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エネルギー転換に必要な「責任ある鉱業」とは
- 再生可能エネルギーを主流にするためには、重要鉱物や重要金属の大幅な増加が必要になるが、これらは、現在の化石燃料に基づくエネルギーシステムと比べると、資源集約的にはならないだろう。
- 鉱業は、影響と恩恵が膨大な業界であるだけに、「社会的な操業許可」を得て、これを維持する必要がある。
- 責任ある鉱業を目指す企業は、増えつつある国際標準とガイドラインに目を向けることができる。
社会が再生可能エネルギーに転換するためには、リチウム、銅、マンガン、希土類元素のような重要鉱物や重要金属の需要が増加する。エネルギー転換で必要とされる主要鉱物の市場は、すでに過去5年間で倍増している。クリーンエネルギー技術におけるこれらの材料の総需要は、2040年までに2倍から4倍のあいだで増加することが予想されている。
継続的な成長には、さらに多くの原料の採鉱が必要になる。とはいえ「完全にグリーンエネルギーで賄う世界」を2040年までに構築するために必要な採取量は、化石燃料に基づくエネルギーシステムを維持するために必要な量と比べると、はるかに少ない。さらに、化石燃料からのエネルギー生産においては、燃焼させるために途切れのない供給の流れが必要であり、リサイクルもできないが、エネルギー転換に用いられる重要材料は、何年も使用できる装置に取り付けられ、製品寿命が終わるとリサイクルできる。したがって、再生可能エネルギーへの転換は、採取される材料の削減につながるが、その一方で、これらの金属を責任あるかたちで採鉱することが重要になる。
他のほとんどの材料と比べて、絶対的に需要が多く、さらに需要が増加している主要金属のひとつが、銅だ。これは、その広範にわたる用途、特有の導電性、電動化技術の至るところで使われていることによる。そのため、世界の平均気温上昇を摂氏1.5度に抑えるという目標の下では、銅の年間需要は、現在の2500万トンから、2050年には5510万トンに増加することが予想されている。デマンドギャップを抑制し、気候危機による最悪の影響を回避するためには、新たな供給体制が必要になる。
金属の入手可能性
良いニュースとしては、多くの金属の必要量が、その既知の採鉱場所が地理的にうまく分散していることが挙げられる。銅については、チリ(23.6%)、ペルー(10%)、コンゴ民主共和国(10%)、中国(8.6%)、米国(5.9%)と、その他のいくつかの国に分散している。
短期的には、銅をはじめとするほとんどの金属は、主に、現在それらを採鉱している同じ国から得ることになるだろう。なぜなら、新しい商用採鉱事業を開くには、一般に10年以上を要するからだ。健全な投資条件とインフラを備えた新しい採鉱場所を見つけることには時間がかかる一方で、処理能力については、それよりもかなり早く、地理的に分散させることが可能だ。米国と欧州連合(EU)は、国内における採鉱事業の開発を促進させるための新しい構想と標準に着手するとともに、新たな供給を構築するために、他の国々との戦略的パートナーシップの確立を進めている。
社会的な操業許可
採鉱は、広大な土地を破壊して、生物多様性や生態系に影響を与える可能性がある。さらに、大量の水を使用し、尾鉱(選鉱後に残る低品位の鉱物)を生じさせる。時には、人間と環境の健康に大きな影響を与える大惨事も発生してきた(例えばブラジルでは、2015年に採鉱会社サマルコ[Samarco]が所有する鉱山で、2019年にはブルマジーニョで、尾鉱を溜めていたダムが決壊した)。
場合によっては、採鉱と処理の両方において、環境及び人間の健康にとって害になる排出物が作り出されることもある。採鉱は、本質的に地域的な活動だ。つまり、鉱床の場所を変えることはできず、鉱山の大部分は、先住民族の居住地や、地域社会の中や、隣接した場所にある。再生可能エネルギーへの転換に必要な金属については、50%を少し超える量が、先住民族が暮らす土地、あるいはその近くに存在する。
健康と安全、雇用と調達の機会、そして、地域住民や先住民族の権利の保護は最も重要となる。これらの問題が適切に扱われなければ、影響を受ける地域社会で抵抗が生まれる可能性が生じる。
責任ある鉱業
責任ある鉱業を行うための第一の方法は、確固とした内部管理システム、強力な企業統治、対話と苦情に向けて適切に確立されたプロセスを通すものであり、もうひとつは、社会的に認められた標準について、外部による保証体制を導入し、実施することだ。
現在運用されている標準は、多数存在する。例えば、カナダ鉱業協会の「持続可能な鉱業に向けたプログラム(Towards Sustainable Mining programme)」は、生物多様性、気候変動、危機管理、鉱山閉鎖、先住民族や地域社会との関係などを取り扱っている。
もうひとつの標準は、「責任ある鉱業保証のためのイニシアチブ(Initiative for Responsible Mining Assurance:IRMA)」だ。マルチステークホルダーによる委員会によって作成され、南米とアフリカで実施されている。最後の例としては、「CopperMark」が挙げられる。銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛のバリューチェーンにおける、責任ある実践を促進するための、独立した保証の枠組みだ。
これらの標準は、取り組み方法はそれぞれ異なるが、世界中の鉱業の状態を改善するという同じ目的を共有している。評価の方法にかかわらず、エネルギー転換に向けた責任ある鉱業へ向かうひとつの基本的な側面は、透明性と報告であり、その方法を示すために、鉱業の新しいGRI標準も作られている。
金属のエンドユーザーも、サプライチェーンの透明性を高め、責任ある鉱業運営を促すことによって、さらに責任ある実践に向けた行動に取り組むことができる。各企業も、循環型資源の利用を増やすために取り組んだり、革新的なソリューションに関する研究開発を支援したりできる。デンマークの電力会社オーステッド(Ørsted)と、カナダの天然資源会社テック(Teck)は、こうした行動を支援し、バリューチェーンのさまざまな領域や異なる部門を超えて他と協力し、「社会的な操業許可」の強化を支援している。
この記事は、World Economic ForumのBenjamin Gibson, Joel Frijhoff and Katie Fedosenkoが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。
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