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宇宙採掘を目指すスタートアップのリアル

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米コロラド州ゴールデン──小惑星採掘は、いまだに実現はしていないものの、「天から降ってくるキャッシュフロー」を生み出せると期待されている。深宇宙には何十億ドル、何兆ドル、何千兆ドルもの価値が存在し、それを手に入れる機が熟していると主張されるなかで、すでに「権利の争奪戦」が始まっている。

これまで、小惑星の採掘に意欲的な宇宙採掘グループが、いくつも現れては消えてきた。そのあとには、困難にさらされ破り捨てられた事業計画書の山が残された。

しかし、過去は序章にすぎない。現在は、段階的な戦略で進められており、地球外の採掘で大金を手に入れるという期待は、全体的に控えめなものになっている。

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資源が、宇宙探査を可能にする

コロラド鉱山大学宇宙資源センターを率いるエンジェル・アブード=マドリード(Angel Abbud-Madrid)氏は、「10年前、人々は興奮し、宇宙で最初の1兆ドル長者が誕生すると宣言する人もいました」と振り返る。

アブード=マドリード氏はSpace.comの取材に対し、「彼らは成功しませんでした。彼らの計画はとても野心的であまりに現実離れしており、実現することがなかったのです」と説明する。また、多くの国が宇宙採掘を盛んに宣伝していたが、それらすべてが、ある重要な事実に目を向けさせたという。宇宙で採掘される資源は、さらなる宇宙探査を可能にするという事実だ。

その点において、目指す場所がどこであれ水は今や主要な目標になっている、とアブード=マドリード氏は補足する。

アブード=マドリード氏によれば、現在の宇宙採掘は成熟しており、数十社のスタートアップや大企業が、いわゆる「宇宙資源バリューチェーン」に取り組むまでになっているという。

しかし、「誰が」という問題がいくつも浮上している。宇宙で貴重な資源を見つけるために必要なデータは誰が取得するのか?利用可能な物質の濃度を誰が特定し、掘削、採取、精製するのか?輸送、電力、通信を誰が供給するのか?ただ採掘するだけでなく、宇宙探査用の構造物をつくるために資源を利用するのは誰か?

Experts gather at the Colorado School of Mines to attend a space resources roundtable, drawing together scientists, engineers, entrepreneurs, mining and minerals industry specialists, legal experts, and policy makers.

経済的な損失

当面、経済的な意味での損失は避けられない、とアブード=マドリード氏は断言する。「だからこそ小惑星は見捨てられたのですが(中略)いまは復活を遂げつつあります」。それでも、慎重にならざるを得ないという。「いくつかの企業は失敗するだろうし、契約締結に至らないビジネスケースもあるでしょう。そうしたプロセスの結果として、より合理的なレベルに落ち着くようになります。いずれにしろ、関心は確かに存在しています」

まずは、利用可能な資源を特定する必要がある。次の問題は、顧客が誰かだ。「卵が先か、鶏が先かの問題で、堂々巡りになります」とアブード=マドリード氏は話す。

近い将来、宇宙資源のバリューチェーンが月とつながることは明らかだ。「全体が動き出し、月にすべての視線が注がれるでしょう」。月が、可能性に満ちた楽園だと証明されれば、「次は小惑星かもしれませんが、それはもっと長期的な話になる可能性があります」

長期的な話の中には、所有権や資格の問題など、小惑星の資源を採取する際の法的な視点も含まれる。

「国際連合の宇宙条約は必ずしも、資源採取の妨げになるわけではない、というコンセンサスは得られています。惑星の所有が禁止されているだけです。しかし、組織的、効率的、持続的、そして責任ある方法で採掘を行うには、法的にどうすればよいのでしょうか? それには外交が必要です」とアブード=マドリード氏は述べている。

小惑星を知る

ここ数年、小惑星探査が身近なものになり、その勢いが増している。

例えば2001年には、NASAの先駆的な試みである地球近傍小惑星接近計画(NEAR)が、小惑星エロスへの軟着陸に成功した。日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星イトカワの岩石を採取し、2010年に地球に持ち帰るという快挙を成し遂げた。NASAの探査機オサイリス・レックスは、小惑星ベンヌでサンプルを採取し、現在地球に帰還中だ(2023年にサンプルを地球へ投下する予定)。一方、NASAの探査機ルーシーは、トロヤ群小惑星を探査するため、木星軌道に向かっている。NASAの探査機サイキも、金属を主成分とするユニークな小惑星を目指すことになっている。

