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グレー水素、グリーン水素、ブルー水素、違いを徹底解説

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水素エネルギーはここ数年、クリーンエネルギーへの移行において次第に中心的な役割を担うようになってきている。水素は需要に応じてクリーンエネルギーを生み出せるため、風力や太陽光などの変動性再生可能エネルギー源を補完できるからだ。とはいえ、水素を産業規模で利用する道筋は、まだ十分に開かれてはいない。特に、水素製造の最適な形はまだ明確になっていない。

マサチューセッツ工科大学(MIT)エネルギー・イニシアチブの研究員、エムレ・ジェンサー(Emre Gencer)と、世界の幅広い学術研究機関の研究者たちは2021年11月、「ブルー水素」の包括的なライフサイクルアセスメント(LCA)分析「On the climate impacts of blue hydrogen production(ブルー水素の製造が気候に与える影響について)」を発表した。ブルー水素とは、炭素の回収と貯留を行ったうえで、天然ガスから製造された水素のことだ。以下では、ブルー水素に関するジェンサーの解説を紹介し、世界のエネルギーシステムの脱炭素化においてブルー水素が果たす役割について説明する。

Q:グレー水素、グリーン水素、ブルー水素の違いは?

A:水素の使用時に炭素が直接排出されることはないが、水素の製造は、環境負荷が大きいものになる可能性があり、水素を形容する色が、その製造方法や環境負荷における違いを表すために使われることが増えている。現在、水素製造の95%近くに化石資源が使用されている。その結果、水素製造による二酸化炭素(CO2)排出量はかなり多くなっている。グレー水素、ブラック水素、ブラウン水素は、化石資源を使った製造を意味する。グレー水素は最も一般的な製造方法で、原料は天然ガス、つまりメタンだ。メタンと水蒸気を反応させる水蒸気改質法で水素を製造するが、このときCO2の回収は行っていない。

よりクリーンな水素製造に移行するには2つの方法がある。その一つが、化石資源を使った製造方法に炭素の回収・貯留を組み合わせるものだ。天然ガスを原料とし、炭素を回収・貯留する水素製造はブルー水素と呼ばれる。天然ガスから水素を製造するときに発生するCO2のうちかなりの部分を回収し、永続的に貯留できれば、そのような水素は低炭素なエネルギーキャリアになり得る。よりクリーンな水素を製造するための第2の方法は、電気を使い、電気分解によって水素をつくるものだ。この場合、電気の供給源が水素の環境負荷を左右する。風力や太陽光などの再生可能エネルギー源で発電すれば、環境負荷が最も小さくなり、これがグリーン水素と呼ばれている。

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水素の色は、製造方法の違いによる区別や、環境負荷を表す代用として使われることが多くなっている。天然ガスを原料とし、二酸化炭素を回収・貯蔵する水素製造は、ブルー水素と呼ばれる

Q:ブルー水素をはじめとする低炭素エネルギーシステムのLCAで、どのようなインサイトが得られたのか?

A:気候変動を緩和するには、世界経済の大幅な脱炭素化が必要だ。温室効果ガス(GHG)の累積排出量と排出削減方法を正確に推定することは、排出源にかかわらず重要なことだ。LCAを用いれば、商品、プロセス、サービスが、ライフサイクルの全段階(誕生から廃棄まで)で環境に与える影響を定量化できる。代替エネルギーの経路、燃料の選択肢などをLCAに基づいて比較すれば、低炭素エネルギーを同一条件で比較できる。低炭素水素の文脈では、サプライチェーンの選択が温室効果ガス排出量に与える影響を理解することが不可欠だ。製造方法によって、ライフサイクルの各段階が総排出量に与える影響は変わりうる。

例えば、天然ガスを原料とする水素製造の場合、天然ガスの漏えいや燃焼の割合を考えると、天然ガスの製造や輸送に伴う排出が、総排出量に大きく寄与する可能性がある。これらの割合を正確に把握しなければ、ブルー水素の環境負荷が過小評価される恐れがある。ただし、これは電気を使った水素製造にも当てはまることだ。電気が風力、太陽光、原子力などの低炭素エネルギー源から供給されていない場合、水素の炭素強度(carbon intensity:国内で排出される二酸化炭素量を、一次エネルギー総供給で割った値。別名、炭素集約度)が大幅に過小評価される恐れがある。また、原子力の場合、考慮すべき環境への影響は他にもある。

LCAは、システム境界が一貫性のあるかたちで実行されれば、環境負荷の正確な比較を行うことができる。ただし、これらの推定は、測定による裏付けがない限り、使用した仮定や相関と同程度の精度しかないことは指摘されるべきだ。

Q:ブルー水素の製造を最も効果的なものにするには、どのような条件が必要か? また、他の脱炭素化手法をどのように補完できるのか?

A:水素は、排出量削減が難しい大型輸送車両などのセクターで、脱炭素化の鍵を握ると考えられている。今のところ、全世界の水素製造の95%以上で化石燃料が使用されている。今後10年間で予想される需要を満たすには、大量の水素を製造する必要がある。こうした需要について、既存の生産資産を活用せずに応えるのは、不可能ではないにしても非常に難しい。すぐに実行可能で、コスト効果が比較的高い選択肢は、既存のプラントに炭素回収・貯留を組み込むことだ(つまり、ブルー水素)。

ブルー水素の環境負荷には大きな幅がある可能性はあるが、影響を与える重要なパラメーターは多くはない。具体的には、天然ガス・サプライチェーンのメタン排出率、水素製造プラントのCO2除去率、そして、地球温暖化の指標だ。CO2回収率の高い最新の水素製造手法と、メタン排出量の少ない天然ガス・サプライチェーンを組み合わせれば、天然ガスを使って水素を製造する従来の方法に比べて、温室効果ガス排出量を大幅に削減できる。

これらの条件が満たされた場合、ブルー水素は低炭素経済に適合性があり、「再生可能エネルギーを供給源とする電気を使った水素製造(グリーン水素)」と比較した場合、ぎりぎりではあるものの、気候変動への影響は同等になる。ただし、現在の製造方法では、さらにCO2を削減しない限り、ブルー水素もグリーン水素も完全な「ネットゼロ」の水素とは言えない。

この記事は、MITエネルギー・イニシアチブが発行する雑誌『Energy Futures(2022年春号)』に掲載された。
研究論文:On the climate impacts of blue hydrogen production

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。