CLOSE

About Elements

美しい未来のために、
社会を支えるテクノロジーを

TANAKAは、「社会価値」を生む「ものづくり」を世界へと届ける「貴⾦属」のスペシャリスト。
そして、「Elements」は、わたしたちのビジネスや価値観に沿った「テクノロジー」や「サステナビリティ」といった
情報を中⼼に提供しているWEBメディアです。
急速にパラダイムシフトが起きる現代において、よりよい「社会」そして豊かな「地球」の未来へと繋がるヒントを発信していきます。

Elements

美しい未来のために、
社会を支える技術情報発信メディア

検索ボタン 検索ボタン

世界初の常温動作ダイヤモンド量子アクセラレーターを豪スタートアップが開発

この記事をシェアする

オーストラリア国立大学(ANU)から生まれた量子コンピューティングのスタートアップ、クアンタム・ブリリアンス(Quantum Brilliance)は、ベンチャーキャピタルの支援を受けて、世界初のダイヤモンド量子アクセラレーターを同国内のポージー・スーパーコンピューティング・センター(PSC:Pawsey Supercomputing Centre)に導入する予定だ。

クアンタム・ブリリアンスが人工ダイヤモンドを利用して構築している量子アクセラレーターは、絶対零度近くの超低温や複雑なレーザーシステムを必要とせずに、大型量子コンピューターと同様に動作する。同社は、市場に即応した量子コンピューティングシステムを、自社内で運用する顧客向けに供給できる、世界で数少ない企業のひとつだ。

今回の導入によりPSCは、施設内で汎用量子コンピューターを提供する、世界でも最初期のスーパーコンピューティングセンターのひとつとなる。PSCとクアンタム・ブリリアンスは、PSCの「量子パイオニア計画(Quantum Pioneer Program)」の一環として、オーストラリア国内の他の業界リーダーや研究者と協力体制を築き、機械学習、物流管理、防衛、航空宇宙、量子ファイナンス、量子研究などの分野における最先端の量子アプリケーションを開発する。

PSCのエグゼクティブディレクター、マーク・スティッケルズ(Mark Stickells)は、「業界や研究者による量子コンピューティングへの積極的な取り組みを目の当たりにしてうれしく思っています」と話す。「私たちは、この技術の可能性が探究されることを楽しみにしています。スーパーコンピューティングの国立研究施設における高度なインフラ内で、オーストラリアの研究者たちが量子コンピューティングの潜在能力を活用することで、科学研究がさらに加速することを期待しています」

PSCで利用される、世界初となる常温動作ダイヤモンド量子アクセラレーターは、首都キャンベラにあるオーストラリア国立大学(ANU)で設計された。今回の進展は、オーストラリア国立大学と、政府による商業化促進助成金(Accelerating Commercialisation grant)という両方の支援によって実現可能となった。これらの助成金は、量子コンピューティング分野における同国独自の先進的製造能力の成長を支援するものだ。

オーストラリア国立大学の副学長を務めるブライアン・シュミット(Brian Schmidt)教授は、クアンタム・ブリリアンスは量子コンピューティングの未来を指し示す存在だと指摘する。

「オーストラリア国立大学は、国立の大学として、将来の技術と産業の創造に尽力しています。こうした取り組みは、わが国と世界の将来的発展を確かなものにするために不可欠です」と、シュミット教授は話す。「クアンタム・ブリリアンスはその好例です。同社は、量子コンピューターが日常生活の一部となるよう、手頃な価格で常温動作するランチボックス・サイズの量子コンピューター開発に取り組んでいるのです」

「オーストラリア国立大学が掲げる、今後5年以内に年商10億ドル規模の会社をつくるという目標は、クアンタム・ブリリアンスのようなスピンアウト企業に対する研究商業化の支援を行うことで達成されるでしょう」と、シュミット教授は言う。「クアンタム・ブリリアンスは、まだ創業間もない企業ですが、初期段階の企業をいま支援することは、私たち全員にとって大きな見返りにつながる可能性があります」

グーグルやIBMなどのテック系最大手企業が開発を進める量子コンピューターとは対照的に、クアンタム・ブリリアンスは、量子コンピューティングをデータセンターや病院、鉱業、宇宙などの分野に大規模に導入し、ノートパソコンにまで搭載できるようにすることで、日常的な技術に発展させるという展望を抱いている。

コロナ禍による景気後退にもかかわらず、クアンタム・ブリリアンスは急速に成長している。現在は20人以上のスタッフを抱え、北米や欧州、アジア太平洋地域に国際的な提携企業を持つ。

クアンタム・ブリリアンスの最高経営責任者(CEO)を務めるアンドルー・ホースリー(Andrew Horsley)博士は、「PSCの素晴らしいチームとともにこの目標に向けて邁進できることは名誉なことです。量子アクセラレーターがどれくらい産業を変容させることができるかについては、オーストラリア国内と世界各地で、ようやく見え始めたところです」と話す。

「当社は、他に類のないダイヤモンドベースの技術を持っており、顧客は量子コンピューターを自社で運用できるとともに、量子技術がどれほど新たな機能を創出する助けになり得るかを調査するためのツール一式を当社から提供されます。量子コンピューティングのハードウェアを顧客に直接提供する能力を持つ企業はごく一握りですが、当社はそうした企業のひとつです」と、ホースリー博士は語る。

クアンタム・ブリリアンスとPSCの技術者らは、量子アクセラレーターの設定の最終調整を進めており、PSCへの設置は6月に実施される予定になっている。

オーストラリアでは、量子コンピューティング分野が多様化・成長しており、国立量子コンピューティング施設(National Quantum Computing Facility)の新設に向けて一歩前進している。この施設は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が発表した「量子技術ロードマップ」2020年版に挙げられている提言のひとつだ。

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。