そして、NASAの二重小惑星進路変更実験(DART)ミッションの探査機「DART」は2022年9月、世界初の宇宙防衛技術の実験として、二重小惑星の衛星ディモルフォスに衝突し、その進路を変えるデモンストレーションを行った。

こうしたミッションは間違いなく、小惑星に関する知識の収集に役立つ、とアブード=マドリード氏は述べる。「あとは、物質をどのように採取するかです。それが次の課題になるでしょう。重要なのは、小惑星を理解することです。今は、小惑星を知る段階にあります」

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空をスキャンするシステム

カリフォルニア州に本社を置くトランスアストラ(TransAstra)の使命は、や小惑星から資源を持続的に採取し、歴史の流れを変えることだ。同社の創業者兼CEOであるジョエル・サーセル(Joel Sercel)氏はSpace.comの取材に対し、「小惑星採掘を実現するには、いくつかの技術的進歩が必要です。私たちはそれらすべてを準備したと思っています」と語った。トランスアストラは、「小惑星を、有意義な方法で処理する」ため、輸送手段や装置についての青写真を描いている、とサーセル氏は説明する。

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サーセル氏によれば、計画の一環として、小さな宇宙望遠鏡を複数打ち上げるプロジェクト「サッター・サーベイ(Sutter Survey)」を構想しているという。この名前は、カリフォルニア州のサッターズミル(Sutter’s Mill)からとられている。1848年にここで金が発見されたことが、ゴールドラッシュが起きたきっかけとなった。「これは、小惑星の調査方法についての全く新しい発想です。私たちは、『発見当たりのコスト』を数分の一まで下げることができるでしょう」

アリゾナ州とカリフォルニア州にある低コストの商用望遠鏡を使うトランスアストラのスカイスキャニングシステムは、高性能なソフトウェアを利用している。このシステムはすでに忙しく働いており、絶えず微調整が行われている、とサーセル氏は説明する。目下の課題は、直径が15~50フィート(約4.5~約15メートル)程度の、アクセスしやすい小惑星を特定することだ。

「従来の小惑星調査と比べて、発見できる小惑星の数が何百倍も多くなるミッションのロードマップを用意しています」とサーセル氏は話す。

サーセル氏によれば、この分野におけるトランスアストラの取り組みは、NASA革新的先進概念(NIAC)プログラムの支援を受けているという。

産業規模

「ハチの巣」のような活動とでも言うべきだろうか。

サーセル氏が率いるトランスアストラのチームは、産業規模の小惑星採掘システムを推し進めているが、システムを構成するそれぞれのプロジェクトの名前は、ハチの巣を連想させるものだ。具体的には、飛行システムアーキテクチャーであるアピス(ミツバチ属の意)、太陽熱ロケットのオムニヴォー(雑食動物の意)。デモンストレーション・コンセプトのミニビー(Mini-Bee:小さなハチの意)、スペースタグ(曳航機)のワーカー・ビー(働きバチの意)などがある。同社はまた、「オプティカル・マイニング」という商標登録技術のテストも行っている。これは、集約した太陽光を利用して、揮発性物質が豊富な小惑星や衛星、惑星の表面から採掘・採取する技術だ。

サーセル氏はオプティカル・マイニングについて、宇宙で水をはじめとするロケット推進用の資源を何千トンも調達するというトランスアストラのビジョンを実現するものだと考えている。それが実現すれば、深宇宙の有人探査や、宇宙の産業化に大きく近づく。ひいては、地球の生物圏を、資源開発による破壊から解放できるようになるだろう。

「私たちが宇宙に行くのは、地球上の問題を解決するためです」とサーセル氏は主張する。「人類が繁栄しない未来など、誰も考えたくないはずです。だからこそ、私たちは今、宇宙に行くべきなのです」

この記事は、SpaceのLeonard Davidが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。