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小型昆虫とアメンボからヒントを得た、世界最小のマイクロロボット

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小型昆虫とアメンボからヒントを得た、世界最小のマイクロロボット

昆虫からヒントを得た一対の小さなロボットの背後にある設計理論は、いつか、環境モニタリングや外科手術、捜索救助活動の分野に進出する可能性を秘めている。しかも、その過程で記録を塗り替えたと報じられている。小型昆虫とアメンボをモデルにしたこの2つのロボットは、それぞれの重さが8ミリグラムと56ミリグラムで、「世界最小、最軽量、最速の、完全に機能する」マイクロロボットになる可能性があると、ワシントン州立大学(WSU)のリリースは述べている。

WSUの研究者チームが開発したこの2つのロボットは、米国電気電子学会ロボット工学/オートメーション学会(IEEE Robotics and Automation Society)が主催した、インテリジェントなロボット及びシステムに関する国際会議(International Conference on Intelligent Robots and Systems)で、2023年10月に発表されたものだ。これほどの小ささが実現できたのは、重さ1ミリグラムにも満たない斬新な動作アクチュエーターによるところが大きい。同大学工学部のネストル・O・ペレス=アランシビア(Néstor O. Pérez-Arancibia)准教授率いる開発グループが、各部品を組み立てる際に使用したのは、形状記憶合金として知られる材料だった。形状記憶合金は加熱すると変形するが、元の形状を「記憶」していて、冷却すると元に戻る。このため、この2つのマイクロロボットは標準的なモーターを必要とせず、したがって、かさばる可動部品も必要ない。

小型昆虫ロボットとアメンボロボットのアクチュエーターは、それぞれ2本の形状記憶合金(幅が1000分の1インチ=25.4マイクロメートルの合金線)で構成されている。このアクチュエーターでは、微小な電流で合金線を加熱・冷却することで、フィンや脚を1秒間に40回もの速さで動かすことができ、同時に自身の重さの150倍以上を持ち上げることができる。

研究論文の主著者であり、機械・材料工学の博士課程大学院生であるコナー・トライグスタッド(Conor Trygstad)はWSUのリリースで、こう説明している。「この2つのロボットは、機械的に非常に正確で堅牢です。超軽量のアクチュエーターの開発によって、マイクロロボット工学の新たな領域が開かれました」

だが、このロボットが他の小型ロボットと比べて優れているとしても、「生物学的親類よりは、まだ遅れをとっています」と、トライグスタッドは敗北を認めている。

Water strider and mini-bug robots next to quarter for size comparison

画像提供:Bob Hubner, WSU Photo Services

現在、この2つのロボットがそれぞれの環境を1秒間に移動できる距離は約6ミリメートルだ。これに対して、体重5ミリグラムのアリは、1秒間に約1メートルも移動できる。マイクロロボットの移動距離がこれほど短い理由のひとつは、そのデザインにある。アメンボロボットは脚を上下に動かして水の上を進むが、本物のアメンボは、脚を使って漕ぐため、より速く移動できる。このマイクロロボットには今のところ、有線電源も必要であるため、現実世界での実現は非常に厳しい状況だ。

しかし、開発チームは今後、他の昆虫の模倣を行うと同時に、水上と水面下の移動を切り替えられる、新しいアメンボロボットの開発を計画している。触媒燃焼を使用したり、小型電池を組み込んだりすることで、このロボットの実用性と使用範囲は大きく広がるかもしれない。この画期的なデザインが進歩し続ければ、いつか同じようなマイクロロボットが、到達が難しい環境や危険な環境を監視したり、小型製造技術や外科手術の役に立ったり、あるいは人工授粉の取り組みを支援するために展開される可能性がある。

この記事は、Popular ScienceのAndrew Paulが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。