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銅とニッケルの採掘を脱炭素化するには?

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Top Image: 2050年までに、銅とニッケルの年間供給量を約150~200%増加させる必要がある。

国連貿易開発会議(UNCTAD)のリポートによると、グリーン技術の革命は、まだ始まったばかりだ。気候変動の緩和を目的とした低炭素経済への移行は、電気自動車、ソーラーパネル、風力タービン、エネルギー貯蔵システムといったグリーン技術なしでは実現できないだろう。ただしこれらの技術は、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウムなど10種類を超える鉱物や金属に依存しており、需要を満たすには、その生産量を大幅に増大させる必要がある。

グリーン技術の展開ニーズを満たすには、2050年までに、特に銅とニッケルの年間供給量を、2020年の生産量と比べて約150~200%増加させる必要がある。生産量が急速に増加すれば、これに関連した環境への影響と温室効果ガス排出量も、同様に増加すると予想される。現状がそのまま進むシナリオでは、銅とニッケルの温室効果ガス排出量は、2050年までにそれぞれ125%と90%に増加する可能性がある。そのため、世界的な気候目標の達成にとって、鉱業の脱炭素化は不可欠となる。

採鉱は、環境にどのような影響を及ぼすのか

ロッキーマウンテン研究所の気候関連情報プログラム責任者で、サプライチェーン排出量に関する取り組みを率いるパオロ・ナタリ(Paolo Natali)によると、採鉱は環境を侵害する行為であり、その影響は、土地利用の変化、地域生態系のかく乱、温室効果ガスの排出という形で現れるという。採鉱とはもともと、地下深くにある資源を取り出すものだ。そのため、広範囲の土地をかく乱する。例えば森林破壊を推し進め土壌侵食率を大きく増加させる可能性がある。採鉱で生じる廃棄岩や尾鉱(選鉱くず)も、土壌や水を汚染する。そしてこれが森林伐採と相まって、野生生物の生息地消失や生態系被害の一因となる

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採鉱は、メタンなど地中に閉じ込められていたガスの放出につながるだけでなく、二酸化炭素を放出するディーゼル駆動機器を使用することによって、温室効果ガスの大きな排出源にもなっている、とナタリは述べる。そのサプライチェーンも、エネルギーを大量に消費する。掘削や爆破、資材運搬や採掘物をベルトコンベヤーやトラックなどで採鉱場から運び出す処理、破砕、金属製錬、輸送といった作業はすべて、大量のエネルギーを必要とする

ナタリによれば、特に銅とニッケルの採掘では、鉱石品位(鉱石を含む岩石の鉱物や金属の含有濃度)が低下しつつあるという。品位の低下は、同量の鉱物を収集するのにより多くの労力が必要になることを意味し、そのため使用エネルギーが増え、結果として排出量が増えるとナタリは指摘する。鉱石品位が低下すれば、作業に使われるエネルギー、ディーゼル燃料、電力がすべて増加する。これらの資源は有限であるため、採掘し続けるにはより一層深く、より辺鄙な地域へと掘り進める必要がある。ただし鉱業が発展させてきた「規模の経済」によって、低品位でも利益が出るかたちで処理できるようになった、とナタリは付け加えた。

グリーン技術への高まるニーズを満たそうとして銅とニッケルの生産量を増やせば、採鉱の影響が増大し、さらに環境を破壊することになるだろう。コロンビア持続可能投資センター(Columbia Center on Sustainable Investment)の調査・政策責任者、パーライン・トレダノ(Perrine Toledano)は、増大する鉱物需要を満たそうとすれば、銅採掘地域の淡水資源を圧迫し、ニッケルの埋蔵場所多大なる生物多様性リスクを生じさせると述べている。世界最大の銅生産国であるチリは、すでに水不足に陥っており、気候変動の影響によって、水リスクがさらに深刻化するとみられている。

つまり、低炭素経済への移行を成功させるには、採鉱の脱炭素化が必要なのだ。

銅とニッケル採鉱の脱炭素化

鉱業が炭素集約的なエネルギー生産に伴う排出量を削減するためには、化石燃料とそれによって発電される電力を、再生可能エネルギーや持続可能なバイオ燃料、グリーン水素に置き換える必要があるとトレダノは言う。例えば、採掘装置でディーゼルの使用をやめれば、採鉱場での排出量が最大40%削減される可能性がある。

クリーンな電気を使用するだけでなく、鉱石品位を向上させる高精度の採鉱技術を採用する、資材運搬に電動式ベルトコンベヤーや電気トラックを使用するなど、エネルギー入力を電化することが極めて重要だとナタリは述べる。バッテリー式の大型運搬電気トラックには、急速充電や水素燃料電池のレンジ・エクステンダー(電気自動車の航続距離を延ばすために搭載される発電用エンジン)といった最新技術があるが、こうした技術を採用することに加えて、再生可能エネルギーやダウンストリーム工程での新技術使用を増やすことで、製錬や精錬などの際の高温や化学工程による排出量を削減する必要があるだろうとナタリは付け加えた。

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金属の回収量を増やしたり鉱物・非鉱物廃棄物を再利用したりするといった、循環型経済を促進するための介入も、採鉱バリューチェーン全体での排出量削減を後押しするだろう。ニッケルは両方とも、その性質や品質を損なうことなく繰り返しリサイクルできる。さらに、銅のリサイクルに使用されるエネルギーは、一次生産と比べると約85%少ない。

政治家は、採鉱活動に厳格かつ明確な規制を設け、グリーンエネルギーに助成金を出すことによって、温室効果ガス実質ゼロの採鉱への移行を後押しできるとナタリは述べる。また輸入された鉱物にも、国内で生産された鉱物と同様の環境的・社会的基準に従うよう義務付けることを推奨している。

一方で、化石燃料に対して実施されている助成金は、再生可能エネルギーにコスト上の不利益を人為的に生み出しているとトレダノは指摘する。こうした助成金は、化石燃料による発電コストを下げることで、再生可能エネルギーの競争力を低下させている。化石燃料が有利になることで、化石燃料への依存が高まっているわけだ。政治家は再生可能エネルギーの普及を確実なものにしなければならない。再生可能エネルギーは、鉱業のクリーンエネルギーへの移行を後押しできるだろう。

銅とニッケル採鉱の脱炭素化は、瞬時に実現できるものではない。しかし再生可能エネルギーに切り替え、生産効率を高め、採鉱作業に関する気候関連の適応や抑制の義務を盛り込んだ政策を定めれば、増大する鉱物需要を満たしつつ排出量を減らすことを達成できるかもしれない。

この記事は、Popular ScienceのCarla Delgadoが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。