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地球の超深部のメッセージを伝える「スーパーディープ・ダイヤモンド」発見される
アフリカ・ボツワナにある敷地面積で世界最大級のダイヤモンド鉱山、オラパ(Orapa)鉱山で1980年代に鉱山労働者らが見つけたダイヤモンドは、彼らにとってはがっかりなものだった。緑がかった八面体形状のダイヤモンドは、複数の小さな黒い斑点が内包されていることで台無しになっていたからだ。
しかしこの黒い斑点は、それから数十年後の地質学者にとって、ダイヤモンド自体より希少価値の高い宝物となった。地質学者と物理学者のチームが、X線回折法と質量分析法を用いて、この宝石の不純物が地球の下部マントルに由来する鉱物の小片であることを確認したのだ。こうした物質が天然の試料で確認されたのは今回が初めてだ。この鉱物は通常、超高温高圧下にしか存在しないため、この試料は地下410~560マイル(約660~900km)で形成された「超深部ダイヤモンド(Super-deep diamond)」と呼ばれるものと見られる。このダイヤモンドは十分な強度があったため、黒い斑点を内包したまま完全に無傷な状態で地表まで到達することができた。今回の研究結果をまとめた論文は、科学誌『サイエンス』に2021年11月11日付で掲載された。
筆頭執筆者である、ネバダ大学ラスベガス校の地球化学者オリバー・チャウナー(Oliver Tschauner)は、声明でこう述べている。「宝石商やバイヤーにとってはダイヤモンドのサイズ・色・透明度のすべてが重要であり、黒い斑点のような内包物はの悩みの種ですが、我々研究者にとっては贈り物のようなものです」
このダイヤモンドは、地球マントルから地表まで、希少な鉱物を運んできた
Image Credit: アーロン・セレスティアン(Aaron Celestian) / ロサンゼルス自然史博物館
ダイヤモンドに内包されていた鉱物「ケイ酸カルシウム(CaSiO3)ペロブスカイト(calcium silicate perovskite)」は、過去研究において実験室内で合成されたものと一致する。だが、その生成には20ギガパスカル(大気圧の約20万倍)という超高圧が必要だ。人工的な高圧環境から取り出されるとすぐに変質するため、科学者らは長年、この鉱物の試料を自然界で発見するのは不可能だろうと考えていた。
チャウナーは『サイエンティフィック・アメリカン』誌に対して、「発見の確率は非常に低いと考えられていたので、本格的かつ積極的に探索されたことはありませんでした」と説明している。そのため、「下部マントルに由来する本物の鉱物を、地上でも存在している状態で手に入れることは、この種の研究にとってかなり新しい方向性」だという。
この鉱物は、ダイヤモンドという「覆い」の強固な構造の中で密閉されていたため、鉱物の自然な形態を維持するのに十分な圧力が保たれていた。だが、「ダイヤモンドを壊して開けると、鉱物はそのままの状態を1秒間ほど保った後、膨張して膨れ上がり、基本的にガラス化するのを顕微鏡下で確認しました」と、チャウナーは『ニュー・サイエンティスト』誌に語っている。密閉状態が破られたことで、鉱物は一つにまとまっていることができなくなったのだ。
新種鉱物を初めて正式に発見したことを届け出たチャウナーは、鉱物の命名権を与えられ、「デイブマオアイト(davemaoite)」と名付けた。これは台湾の地質学者、毛河光(Ho-Kwang “Dave” Mao)にちなんだ名称だ。毛は、1980年代にカーネギー研究所で研究を行っていたとき、地球表面でマントルと同程度の圧力の発生を可能にする実験の一部を開発した人物だ。
デイブマオアイトは、地球の下部マントルに含まれる3種類の主要鉱物の一つであり、マントル物質のおよそ5~7%を構成する、とチャウナーは『ネイチャー』誌に語っている。デイブマオアイトは、地球構造の重要な一部を担っている。ウランやトリウムなどの元素を含有する可能性があり、そうした元素の放射性崩壊に伴って発熱すると見られているからだ。
この種の鉱物を研究すると多くの知識が得られる可能性があるものの、問題は希少な自然試料を見つけられるかどうかだ。超深部ダイヤモンドの探索は非常に困難なプロセスであり、地球化学者によれば、こうしたダイヤモンドを発見できる可能性がある場所について、簡単に知る方法は存在しないという。
この記事は、Popular ScienceのHannah Seoが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。