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元アップル社員がつくった「AIメガネ」

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元アップル社員がつくった「AIメガネ」

人工知能(AI)メガネを開発するブリリアントラボ(Brilliant Labs)は2024年2月、マルチモーダルAIアシスタントを搭載した世界初のスマートグラス「Frame(フレーム)」を発表した。

この最先端のウェアラブル製品は、「Pokémon Go」を開発したナイアンティック(Niantic)のCEOで、拡張現実(AR)のパイオニアとされるジョン・ハンケ(John Hanke)氏からの多大な支援によって実現した。ブリリアントラボは、これまでに600万ドル(約9億円)を調達している

Pokémon Goで大金を手にした人たちが、AIグラス業界を支援するために戻ってきているのだ。

現時点で、アドバイザーや投資家として名を連ねているのは、ベンチャーキャピタルのCoho Deeptech、オキュラス(Oculus)の共同創業者ブレンダン・アイリブ(Brendan Iribe)氏、Siriの共同創設者アダム・チェイヤー(Adam Cheyer)氏、Pebbleの創業者エリック・ミギコフスキー(Eric Migicovsky)氏、Paylocityの創業者で、Wayfarer Studiosの会長であるスティーブ・サロウィッツ(Steve Sarowitz)氏、オキュラスの元主要メンバーで、フレームワーク(Framework)の創業者ニラヴ・パテル(Nirav Patel)氏、初代「iPhone」のチームメンバーであるフランシスコ・トルマスキー(Francisco Tolmasky)氏、プラグアンドプレイ・ベンチャーズ(Plug and Play Ventures)、ムーブオン・テクノロジーズ(Moveon Technologies)などだ。

ブリリアントラボのCEOを務めるのは、アップル(Apple)の元幹部であるボバック・タヴァンガー(Bobak Tavangar)氏だ。同社はFrameを「日常生活にパラダイムシフトをもたらす製品」としてリリースした。Frameには、映画『マーベル・シネマティック・ユニバース』シリーズで、登場人物のアイアンマンが開発したAI「J.A.R.V.I.S(ジャーヴィス)」のような常時稼働のAIアシスタント「Noa(ノア)」が搭載されている。これにより、周囲の世界を認識する方法を変革し、物理的環境との相互作用を再定義する、と同社は説明している。

タヴァンガーCEOは声明の中で、「Frameは、人がデジタル世界や他の人間とやりとりする方法に、新しいパラダイムをもたらします」と述べている。「Noaは、まったく新しいタイプのAIバーチャルアシスタントであり、ユーザーは、周囲の世界とより深く関われるようになります。私たちの願いは、Frameによって人々がまったく新しい方法で互いにつながりを築き、日常生活や職場、あるいは教育の場で、新しい体験を切り開けるようにすることです。この製品は、生成AIの効果を目に見える形で実感できるというユニークな体験を約束します」

Noaは、「GPT-4」「Stability AI」「Whisper」のAIモデルを同時に実行できる統合マルチモーダル生成AIシステムを搭載しており、現実世界の視覚処理、今までにない画像生成、リアルタイムの音声認識と翻訳機能を持っている。Frameのマルチモーダル機能は、複数のAIシステムの連携を可能にするため、こうしたテクノロジーを日常生活で無限に利用できるようになる。

さらにFrameは、驚くべき技術製品であるだけでなく、ファッション製品でもある。ジョン・レノンやスティーブ・ジョブズ、ガンジーなど、印象的な円形のメガネをかけながら文化を創造してきた歴史上の人物に敬意を表したデザインになっているのだ。しかも、軽量でスタイリッシュなパッケージに高度なテクノロジーがシームレスに統合されているため、従来のメガネとほとんど見分けがつかない。

なお、AR機能自体はFrameに搭載されていない。Frameは、AIが組み込まれたメガネとして設計されており、出力結果を確認したり、大規模言語モデル(LLM)用に現実世界の情報を入力したりするために利用できる。現時点では、ChatGPTにコンテンツを入力したりアップロードしたりして、ChatGPTとやりとりする、というのが通常の使い方になるだろう。LLMが搭載されているため、ユーザーは、現実世界の情報(見えているもの、聞こえているもの、今いる場所など)に基づいたプロンプトをLLMに入力できる。

ユーザーの個性を学ぶ、マルチモーダルAIアシスタント


FrameはAIクエリーを処理できる。

ブリリアントラボによれば、Frameの洗練されたデザイン内に搭載されているNoaは、他に類を見ない常時稼働型のAIアシスタントだという。Noaは、プライバシーが保護されたナレッジグラフを通じて、ユーザーとの間で行った複雑なやりとりを分析することで、独自の個性を徐々に学び、取り入れるようになる。

