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ウェアラブルのネックレスで実現する「禁煙デバイス」
- 米疾病予防管理センター(CDC)は、米国における予防可能な死因の第1位として喫煙を挙げている。
- 「スモーク・モン(SmokeMon)」と呼ばれるネックレス型の新しいウェアラブルデバイスは、禁煙を目指す人を支援するために喫煙習慣に関するデータを収集する。
- スモーク・モンは、プライバシーの懸念に対処するためカメラを搭載せず、データ収集に熱センサーを使用している。
熱を記録できる新しいウェアラブルデバイスが、禁煙を目指す人や喫煙の再発防止を支援する効果的なツールになるかもしれない。
ノースウェスタン大学の研究チームが開発した「スモーク・モン」は、ペンダントのように首に掛けるスマートネックレスで、火を点けたタバコから出る熱を感知し、記録する。
これはまだ試作品で、市販されてはいない。だが、ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の予防医学准教授で、この研究を率いたナビル・アルシュラファ(Nabil Alshurafa)博士は、スモーク・モンがすべての喫煙を「確実に」検出できたことは、研究チームにとって「嬉しい驚き」だったと述べている。
スモーク・モンの仕組み
スモーク・モンの目標は、データを正しく記録して、個人の喫煙パターンを明らかにすることだ。具体的には喫煙のタイミング、回数、量、1回にかける時間、喫煙の間隔、総喫煙時間といったデータだ。
スモーク・モンは、これらのデータをリアルタイムで収集し、その情報をスマートフォンアプリに送信する。すると、アプリ画面に「この時期を乗り越えるのに役立つ励ましのメッセージや動画が表示され、(今回の喫煙が)一時的な挫折に過ぎず、喫煙の本格的な再開を防ぐことは可能だということを思い出させてくれる」と、アルシュラファ博士は説明する。
プライバシーの観点から、スモーク・モンは熱のみを記録し、着用者の画像や映像は記録しない。これは、自分の喫煙行動をできるだけ目立たない方法で監視し、責任を持って禁煙を実現したいと考えている人々にとって魅力的な仕様だと、アルシュラファ博士は考えている。
- 喫煙のタイミング
- 喫煙回数
- 喫煙量
- 1回の喫煙時間
- 喫煙間隔
- 総喫煙時間
さらに研究チームは、デバイスの性能を保証するため18名の禁煙治療専門家を集めたグループディスカッションを3回実施し、スモーク・モンの効果について尋ねた。専門家の1人からは、「このリアルタイム測定機能は、個人の喫煙習慣の程度を理解し、それに応じた治療を行うのにとても役立つ」との意見が寄せられたという。
公衆衛生問題としての喫煙
米疾病予防管理センター(CDC)の報告によれば、米国では依然として喫煙が予防可能な疾患と死亡の主な原因となっている。2018年のデータによれば、毎年48万人以上の米国人が喫煙のために死亡し、2400億ドル(約32兆2000億ドル)の医療費を含む6000億ドル(約80兆3900億円)以上のコストがかかっていた。
2020年には、米国で喫煙をしている成人は3080万人にのぼったと見られる。
ジョン・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院で、精神衛生学部准教授を務めるヨハネス・スルル(Johannes Thrul)博士は、電子タバコをはじめとするベイパー製品を使った新しい形態の喫煙が増加する一方で、従来のタバコ利用者も依然として多く、公衆衛生上の喫緊の課題になっていると話す。
さらにスルル博士は、人種的・民族的マイノリティ、性的・ジェンダーマイノリティ、低学歴者、低所得者、重い精神疾患を抱えた人、および薬物やアルコールなどの物質使用障害(substance use disorder:SUD)を持つ人において、喫煙格差が深刻な問題となっていると指摘し、禁煙に取り組む方法については国家的な課題として継続的に探る必要があると述べている。
「そのような優先順位の高い人々の禁煙をサポートする取り組みを、1つの専門分野として向上させる必要がある」とスルル博士は言う。
では、喫煙を追跡するウェアラブルデバイスは、喫煙行動を抑制するのに効果的なツールなのだろうか。この問いかけに対しスルル博士は、「なかには優れた精度のものもある」としながらも、「現時点で、一般的な集団に属する喫煙者のあいだで広く使われているとは言えない」と話す。
スモーク・モンに関しては、画像や映像を記録しない熱感知型のほうが、プライバシーを懸念するユーザーにとっては利用しやすいかもしれないとスルル博士は言う。とはいえ、今回の「実現可能性に関する小規模な技術調査」だけでは、この特殊なネックレスが一般の喫煙者にどれほど受け入れられるのかを判断するのは難しい、と同氏は指摘した。
「私が懸念しているのは、リストバンドではなくこのようなネックレス型のデバイスを身につけたがる人が、果たしてどれくらいいるだろうかということだ。リストバンドのほうが目立たないし、すでに多くの人が、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどを腕に装着することに慣れている」と、スルル博士は付け加えた。
関連記事:Resources and Methods to Quit Smoking Cigarettes Without Drugs
喫煙トポグラフィーの把握
個人の喫煙トポグラフィー(喫煙行動の全体像)を把握する試みは比較的新しいものだと、アルシュラファ博士は言う。したがって、個人の喫煙時間を知ることが、最終的に禁煙や喫煙の再発防止にどの程度役立つのかは、まだわかっていない。
ただし、喫煙トポグラフィーを把握することで、「喫煙行動、喫煙の再発、および喫煙関連疾患の関係を、より詳しく理解するための手法を見直すことが可能になる」と、同氏は付け加えた。
「問題は、喫煙の回数や喫煙の長さにあるのだろうか。あるいは、化学物質への曝露量が、喫煙の一時的な再開から本格的な再開に至る原因となるのだろうか」と、アルシュラファ博士は問いかける。「ウェアラブルデバイスの着用期間が十分に長くなれば、このような新しいデータと喫煙関連疾患の関係について、研究を始めることができる。それにより、新しい発見がもたらされるだろう」
さらにスルル博士は、喫煙トポグラフィーは、研究者や医療関係者が「タバコを吸うことによって晒される有害物質」について理解するのに役立つと話す。
「タバコを吸う回数やタイミングといった喫煙習慣のデータは、タバコを吸いたい気持ちにさせる具体的なきっかけを知るのに役立つ。こうしたきっかけはその人それぞれで、特有のものだ」と、スルル博士は続ける。「禁煙カウンセラーとして私が支援している人々に関して、リスクパターンやきっかけを把握できれば、私が提供する治療の調整に、こうした情報が役立つだろう」
この手のウェアラブルデバイスを治療的介入にとって役立つものにするには、「喫煙のリスクが高まるタイミングを予想する手段が必要だ」と、スルル博士は語った。
喫煙防止の未来
アルシュラファ博士のチームは、試作段階のスモーク・モンを市場に投入できるかを判断するため、複数の禁煙団体と連携しながら、スモーク・モンの効果をテストしている。また、「昨今社会問題となっている、電子タバコなどのベイパー製品に関する研究」にも取り組みたいと、同氏は語る。
このようなウェアラブルデバイスの開発は増えるはずだとスルル博士は考えている。喫煙は、大きな問題であり続けることが予想されるからだ。
「先に述べたように、我々は喫煙を記録することや介入治療に関して、喫煙のリスクが高い状況を予測する手段が必要だ」と、スルル博士は説明する。「この分野で、さらなる発展が見られることを私は期待している。また、優先順位の高い人々の禁煙を支援することの重要性についても強調しておきたい」
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この記事は、HealthのNick Blackmerが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。