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米コロラド州の小さな町が廃棄物から金を再採掘

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米コロラド州の小さな町が廃棄物から金を再採掘

米国コロラド州の山岳地帯には、レッドビルという歴史のある町があり、錆色に染まった鉱山廃棄物の山や、日光にさらされて色あせた木のやぐらがあちこちに残っている。これらは、金鉱山や銀鉱山の遺物だ。この町が繁栄を極めた日々が終わった後も、100年以上にわたってアーカンソー川流域を汚染し続けている

そこに登場したのが、CJKミリング(CJK Milling)という新興企業だ。廃棄物の山の一部を「再採鉱」して、数十年前には価値が低かったために廃棄された鉱石から、さらに金を絞り出したいと考えている。廃棄物を回収してトラックで近くの工場に運び、細かく粉砕してから、シアン化合物の水溶液に浸けることで、わずかな量ではあるが貴金属を抽出する。

こうした提案の背景には、鉱物が含まれる廃棄物の再処理に、世界的な関心が高まっている状況がある。廃棄された鉱物は、時を経て価値が高まっている。つまり、現在は以前よりも容易に鉱物が取り出せるようになっているのだ。その中には貴金属や、再生可能エネルギーに利用される鉱物も含まれており、米国をはじめとする多くの国々のあいだで、確保に向けた争奪戦が起きている。

こうした動きを支持する人々は、レッドビルの提案によって、何十年も終息の見通しがつかないまま政府の監督下で放置されてきた浄化作業の速度が速くなるだろうと話している。彼らが熱く語るのは、廃棄物を別の目的で利用する、鉱業の「循環経済(サーキュラーエコノミー)」だ。

一方で、この町の落ち込んだ鉱業をよみがえらせ、廃棄物の山に手を付けることは、一部の住民や関係者にとっては、汚染された過去に耳を傾けることになる。すなわち、レッドビルの鉱山から出た廃棄物によって川が時々赤く染まり、アーカンソー川で漁をすることが危険であった時代のことだ。

提案されている工場の下流で、釣りができるキャンプ場を所有するブライス・カーシュ(Brice Karsh)は、ニジマスが群がる養殖池に餌を投げこみながら、「この川は、20年前には魚が棲めなかった川なんだ」と述べる。「なぜ過去に戻る? なぜそんな危険を冒すんだ?」

約2600人が暮らし、国際鉱業博物館を擁するレッドビルは、標高1万119フィート(約3084メートル)と、「米国で最も高いところにある町」として自らを宣伝している。この特徴のおかげで、この町はエクストリームスポーツ愛好家たちのメッカとしての新たなアイデンティティを作り上げることができた。近くの丘の斜面には、耐久レースのコースが曲線を描いている。ただしその丘には数百万トンに上る鉱山廃棄物も存在しており、そこから、鉛やヒ素、亜鉛といった有毒金属が染み出して川などに流れ込んだ過去がある。

CJKミリングの推進役となっているのが、38歳になる鉱業ビジネスのベテラン、ニック・マイケル(Nick Michael)だ。彼はこのプロジェクトを、社会に恩返しするための方法と呼んでいる。マイケルは、コロラド州最高峰のエルバート山を背景にしながら、鉱山廃棄物の山の頂上に立ち、これらの破片には、現在全米各地で操業している多くの大規模鉱山よりも高い濃度の金が含まれていると述べる。

「(こうした鉱物を取り出すのは)昔は経済的ではありませんでした」とマイケルは言う。「しかし状況は変わり、現在はこれが経済的になったのです。(中略)私たちは、これらの小さな山をきれいにして、次の山に進むだけです」

市議会議員のクリスチャン・ルナ=リール(Christian Luna-Leal)は、両親がメキシコから移住してきた後、レッドビルにあるトレーラーパークで育ったが、そこの水は、質のよくないものだったという。

貧しいコミュニティは、常に産業の問題の矢面に立たされる、とルナ=リールは話す。レッドビルの初期の時代には、作業の大半を担っていたアイルランド系移民を、鉱山所有者たちが粗末に扱っていたという。地元の墓地には、約1300人の移民(その大半がアイルランド系)が、貧困者用の集団墓地に埋葬されている。

古い採鉱廃棄物に手を付けることによって、数十年に及んだ浄化が元に戻ってしまう危険性があると、ルナ=リールは語る。彼はCJKミリングの計画が再び水を汚染し、住民の暮らしを脅かすことを懸念している(現在の住民の多くはラテンアメリカ系で、町の郊外に設置したトレーラーハウスで生活している)。

「我々のコミュニティの多くが、純粋な不安を抱えています(中略)問題が適切に対応されておらず、我々の懸念がしかるべき真剣さでとらえられていないという不安です」と、ルナ=リールは話す。

CJKミリングのプロセスは、鉱山廃棄物を一掃するわけではない。少量の金が得られるものの、1トンの鉱石を採掘するごとに1トンの廃棄物が残る。1日に400トンのペースで、廃棄物は急速に積み上げられていく。

