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宇宙生まれの高品質素材「グラフェン・エアロゲル」とは?
グラフェン・エアロゲルは、断熱性と導電性の両方を備えた驚くべき軽量素材だ。電池におけるエネルギー貯蔵の改善から、流出油を除去する際のより優れた方法、次世代の宇宙服に至るまで、幅広い用途で魅力的なものになっている。スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校の研究者から成るチームは、国際宇宙ステーション(ISS)国立研究所を活用して、地球上で製造可能なものより高品質のグラフェン・エアロゲルを製造することを目指している。
ISSに滞在していたクルードラゴン宇宙船運用6号機(Crew-6)の宇宙飛行士たちは2023年8月末に、この研究に関する作業を完了した。全米科学財団(NSF)の資金援助を受けたこの研究は、グラフェン・エアロゲル合成の基礎となる物理現象に関する新たな知見を提供し、新しい材料製品の開発につながる可能性がある。
この研究は、上記のサンプルと同様のグラフェン・エアロゲルのサンプルを製造することを目的としている Image Credit:Jessica Frick, Stanford University
スタンフォード大学のリサーチエンジニア、ジェシカ・フリックは、「ISSの微小重力環境を利用することで、これまで足を踏み入れることができなかった材料科学のまったく新しい領域を開拓することができます」と述べる。
フリックは、スタンフォード大学航空宇宙工学科に所属するXLab(Extreme Environment Microsystems Laboratory)の一員だ。XLabは、同大学のデビー・セネスキー准教授の研究室であり、宇宙のような極限環境でも動作する、極小だが頑丈な電子機器を作ることに焦点を当てている。フリックとセネスキーはISSでの調査のために、カリフォルニア大学バークレー校のロヤ・マブーディアン教授(化学・生体分子工学)率いる研究グループと協力している。目的は、グラフェン・エアロゲルの性質と、微小重力がその特性に与える影響をより深く理解することだ。
グラフェン・エアロゲル合成の第1段階を微小重力で実行するこの研究は、ノースロップ・グラマンのシグナス無人宇宙補給機を使ってISSに物資を補給した19回目の商業補給サービス・ミッション(NG-19)で開始された。この実験結果は、将来の宇宙空間での製造や深宇宙ミッションに影響を与える可能性がある。グラフェン・エアロゲルの製造は、2段階のプロセスから成る。第1段階は、ゼリーをつくるのとよく似ている。研究チームは、ゼラチン粉末と湯を混ぜてゼリーを作るように、酸化グラフェンのフレークを水溶液に混ぜ合わせた。その後、酸化グラフェン溶液のサンプルはISSに送られ、2023年8月第4週の前半に、ISSのクルーによって加熱器に入れられた。そこで水溶液が加熱され、グラフェン・ハイドロゲルが形成されるのだ。このプロセスには数時間かかる。ハイドロゲルが形成されたら、宇宙飛行士はサンプルを地球に持ち帰るための準備をする。
サンプルが地球の研究所に戻ってくると、研究チームがこのプロセスの第2段階を実行する。ここでは、液体を除去して空気のみを残し、グラフェン・エアロゲルの形にする。次にエアロゲルの特性を調べ、それを地上で作製されたグラフェン・エアロゲルの特性と比較するのだ。
このプロセスでは第1段階が最も重要だ、とフリックは述べる。地球では、重力によってグラフェンフレークが不均一に下に引っ張られ、ハドロゲルに亀裂が生じる可能性がある。このことが製造されたエアロゲルの品質に影響を及ぼし、導電性や吸収率が低下すると考えられている。
「宇宙で製造したグラフェン・ハイドロゲルに期待しているのは、地球で見られる沈降の影響が低下することです」とセネスキーは述べる。ハイドロゲルから製造されたグラフェン・エアロゲルのサイズはわずか数ミリメートルだが、地球上で製造されたエアロゲルより高品質であることを研究チームが証明できれば、スケールを拡大してより大きなグラフェン・エアロゲルを製造できる可能性がある。
セネスキーによると、エアロゲルには優れた性質が多数あり、さまざまな用途にとって理想的な材料になるという。まずは、非常に多孔質であるため、ろ過に適している。例えば、米航空宇宙局(NASA)の「スターダスト」計画では、彗星から細塵粒子を捕捉するのにシリカベースのエアロゲルを使用していた。シリカ・エアロゲルは、NASAの火星探査機や、地球上のアウターウェアの断熱材としても使用されている。
グラフェンには導電性もあるため、研究者は、グラフェン・エアロゲルを電池やスーパーキャパシタのエネルギー貯蔵に使用できるのではと期待している。さらにグラフェン・エアロゲルは、有望な断熱材として熱遮蔽技術に使用したり航空宇宙用途の繊維に埋め込んだりできる可能性がある。また、化学センサーとしての使用や、特定の化学成分の吸収を促進するために使うこともできるため、流出した油を除去する時のような用途にも役立つ可能性がある。
「グラフェン・エアロゲルには、スポンジのような吸収性があります」とマブーディアンは述べる。「自重の何倍もの物質を吸収できるため、流出した化学物質を除去したり、環境中の有害な化学物質を検出したりするツールとして使用できる可能性があります」
この記事は、SpaceDaily.comより、Industry Diveの DiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。