。
微生物とそれがつくる光捕集機能体を利用するのは、低コストで持続可能な燃料生産のアプローチだ。「この新しいバイオ・ハイブリッド・システムは、環境に配慮した水素生産をおこなうバイオリアクターを開発するうえで、プロトタイプとして非常に有望です」と、モニカ・マルティンズは述べた。
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