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「金のサンドイッチ」が生み出す、次世代のエネルギー革命
Published on September 13th, 2018 | by Steve Hanley
September 13th, 2018 by Steve Hanley
北海道大学電子科学研究所(Research Institute for Electronic Science at Hokkaido Uni-versity)の研究チームは、太陽光の85%を電気に変える光電極「金のサンドイッチ」を開発した。本記事では、まだ実験段階にあり商業生産には至っていないこの技術が、再生可能エネルギー革命にとってどのような意味を持つ可能性があるかを考察する。
北大が開発したこの革新的技術は、未来の太陽電池の発電効率が現行電池の5倍になる可能性があることを示唆している。この技術の製品版の価格がどのぐらいになるかはもちろんまだ分からないが、すべての太陽光発電設備から、ゼロエミッションの電力が今より5倍多く得られると想像してみよう。その影響は計り知れないほど大きい。
では、金のサンドイッチを作るための秘伝のレシピとはどのようなものだろうか。それは、厚さわずか30ナノメートルの二酸化チタン膜を、金ナノ微粒子と、厚さ100ナノメートルの金フィルムとで、上下からサンドイッチするというものだ。
金ナノ微粒子側に太陽光が当たると、下部の金フィルムが鏡として働き、上下2つの金の層に挟まれた隙間に光を閉じ込める。ナノ微粒子が、発電に利用できる光をより多く吸収する助けになるこの仕組みは、驚くほど高い電力変換率を実現する。
英科学誌『ネイチャー・ナノテクノロジー』に掲載された、今回の発見について報告する論文(有料コンテンツ)の中で研究チームは、金ナノ微粒子が、特定の波長域の光を吸収する「局在プラズモン共鳴(localized plasmon resonance)」として知られる現象を示すと指摘している。
論文主執筆者の三澤弘明教授は、「われわれが開発した光電極は、酸化チタン層内に閉じ込められた可視光とプラズモン(金属中の自由電子が集団的に振動して擬似的な粒子として振る舞っている状態)が強く相互作用する、新しい状態を形成することに成功した。これにより、幅広い波長の光を金ナノ微粒子に吸収させることが可能になる」と説明する。「金フィルムを成膜していない金ナノ微粒子/酸化チタン電極と比較すると、約11倍高い光電変換効率が得られています」。
さらに今回の研究は、水を水素と酸素に分解する光電気分解においても、同様に革新的な進歩をもたらす可能性がある。水素は、未来のクリーンエネルギー経済で重要な要素となる可能性があるが、現在市販されている水素の大半は天然ガスから抽出されたもので、天然ガス自体はフラッキング(水圧破砕法)によって生産される。水素が、不自然な方法で抽出される天然ガスに依存している限り、クリーンエネルギーでの活躍は見込めない。
研究チームは論文の結論として、「この光電極は、極めて少ない物質量で太陽光を再生可能エネルギーに効率的に変換することを可能にする。持続可能な社会の実現に向けてさらなる貢献を果たすものだ」と述べている。炭素の排出によって一層大きなストレスにさらされている地球環境にとっては、早急な実現が望まれる。
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著者について
Steve Hanleyは、技術と持続可能性が交差する領域の記事を執筆している。自宅は米国ロードアイランド州だが、「シンギュラリティ(技術的特異点)」がもたらされる場所ならどこへでも赴いて記事を発信している。執筆意欲の源は、チャールズ・クラルト(20世紀アメリカのジャーナリスト)の言葉だ。「前方の道が曲がり角にさしかかっているのが見える。あの角を曲がると何があるのだろう」
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この記事は、CleanTechnicaのSteve Hanleyが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。