ある新しい研究は、高圧送電網の運用には、シリコンよりもダイヤモンドの方が効率的であることを明らかにした。高圧送電網は、再生可能エネルギーの効率には不可欠だ。
米国エネルギー省に属する米国エネルギー情報局(EIA)によると、世界の電力需要は2050年までに50%近く急増すると予測されている。しかし、米国で生成されるエネルギーの約3分の2は、顧客に届く前に失われていると、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のキャン・バイラム(Can Bayram)准教授は指摘する。
課題がないわけではない
送電網の効率を高めるための解決策のひとつは、交流(AC)から直流(DC)に移行することだ、とバイラムは述べる。DC送電網は、AC送電網の電力損失を90パーセント減少させることができるうえに、整流器(AC-DCコンバーター)が不要になり、変圧器の必要性も抑えられる。さらに、高電圧のDC送電網は、長距離のエネルギー伝送でより効率が上がるため、遠隔地の太陽光発電所や風力発電所にとって特に有益だ。
DC送電網をサポートするためには、パワーエレクトロニクスが不可欠だ。パワーエレクトロニクスは現在、世界の電力の50%以上を制御しているが、再生可能エネルギーの採用が増加することで、この数字は2030年までに80%に増加するとバイラムは予測している。将来のDC送電網には、現在のシリコンデバイスよりも高速かつ強力なパワーエレクトロニクスが必要になり、半導体ダイヤモンドがその答えになり得る、とバイラムは主張している。
ダイヤモンドは「最も硬い半導体」として知られ、最高の熱伝導体のひとつでもあり、破壊電圧も高い。こうした特性は、ダイヤモンド半導体デバイスが、より少ない材料、かつ高電流・高電圧で動作でき、電気性能も低下しないことを意味する。
バイラムはまた、ダイヤモンドベースのエレクトロニクスは軽量のため、輸送や設置のコスト削減につながるとも指摘している。ただし、克服すべき課題もある。ダイヤモンドベースのデバイスにおける「ドリフト層」の厚みを増やすことも、その課題のひとつだ。ドリフト層は、高電圧に耐えるうえで重要なコンポーネントだ。
こうした課題があるにもかかわらず、研究チームは、薄いドリフト層で約5000ボルトという過去最高の破壊電圧を達成した。ダイヤモンドデバイスで最も低い漏れ電流を実証したことになる。
バイラムは以下のように述べている。「我々はダイヤモンドが半導体市場に、5メガワットを超えるハイエンドの電力レベルで参入すると確信しています。ダイヤモンドベースのコンバーターは、コスト競争力が高くなるでしょう。なぜならダイヤモンドデバイス自体は通常のシリコンデバイスより高価であったとしても、半導体サイズの縮小と、熱管理を含むシステムの簡素化により、全体的なコストが大幅に削減されるためです」
※研究結果の詳細は、学術誌『IEEE Electron Device Letters』に掲載されている。
この記事は、TechRadarのWayne Williamsが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。
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