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「骨」「靭帯」「腱」を持つ3Dプリントのソフトロボット・ハンド

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研究者たちは、ロボットハンド、6本脚のロボット、「心臓」ポンプ、メタマテリアルの立方体を3Dプリントした。Top Image Credit: ETH Zurich / Thomas Buchner

ソフトなロボットハンドを「複雑」と表現するのは、少々控えめな表現だ。これらの設計では、各材料の柔軟性や耐久性をはじめとする数多くの工学的要素が考慮されている。通常は、それぞれの構成部品ごとに別個の3Dプリント工程が必要となり、数種類のプラスチックやポリマーが使われることが多い。しかしながら、スイス連邦工科大学チューリッヒ校と、マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンオフした企業インクビット(Inkbit)の技術者たちの共同研究により、レーザースキャナーとフィードバック学習を利用する3Dプリンターを使って非常に複雑な製品を作ることができるようになった。研究者たちによる素晴らしい成果として、すでに4種類の異なる3Dプリントプロジェクトが実現している。6本脚のグリッパーロボット。人工の「心臓」ポンプ。弾力性のあるメタマテリアル構造。そして、人工の腱、靭帯、骨を備えた、複数の関節から成るソフトなロボットハンドだ。

[関連記事:Watch a robot hand only use its ‘skin’ to feel and grab objects.]

従来の3Dプリンターでは、速硬化性ポリアクリレートというプラスチックが使われる。この工程では、プリンターノズルを通して層状に重ねられた可鍛性のあるプラスチックゲルが、UVランプによって急速に硬化されると同時に、その過程で表面の不完全な部分がツールによって削り取られる。急速な硬化は効果的である一方で、製品の形状や機能、柔軟性が制限される場合がある。しかしこのような速硬化性プラスチックを、エポキシやチオレンのような遅硬化性ポリマーで置き換えようとすると装置がうまく機能しないため、多くのソフトロボット構成部品ではそれぞれ別個の製造方法が必要になる。

このことを知っていた設計者たちは、スキャン技術と迅速なプリント調整を追加することで、遅硬化性という障害を解決できるのではないかと考えた。『Nature』オンライン版で2023年11月15日付で発表された新しい論文で紹介されているように、この新しいシステムはソリューションを提供するだけでなく、3Dプリントした遅硬化性ポリマーの可能性を、多くの設計にわたって示している。

3Dスキャンを使う手法では、不完全な部分を層ごとに削り取る代わりに、表面の凹凸についての即時に近い情報が提供される。このデータがプリンターのフィードバック機構に送られると、必要な材料の量が「リアルタイムで極めて正確に」調節される。この論文の共同執筆者である、MITのヴォイチェフ・マトゥシク(Wojciech Matusik)教授(電気工学およびコンピューター科学)は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校が発表したプロジェクト概要の中で、そう説明している。

研究者たちは、自分たちが考案した新しい方法の可能性を示すために、軟質硬化性ポリマーを使って4種類の異なる3Dプリントプロジェクトを実行した。弾力性のあるメタマテリアルの立方体。各種の「液体」を送り込むことができる、心臓に似た流体ポンプ。センサーから情報を得る、二股のグリッパーが付いた6本脚のロボット。さらに、埋め込まれたセンサーパッドを使って物体をつかむことができる、複数の関節から成るロボットハンドだ。

生産方法やポリマーの化学組成、寿命などについての改良はまだ必要だが、研究チームでは、比較的迅速で用途の広いこの3Dプリント技術が、産業や建築、ロボットなどの多数の斬新な設計につながる日が来ることを確信している。例えばソフトロボットであれば、人間と並んで働くとき、標準的な金属のロボットと比べて、怪我をさせるリスクが少なくなったり、壊れやすい物の扱いがうまくできたりする。しかしすでに、現時点の技術的進歩から、以前は3Dプリンターでは不可能だったような設計が複数生み出されているのだ。

この記事は、Popular ScienceのAndrew Paulが執筆し、Industry Diveの DiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。