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データセンターと新しいパワー半導体技術が、脱炭素化をどうサポートするか

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データセンターと新しいパワー半導体技術が、脱炭素化をどうサポートするか
  • 私たちがオンラインで行っているすべての活動は、データを生成・増加させている。つまりデータセンターは、インターネットのバックボーンとして重要な役割を担っている。
  • データセンターは、すでに世界の二酸化炭素排出量に大きく影響している。2022年には、世界の電力消費量の1~1.5%を占めていた。
  • 将来的には、パワー半導体技術が促進するイノベーションによって、データセンターのエネルギーバランスを改善できる可能性がある。

動画を配信したり、ゲームをプレイしたり、生成AIを利用したりすることはもちろん、単に電子メールを送信するだけでも、私たちは常に新しいデータを生成している。

年間に生成されるデータの量は、2010年には2ゼタバイトだったが、それ以降、毎年増加している。最新の推計によると、現在は1日で約3億2877万テラバイトのデータが生成されているという。これは、年間120ゼタバイトに相当する量だ。

2025年までには、データ量は170ゼタバイトを超えると予想されている。つまり、2010年からわずか15年で、145倍以上に増加すると予測されるわけだ。

データセンターが、インターネットのバックボーンである理由

これほどのデータトラフィックが存在するなかで、データセンターは、インターネットのバックボーンとして重要な役割を担っている。データセンターは、膨大なデータストリームを24時間休みなく処理しなければならない。

増え続ける一方のデータ需要に対応するには、シームレスな接続を実現し、帯域幅を広げ、通信可能エリアを拡大する必要がある。現代のデータ/通信インフラにとっては、いずれも困難な要件だ。

また、AI(人工知能)、特に生成AIがデータの増加を加速させており、電力需要の増加につながっている現状がある。公共部門、企業、市民社会はいずれも、データセンターがすでに世界の二酸化炭素排出量に影響していることに気づいており、その影響がさらに拡大することを理解している。

再びデータを見てみよう。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2022年には、データセンターだけで世界の電力消費の1~1.5%を占めたという。

世界全体でのデータセンターの電力消費量は、2022年の時点で460テラワット時に達していた(1テラワット時=10の9乗キロワット時)。これは、1億5300万世帯のエネルギー需要に相当する。また、2025年までには、二酸化炭素排出量全体の3.2%を占めると予測されている。

このような衝撃的な数字は、否応なく、データセンターのエネルギー効率に対する注目につながる。データセンターは、エネルギーを最も大量に消費する建物のひとつであり、床面積あたりのエネルギー消費量は、一般的な商業オフィスビルの10~50倍だ。

データセンターの電力消費量が大きくなる原因の大半は、強力なサーバーと冷却システムにある。常時稼働しているサーバーは非常に高温になるため、冷却が欠かせない。

こうした冷却のためには、24時間態勢でさらにエネルギーを使用することが必要だ。データセンターで消費されるエネルギーの約50%は、冷却とバックアップ電源に使われている。

高速なデータ伝送を可能にしながら、ネットゼロの目標に向けた効率的な運用を実現するには、堅牢で信頼性が高く、安全でエネルギー効率の高いデータセンターを実現する必要がある。

同時に、データセンターは高い拡張性を備えた設計にしなければならない。AI開発者たちが、コンピューティングやデータストレージのリソースを拡張できるようにするためだ。

データセンターにおけるAIのニーズに応えるには?

データセンターの役割は、さまざまな業界でAI技術の進歩と普及を促すうえで極めて重要だ。エネルギー消費は、どのような新しい技術でも常に懸念される要素だが、AIの運用は複雑であるため、さらに多くのリソースを必要とする。

例えばAIデータセンターは、深層学習モデルのトレーニングや複雑なアルゴリズムの実行に欠かせない膨大な演算ワークロードを処理できる高性能サーバーを装備している。

また、膨大なストレージ容量を提供することで、データセットを安全かつ効率的に保存・管理できるようにしている。こうした需要に対応するため、データセンターは常にアップグレードが求められる。

大きな問題は、データセンター内に電源を設置するための物理的なスペースが限られているなかで、急増する新たなAI環境で必要になる「データ処理性能の高さ」をどのように保証できるのかということだ。

データ処理性能の高さを保証する方法

この課題に対するソリューションは、データセンターに接続されるグリッドから、コアであるAIプロセッサーまでを対象にする必要がある。パワー半導体技術によるイノベーションは、データセンターがエネルギーバランスを改善することを可能にする。

データセンターは効率化され、その結果として運用コストが減少している。これは、先進的なパワー半導体によって、パワーサプライがより効率的になり、冷却要件が緩和されているからだ。

世界全体で、さまざまな種類の先進的なパワー半導体を使用すれば、約48テラワット時のエネルギー削減を達成できる可能性がある。これは、3500万トン以上の二酸化炭素排出量に相当する、とインフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)は分析している。

また、適切なマイクロエレクトロニクス(超小型電子機器)の利用だけでなく、低圧電源アーキテクチャへの変更も、データセンターのエネルギーバランスにプラスの影響を与える可能性がある。これによって、電力損失が減るだけでなく電力密度を高めることができるため、コンピューティング能力がさらに強化されるのだ。

効率化につながる、有望な新素材

技術革新や改良は、新素材によっても実現できる。

窒化ガリウム(GaN)は、半導体の効率と電力密度の向上に役立つ最新素材のひとつだ。GaN半導体は、導電性とスイッチング効率が高いため、エネルギー消費を減らし、サーバーやデータセンターのエネルギー効率を高めるのに役立つ。

しかも、この種のパワー半導体は、従来のシリコントランジスターベースの実装に比べて、小型で軽量だ。電源の設置に必要なスペースが少なくなり、データセンター全体のデバイス数を減らせることから、重要な要素と言える。

この種の素材は、ゲームチェンジャーとなる可能性がある。電力密度の向上、効率化、複雑さの低減への道を切り開くからだ。こうした要素はいずれも、最終的に二酸化炭素排出量の削減につながるものとなる。

最後に、こうした新素材による脱炭素化のポテンシャルを示すため、新たな計算をしてみよう。米国のすべてのデータセンターにGaN半導体が導入されれば、3.85テラワット時のエネルギーを節約できる。これは、二酸化炭素排出量を毎年315万トン削減することに相当する。

この記事は、World Economic ForumのAdam Whiteが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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