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核融合を実現に近づけたAI
核融合によるグリーンエネルギー革命の実現が一歩近づいた。最先端の人工知能(AI)システムを利用して、超高温水素プラズマを核融合炉の内部で形成する(位置と形状を制御する)ことに初めて成功したのだ。
この実験の成功は、長年にわたる核融合発電技術の探究にAIがブレイクスルーをもたらす可能性を示唆する。化石燃料や核分裂に代わる方法として、核融合を現代の電力グリッドに導入するという目標に、大きく近づくかもしれない。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の物理学者で、本研究のプロジェクトリーダーのひとりであるフェデリコ・フェリーチ(Federico Felici)はLive Scienceに、「AIは、未来のトカマク型装置(超高温プラズマを閉じこめる磁気閉じ込め方式の一つ)の制御や、核融合科学全体に大きな役割を果たすと考えています」と語った。「AIの途方もない可能性が解き放たれれば、こうした装置をよりうまく制御し、より効率的に操作する方法が見つかるでしょう」
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フェリーチは、学術誌『ネイチャー』に2022年2月16日付けで掲載された、このプロジェクトの概要を解説する論文の筆頭著者だ。ローザンヌにある可変構成トカマク(TCV)を利用した今後の実験では、AIを核融合炉の制御に統合する方法をさらに研究する計画だと同氏は述べる。「我々が実現したのは、いわば原理証明です。この最初のステップに、とても満足しています」
フェリーチとEPFLスイスプラズマセンター(SPC)の共同研究者たちは、英国企業ディープマインド(DeepMind:グーグルの親会社であるアルファベット[Alphabet]の子会社)の研究者やエンジニアとともに、AIシステムによるTCV制御の実験を行った。
TCVは、核融合の制御に最も有望とされる、ドーナツ型をした核融合炉だ。フランスで建設中の巨大な国際プロジェクト「ITER(ラテン語で「道」を意味する)」でも、トカマクのデザインが採用されている。支持者のなかには、早ければ2030年にもトカマクの商用運転が開始されると考える人もいる。
人工知能(AI)
トカマクは、主に19の電磁コイルによって制御されており、これらが核融合炉内部に電流を通し、水素プラズマの形や位置を操作すると、フェリーチは說明する。
これらのコイルは通常、それぞれが独立したコンピューター制御装置(実験で機能するプラズマの各側面に一つずつ)によって制御されている。それぞれが複雑な制御工学的計算に基づいてプログラムされており、その詳細は実験条件によって異なる。一方、今回のAIシステムは、一つの制御装置でプラズマ全体を操作できると同氏は言う。
ディープマインドが開発した「深層強化学習(RL)」システムを搭載したAIは、まずはトカマクのシミュレーター上でトレーニングを積んだ。実物を使うより、ずっと安価で安全だからだ。
しかし、コンピューターシミュレーションは時間がかかる。トカマクのリアルタイム運転状況を、たった数秒分シミュレーションするだけで数時間を要する。そのうえ、TCVの実験条件は毎日変化するため、AI開発者はこうした条件の変化をシミュレーションに組み込まなくてはならなかった。
シミュレーションでのトレーニングが完了したあと、AIを実物のトカマクと連動させた。
TCVは通常、華氏2億1600万度(摂氏1億2000万度)以上の超高温水素プラズマを、最大3秒間維持できる。その後は15分間の冷却とリセットの時間が必要で、フェリーチによればこの「ショット」を普通1日に30~35回ほど実行する。
実験では、数日間にわたって約100回のショットをAI制御下のTCVで実行した。「プラズマの形状にいくらかの多様性を持たせたかったのと、さまざまな条件下で実験をしたかったためです」と、フェリーチは言う。
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TCVは、高レベルの核融合が可能な中性子を持つ重水素プラズマを利用していないが、今回のAI実験によって、トカマク内部でプラズマを形成する新たな方法が編み出されたことで、核融合プロセス全体をより高度に制御できるようになるだろうとフェリーチは述べた。
プラズマの形成
AIは、トカマク核融合炉の内部で、一般的な配置(核融合効率が最も高いとされるスノーフレーク型など)のプラズマを形成するうえで有用であることがわかったと、フェリーチは言う。
加えて、AIを使って「水滴型」のプラズマを形成することもできた。これは、融合炉の内部で上下に分かれた2つのリング状にプラズマをつくるもので、通常の制御工学技術でも可能ではあるが、これまでに試みられたことはなかったという。
水滴型プラズマの形成は、「機械学習を使えばきわめて容易」だとフェリーチは言う。「制御装置に対して、このようなプラズマを形成するよう指示を与えるだけでよく、方法はAIが見つけ出してくれます」。
研究チームはまた、AIが電磁コイルを利用して、炉内プラズマを、通常の制御装置による方法とは異なるやり方で制御するところも観察した。
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「今後は同じコンセプトを、より複雑な問題に応用することができるでしょう」と、フェリーチは言う。「トカマクの挙動モデルが大きく改善されたことで、こうしたツールをより高度な問題に応用できるようになったのです」。
TCVを使ったプラズマ形成実験は、2035年頃に最大出力での核融合を開始する予定の巨大トカマクである、ITERプロジェクトを後押しするだろう。ITERの推進者たちはこのプロジェクトが、炭素を排出せず放射能も低レベルに抑えることのできる核融合発電という新たな方法のパイオニアになることを期待している。
TCV実験はまた、ITERの後継機と目されるDEMO核融合反応炉のデザインにも、有益な情報をもたらすだろう。DEMOはITERと異なり、電力グリッドに電気を供給する設計となっている。DEMO反応炉の設計には複数の国々が参加しており、開発が最も進んでいるヨーロッパのEUROfusion反応炉は、2051年の操業開始を予定している。
この記事は、最初にLive Scienceに掲載されました。
この記事は、SpaceのTom Metcalfeが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。