CJKミリングの当初の計画は、巨大な露天掘りの穴(採鉱跡)を使って、廃棄物を、含水率の高い泥漿(でいしょう、スラリー)中に保管するというものだった。この計画が却下された後、同社は代わりに、廃棄物を乾燥させてパテぐらいの粘度にして、工場の裏にある丘に積んでいくことになった、とマイケルは述べる。露天掘りの穴は、廃棄物の山が崩れたときの緊急貯留場として機能することになる。

世界における採鉱廃棄物の規模は驚異的だ。研究者によると、選鉱くずの山は数万カ所に及び、すべて合わせると2230億トンになるという。さらに、非営利団体ワールド・マイン・テイリングズ・フェイリアーズ(World Mine Tailings Failures)によると、各企業が、これまでよりも等級が低い鉱石しかない場所に、より大きな規模の採鉱所を建設するにつれて、廃棄物の生成が増加し、結果的に、製品に占める廃棄物の割合が大きくなっているという。

一方で、2024年秋の金価格は記録的な高値になり、バッテリーに使われるリチウムなどの重要鉱物の需要は急速に増加している。

複数の環境団体のコンサルタントを務める地球科学者アン・マエスト(Ann Maest)は、経済的に好ましい状態とは、再採鉱が「野火のように広がる」ことを意味する、と述べる。環境団体のアースワークス(EarthWorks)は、鉱業に対しては批判的だが、再採鉱については、民間投資を通じた浄化の速度を速める可能性のある手段として、慎重ながら受け入れている。

CJKミリングは、レッドビルでその実現を手助けできる可能性がある、とマエストは述べるが、それは適切に行われた場合に限るという。「問題は、彼らがシアン化合物を使いたいと思っていることです。シアン化合物や水銀の存在がコミュニティの耳に入れば、当然のことながら、人々は常に非常に心配します」

一方、レッドビルの給水を監督しているパークビル・ウォーター・ディストリクトのゼネラル・マネージャー、グレッグ・ティーター(Greg Teter)は、CJKミリングについて、水質問題に対する解決策になり得ると考えている。

現在の廃棄物の山の多くは、地区の給水源よりも上に位置している。ティーターが思い出すのは、レザレクション鉱山の噴出事故で、住民が水の煮沸を強いられたことだ。地区の処理工場が、泥や残渣を処理できなかったためだ。

さらに絶え間なく繰り返されるのが、春と夏に発生する汚染水の流出だ。これは、モスキート山脈からの雪解け水が、鉱山廃棄場や、放棄された鉱山を洗い流すことで発生する。

連邦政府の記録によると、レッドビルのスーパーファンド・サイト(危険物質で汚染された地域の調査と浄化を行うスーパーファンド・プログラムの対象に指定された場所)からは、1分ごとに平均で694ガロン(2627リットル)の汚染された鉱山水が流出している。ほとんどは、現場で貯蔵されるか、米国開拓局が運営する処理施設などに送られる。

これらの水のうち、最大10%は処理されない。米国環境保護庁(EPA)の記録によると、年間で数千万ガロンの水には、推定6トンの有毒金属が含まれているという。なお、2015年にコロラド州のゴールドキング鉱山で起きた、3州の河川を汚染した事故では、EPAの浄化作業員が手違いにより、1140万リットル(300万ガロン)に上る辛子色をした鉱山廃棄物の放出を引き起こした。

レッドビルに廃棄物の山が残っている限り、それらによる汚染の可能性は続く。

ティーターは、「文字通り数千件に及ぶ鉱山所有権が、相互に重なり合っています」と説明する。「我々は、処理されていない水が、我々の水の供給に入り込むことを望んでいません。現状では、すべての鉱山廃棄場が(中略)我々の流域と、我々の流域の上流にあります。そしてそれらが工場に運ばれて再採鉱された場合、その廃棄物は我々の流域の下流になります」

EPAの広報担当者リチャード・マイロット(Richard Mylott)によれば、EPAにはCJKミリングが提案した作業に関する権限はないが、この計画には、すでに行われた浄化作業を補足し、「その場所の状況を改善する可能性」が存在すると述べる。採鉱廃棄物の移動によって流出源がなくなり、処理する汚染水の量が減る可能性がある、というのだ。

ロッキー山脈における再採鉱の他の例としては、モンタナ州のイーストヘレナとアナコンダ、ユタ州のミッドベールがあると、マイロットは言う。サウスダコタ州のギルトエッジと、コロラド州のクリードでも、プロジェクトが提案されているという。

レッドビルでは歴史的な採鉱に起因する混乱があったわけだが、パークビル・ウォーター・ディストリクトのティーターは、鉱山業界と自分のつながりについて、誇らしげに話した。彼は、現在は閉鎖された2カ所の鉱山で働いていたほか、義理の息子も、近くの鉱山で働いているという。

「採鉱がなければ、レッドビルはここに存在しなかったし、私もここにいなかったでしょう」とティーターは述べる。

「我々の流域に、現在操業中の鉱山はひとつもありませんが、私はCJKミリングが計画していることに自信を持っています」とティーターは述べる。「そして私は、彼らの行動を監視し続けることができるでしょう」

この記事は、Fast CompanyでAssociated Pressが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。