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パワーエレクトロニクスを支える次世代の半導体材料 〜シリコンを超えて

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パワーエレクトロニクスを支える次世代の半導体材料 〜シリコンを超えて

パワーエレクトロニクスは、半世紀以上にわたって、ケイ素(シリコン、Si)によって支えられてきた。しかし、大容量電源や高温の用途においてケイ素が物理的な限界に直面すると、業界はもっと効率のよい電力システムを追求するようになり、ワイドバンドギャップ(WBG) 半導体の時代が始まりつつある。世界のワイドバンドギャップ半導体の市場規模は2022年、16億ドル(約2480億円)に達し、その後8年間の年平均成長率(CAGR)は13%になると予測されている。炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)をはじめとするワイドバンドギャップ半導体の採用により、自動車、工業、エネルギーなどの部門で、電力システムのパフォーマンスに関する新基準が生まれつつある。ワイドバンドギャップ半導体は、2024年のパワーエレクトロニクスのトレンドにどのように影響するのだろうか。設計とシミュレーションのワークフローは、これからの10年でどのように再定義されていくのだろうか。

変化のための触媒:ワイドバンドギャップ

「バンドギャップ」とは、物質の絶縁状態と伝導状態のあいだのエネルギー差を指す。物質の電気伝導性を決める重要な要素だ。

バンドギャップの広い窒化ガリウム(GaN)は、この特性がもたらし得る3つの優位性をよく示している。

  • スイッチングスピードの高速化:GaNのバンドギャップが広いことによる大きな利点のひとつは、スイッチングスピードの高速化につながることだ。GaNの電子移動度は約2000cm²/Vsであり、Siと比べて最大10倍のスイッチングスピードが可能だ。スイッチングスピードの高速化は、スイッチング損失の低減につながり、設計全般のコンパクト化と効率化が進む。
  • 耐熱性の向上:熱伝導率が2 W/cm KのGaNは、放熱が可能で、摂氏200度までの温度で有効に機能できる。この耐熱性が、高温などの極限状態における熱管理のさらなる効率化を実現する。
  • 耐電圧の高さ:絶縁破壊電界が3.3MV/cmのGaNは、ケイ素と比べて10倍近い電圧に耐えることができる。

このように、GaNをはじめとするワイドバンドギャップ半導体は、エネルギー効率の向上と設計の柔軟化により、大容量電源、高周波、高温で使えるソリューションを実現する。

パワーエレクトロニクスのシミュレーションにおける新たな課題

炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)をはじめとするワイドバンドギャップ半導体の採用拡大は、スイッチング電源(SMPS:Switched Mode Power Supplies)設計の新基準をもたらし、電力効率、省スペース、軽量化につながる。

しかし、GaNやSiCによるスイッチングスピードの高速化にあたっては、これまでよりも洗練された設計を考えなければならない。信頼性と機能を確保するため、パワーエレクトロニクス技術者による、電磁障害(EMI)の管理と熱性能の最適化が必要だ。例えば、di/dt値が大きいと、レイアウト寄生成分(Layout parasitics)が電圧スパイクにつながるおそれがある。以下では、パワーエレクトロニクス技術者が早急に答えを出さなければならない課題をいくつか挙げる。

  • 動作温度の範囲が拡大するなか、ミッション・クリティカルな用途に必要な信頼性を確保するにはどのような方法があるのか。
  • EMIとノイズの把握と予測のために必ず実施しなければならないことは何か。
  • システムレベルの総合的分析向けに、ロバストな熱モデルを構築するのに使えるツールは何か。

技術者がこのような複雑な問題に対応するには、先進的なシミュレーションソリューションが必要だ。レイアウト寄生成分の影響に効果的に対処できて、ロバストな熱分析も含まれているソリューションが必要になる。

ワイドバンドギャップ半導体の主なインパクト:EVから再生可能エネルギーまで

電気自動車(EV)

2024年には、世界のEV販売が21%増加すると予測されており、自動車のパワーエレクトロニクスにおける電力効率は極めて重要だ。たとえ1%の改善であっても、得られる成果は大きい。オンボードチャージャーとトラクションインバーターの省スペース化と高効率設計をGaNで実現することで、航続距離は最大6%伸びる。

データセンター

デジタル経済の拡大により、データセンターのエネルギー消費が急増している。米国では、今後5年間で39ギガワットが新たに必要になる見込みだ(これは3200万世帯の電力に相当する)。こうした課題に対処するには、ワイドバンドギャップ半導体でサーバーの高密度化を図り、エネルギー消費や炭素排出の抑制を実現することが鍵になるだろう。具体的には、データセンターのインフラにGaNトランジスターを導入することで、二酸化炭素排出量を10ラックあたり年間100トン削減できる可能性がある。AI(人工知能)アプリケーションの計算需要や電力需要が急上昇することで、ラックの電力密度が3倍になる可能性もあるなかで、この効率化は重要だ。

再生可能エネルギー

ワイドバンドギャップ半導体は、再生可能エネルギーの家庭用と商業用、双方の貯蔵システムにおいて、電力出力の信頼性の向上と、費用効果の高いソリューションの実現に道を開く。例えば、GaNトランジスターにすることで、出力損失を、Siベースの従来の電力ソリューションと比べて4分の1に抑制できる可能性がある。

ワイドバンドギャップ半導体時代のこれから

GaNとSiCは、パワーエレクトロニクスを効率化し、我々が世界にどのように電力を供給するかを再定義する、材料イノベーションのニューウェーブを代表している。ワイドバンドギャップ半導体の利用拡大にあわせて、キーサイト(Keysight)では、多様な動作条件で稼働し長持ちする、信頼できる電子システムを設計する統合シミュレーション環境を提供している。

この記事は、3BL MediaでKeysight Technologiesが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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