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田中貴金属工業の挑戦~自動車と半導体で一気拡大の戦略~③最強のボンディングワイヤー

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2021年3月1日 電子デバイス産業新聞

半導体業界は、新型コロナウイルス禍にあっても、これをものともせず伸び続けている。2020年は5%の成長を遂げており、21年についても10%以上の成長は確実と言われている。その最大のポイントは、5G高速の進展によるデータセンターの大型投資である。そしてまた、テレワーク加速、ゲーム機の一大ブーム、さらには家電の復活などが拍車をかける。今後は、不足している車載半導体への対応、そして大型市場のスマホの復活なども加わることで、半導体産業はこの数年間、空前の活況に入っていくだろう。
「こうした状況下で、半導体後工程分野においては、最先端のフリップチップやWLPなどよりも、ワイヤーボンディング工程などのレガシープロセスの生産状況がより逼迫している。台湾ASEなどは、能力増強のため1000台以上のワイヤーボンダーを発注したとの一部報道も出ている」。
こう語るのは、電子デバイス産業新聞の稲葉雅巳副編集長である。確かに、日本のみならず、台湾や韓国の基板各社は増産投資を急ピッチで進めており、パッケージ基板も足りなければ、ワイヤーボンダーも足りないというすさまじい状況になっているのだ。

「金」は世界シェア40%、銅にも展開
さて、ボンディングワイヤーという分野において、田中貴金属工業は、確固たる地位を築いている。同社は、50年代から当時の通産省の要請で、10ミクロンmの金細線の開発に着手した。創成期の量産体制構築においては、三井金属鉱業との合弁会社となる田中電子工業を設立した。70年代後半にはシンガポールをはじめとした海外拠点の展開を図るなど、半導体ボンディングワイヤー黎明期にリスクを取り、この市場に本格的に乗り出していった。量産開始から約60年が経つ現在もボンディングワイヤー事業は半導体カンパニーとして田中電子工業(国内生産拠点は佐賀工場)が担っており、金線のボンディングワイヤーについては、ワールドワイドで40%のシェアを持つという圧倒的な強さなのである。


ボンディングワイヤー製造で世界ナンバー1

「ボンディングワイヤーについては、常に進化する半導体技術の最先端にマッチした確かな製品を届けている。お家芸ともいうべき金ボンディングワイヤーに加えて、金合金、銅、アルミ、銀合金、アルミシリコンなど顧客の用途に応じた総合ラインナップを進めている」。
かつて取材した折に、田中貴金属工業の取締役専務である平野伊三夫氏は、力強い口調でこう語っていた。そしてまた、顧客に必要な量の供給についても常に配慮し、増強を重ねている。
とにかく世界最強と言われる金ボンディングワイヤーは、DIP、SIP、QFP、BGA、FBGAなどに至るまでの様々な形態のパッケージに対応している。スタックドパッケージや超薄型パッケージにも強い。高強度タイプの金を使用しているため、細線化によるコストダウンが可能であり、ファインピッチ対応も十分なのである。
そして一方で、コストダウンを図れる銅ボンディングワイヤーについても、きっちりと取り組んでいる。大手OSATを中心に、提案の強化を図っており、材料費90%カットを実現できる技術を前面に押し出している。そしてまた、銀合金のボンディングワイヤーも製品化し、採用実績も徐々に増えてきている。このタイプは、ボンディング性は金に近く、コストは銅に近いという特徴を持ち、とりわけLEDパッケージでの採用が進んでいるのだ。そしてまた、銅に金やパラジウムを被覆したPCCワイヤーも開発し、金ボンディングワイヤーの廉価品として様々なパッケージに採用され、近年では高信頼性を要求される車載向けパッケージにも採用が進んでいる。

パワーデバイス対応の新技術駆使!!
「データセンター投資が急増するのは、時代状況として必然性のあることだ。しかして問題は消費電力なのである。何しろ世界の全消費電力の3%以上を使ってしまうわけであり、中長期的には10%まで使うという予測もある。電力が足りない状況で、これがボトルネックになる。こうなれば、パワーデバイスによる電力制御がどうしても必要になる」。
こう語るのは、半導体業界の名アナリストとして知られる南川明氏である。南川氏によれば、ボンディングワイヤーの世界においても、パワー半導体向けの新たな開発がこれから必要になってくると指摘する。
田中電子工業では、パワーデバイス用のボンディングワイヤーについても、高信頼性アルミワイヤー、銅太線などの開発と量産に力を入れている。とりわけIGBTなどパワー半導体モジュール向けでデファクトとなっている太線アルミワイヤーでは、世界市場の半分以上を占有している。日本ではほぼ100%のシェアを確保しているのだ。
IGBTなどパワー半導体の電極部の主要配線材には、太線アルミが採用されており、田中電子工業は100~500ミクロンm径で幅広いラインアップを持っている。また、アルミリボンタイプのボンディング材料は、ティア1や完成車メーカーで採用気運が拡大している。田中電子工業の製品は断面形状が丸みを帯びており、他社製品と比較してもリボン形状への加工時のバリ発生が無く、生産性が高く維持出来るのが特徴と言われている。
さらには、ボンディングワイヤー以外において、田中貴金属工業では、ダイアタッチ材料の焼結接合材の開発にも注力しており、成長の著しいパワーデバイス市場へ全社を挙げたアプローチを掛けている。こうしたパワー系の生産ならびに研究開発拠点は、湘南工場(神奈川県)が担っている。
時代が要求する性能や品質、設備に応じた仕様に向けた開発を必要とするパッケージのカスタマイズが進んでおり、今後も田中貴金属工業の材料の組成技術の追求に終わりはない、と言えるだろう。

(特別編集委員 泉谷渉)

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