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“実写版”ターミネーターさながらの「溶けるロボット」が現実に?

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審判の日(Judgement Day)

The robot is made of a new material called

見間違いではない。研究チームは本当に、変幻自在な(専門用語で言えば「シェイプモーフィングな」)人型ロボットを開発した。このロボットは自身を「液体化」して、また元に戻ることができる。言い換えるならば、1991年の映画『ターミネーター2(原題:Terminator 2: Judgment Day)』に登場するアンドロイド「T-1000」のプロトタイプにそっくりだ。ジェームズ・キャメロン監督の先見性を疑ってはならないことが、またしても証明された。

学術誌『Cell』に2023年1月25日付で掲載された新たな研究で研究者たちが目指したのは、従来の硬い体のロボットと「柔らかい(soft)」ロボットとの隔たりを埋めることだった。現在の柔らかいロボットは通常、可変性は高いもののその結果として強度は低い材料で作られている。そこで研究チームは、体がグニャグニャしているナマコからヒントを得て、最善の道は「相を変える」ことだという考えに行き着いたのだ。

このアイデアは明らかに成功している。レゴのミニフィギュアのような形をしたロボットが、液体になって小さな刑務所の鉄格子をすり抜けている。キャメロン監督のアクション大作で、ロバート・パトリックが演じた最も象徴的なシーンへのオマージュであることは明らかだ。以下のリンクから、ぜひデモを見てみてほしい。

材料反応の仕組み

これを達成するために、研究チームは「磁気活性固相・液相転移物質(magnetoactive solid-liquid phase transitional matter:MPTM)」と呼ばれる、ガリウムベースの相転移材料の新形態を開発した。

他の相転移材料は、ヒートガンや電流などの外部熱源を必要とするが、MPTMはガリウムに磁性粒子を埋め込んでいるため、加熱する前に磁場で誘起するだけでいい。

ガリウムの融点は華氏86度(摂氏30度)をわずかに下回るという低さのため、MPTMで作られたロボットは、比較的短時間で簡単に液体化する。

カーネギー・メロン大学のエンジニアである論文主執筆者のカーメル・マジディ(Carmel Majidi)は、プレスリリースで次のように説明している。「磁性粒子にはふたつの役割があります。ひとつは、材料が交番磁界(alternating magnetic field:時間と共に大きさと方向が変化を繰り返す磁界)に反応できるようにすることで、誘起を通して材料を加熱し、相変化を起こすことができます。一方で磁性粒子には、ロボットに可動性を与える役割もあります。ロボットは、磁場に反応して動くことができます」

医療分野での異物除去にも期待

MPTMは、(非常に限られたタイプの課題ではあるが)エンジニアリングや医療の課題に役立つと研究チームは考えている。

研究チームは、『ターミネーター2』のデモに加えて、ボット(今回は薄いブロックという、より実用的な形状)を使用して、人間の胃の模型から異物を取り出す様子を実演した。このボットは胃の中で液化した後、異物を取り込んで這い出して来た。

「今後の研究では、このロボットが生物医学的文脈でどのように使用できるかをさらに検討していく必要があります。今回ご覧いただいたのは一回きりのデモであり、概念実証に過ぎません。これが実際に薬物送達や異物の除去にどのように使えるかは、さらに研究を重ねて深く掘り下げていく必要があります」とマジディは述べている。

この素晴らしい技術については、そうした方向で利用されるよう期待したい──映画で、人類側の主人公ジョン・コナーズを追い詰めるために使用された方向性ではなく。

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この記事は、FuturismのFrank Landymoreが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。