ユーザーがFrameを起動すると、Noaはまるでバーチャルなペットのように、孵化寸前の「デジタルな卵」としてユーザーの目の前に現れる。ユーザーが一連の質問に答えるうちに、Noaのアバターはユーザーの個性を反映し、そのペルソナを身につけたキャラクターとして育っていく。Noaは、ユーザーと、Noaが受け取るタスクの両方について学び、適応していくなかで、パーソナリティがより明確になっていく、とブリリアントラボは述べている。

Noaが実行できるタスクは、本の要約や外国語の翻訳、同僚に向けたホワイトボード画面の作成など、多岐に及ぶ。Frameに内蔵されたマルチモーダル生成AIは、複数のAIシステムを連携させることで、感情や表情などの手がかりを、視覚的および聴覚的に測定するといった高度なタスクを実行する。

同社によれば、Frameはパーソナル・アシスタントとして使えるだけでなく、AIで強化されたスマートグラスの時代に合わせて、検索エンジンの概念を再定義するという。Noaを使えば、小売店で衣料品をスキャンするだけですぐに価格を表示したり、(家などの)物件探しのさなかに、目にした物件の情報を特定したりできる。その可能性は広大であり、人間のやりとりや経験を拡張することが期待されている。

普通のメガネのように見えるデザイン

FrameのAIメガネの厚みは、通常のメガネと変わらない。

重さわずか39グラムのFrameは、かけ心地と耐久性を高めるために、強度と耐熱性に優れたナイロンプラスチックで製造されている。クラシックなヴィンテージ風デザインに、スモーキーブラック、マットクール・グレー、H2O(透明)の3つのカラーバリエーションが用意され、どのようなスタイルの服装にもフィットする。

また、3000ニトの輝度を持つ高解像度の鮮やかなディスプレイ、前面空間カメラとマイクを搭載しており、高度な慣性測定ができる「6DoF IMU」も備えている。

さらにAddOpticsとの提携によって、視力矯正のための処方レンズを、独自の光学レンズ製造プロセスを通してスムーズに取り付けることができる。Frameは米国で予約を受け付けており、2024年4月に出荷される予定だ。価格は税込349ドル(約5万2000円)となっている。

開発者に向けたオープンソースモデルを継続

ブリリアントラボが以前販売した「Monocle(モノクル)」は、メガネに取り付ける単眼レンズ型のARデバイスだったが、初回注文分はすべて完売した。同社は現在、消費者と開発者の両方に対してFrameを販売・供給しようと取り組んでいる。

ブリリアントラボは、前モデルのMonocleと同じく、Frameもオープンソースデバイスにすることを表明している。開発者は、同社から提供される最新のドキュメント、オープンソースのコードベース、ハードウェアの回路図など、あらゆるリソースを利用して、Frameのハードウェアとソフトウェアの両方を研究・改良できる。NoaでサポートされているAIモデルのパラメーターを、開発者が調整することも可能だ。

Siriの共同創設者で、ブリリアントラボに出資しているアダム・チェイヤー氏は声明の中で、「最初のMonocleから今回発表したFrameに至るまで、ブリリアントラボの画期的な進歩は素晴らしいものです」と述べている。「美しく、かつ日常的に使える実用的なデザインを備えたブリリアントラボのFrameは、社会の在り方を変える、新しい時代の到来に向けた第一歩です。Frameは、組み込みAIアシスタントであるNoaの助けを借りて、情報を整理し、情報にアクセスし、情報に基づいて行動する人間の能力を高めることができます。ブリリアントラボは、拡張可能でオープンなAIプラットフォームを通じて、iPhone時代の始まりを彷彿とさせるハンズフリーアプリケーションの新しい波をもたらすことができるでしょう」

ブリリアントラボは、元アップル社員のタヴァンガー氏が、共同創業者のラジ・ナカルジャ(Raj Nakarja)氏およびベン・フィールド(Ben Heald)氏とともに2019年に設立した。同社には3人の従業員がいる。

Frameは、動画と写真の撮影が可能だ。ただし、その主な目的は、SNSアプリ「Snapchat」を手掛けるスナップ(Snap)のARグラス「Spectacles(スペクタクルズ)」のような製品とは異なり、マルチモーダルAI機能での利用にある。例えば、友人の顔写真をリミックス(再構成・加工)したい場合は、その友人の方を向いて写真を撮り、Frameにリミックスの方法を指示すればいい。

Frameは、GPT-4に加えて、Stability AIが開発した画像生成AI「Stable Diffusion」をNoa経由で使用して、撮影した画像のAI生成バージョンを作成する。出力された画像については、ユーザーがFrameで確認でき、使用後は完全に消去される。SnapchatやMetaのように、画像や動画が保存されることはない。動画や写真を撮影するのは、主にAI機能で利用するためであり、ソーシャルメディアでの利用は重視されていないからだ。

この記事は、VentureBeatのDean Takahashiが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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