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シリコン・アノードへの短時間の電圧印加により、シリコン負極リチウム電池の容量回復の可能性を発見

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シリコン・アノードへの短時間の電圧印加により、シリコン負極リチウム電池の容量回復の可能性を発見

スタンフォード大学のエンジニア、化学者、材料科学者で構成されたチームが、シリコン負極リチウム電池の複数種類のアノード(負極)に短時間電圧を加えることで、電池容量をある程度回復できることを発見した。学術誌『Science』に2024年10月17日付で掲載された論文において、この研究グループは、数種類のシリコン・アノードに電荷を加えて実施した電池の実験について説明している。

中国にある浙江工業大学のChengbin Jin氏とXinyong Tao氏も、このチームが行った研究の概要について、同誌の同じ号の「Perspective(展望論文)」セクションで公開した。

よく知られているように、リチウムイオン電池の寿命は短い。充電と放電を何度も繰り返すと、蓄電能力が徐々に低下し始め、ほぼ使い物にならなくなって交換が必要になる。そのため一部の電池メーカーは、シリコン・アノードを利用する可能性について研究を始めている。

そして、このアイデアの人気が高まる可能性が出てきた。スタンフォード大学の研究チームが、複数種類のリチウムイオン電池において、アノードに5秒間、電流を直接流すことで、容量の一部を回復できることを発見したからだ。

シリコン・アノード電池は、他の材料で作られたものよりもエネルギー密度が高いため、容量が大きくなる。ただし残念ながら、使用するうちにシリコンの一部が断片化し始め、容量が減少してしまう。これは断片化が、リチウムで部分的に満たされたシリコンの孤立した塊を形成するためだ。こうした塊は小さな島のようなもので、電荷の保持には役立たない。

今回の新しい研究で、研究チームは、アノードに直接電気を流すことで、孤立した塊の一部がアノードに引き戻され、再び電荷を保持できるようになることを発見した。アノード充電をテストした後、研究チームは、純粋なシリコン・アノードを持つ電池のテストを実施した。すると、アノードに直接電気を流すことで、容量の一部が回復したという。

彼らの実験では、流す電気を増やすほど、多くの容量が回復することが判明したが、限界もあった。電気を過剰に流すと、電解質が劣化するのだ。また、電圧を加える時間の長さを変えることが、容量の回復に影響することも明らかになった。最終的には、4ボルトの電圧を5秒間加えると、容量が30%増加し、最も優れた成果が得られることがわかったという。

詳細情報:Yufei Yang et al, Capacity recovery by transient voltage pulse in silicon-anode batteries(シリコン・アノード電池における過渡電圧パルスによる容量回復)Science (2024). DOI: 10.1126/science.adn1749
Chengbin Jin et al, Electric pulses rejuvenate batteries(電気パルスによる電池の再生)Science (2024). DOI: 10.1126/science.ads9691

※メイン写真:20サイクル目の4V5sパルス印加後のシリコン電極とリチウム金属電極(走査型電子顕微鏡写真)。シリコンとリチウム金属の両方で、リチウム金属にめっきの兆候は見られない。画像クレジット:Science(2024). DOI: 10.1126/science.adn1749

この記事は、Tech XploreのBob Yirkaが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。