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〔触媒〕今、必要なのはリサイクル

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燃料電池自動車は、必要な電流を自ら作り出す。必要とされる水素の充填は、従来の内燃機関車両への燃料補給と同様にスピーディに行われる。
photo: Shutterstock 1871606383


Industrieanzeiger 2021年6月22日

田中貴金属の触媒膜の開発により、水素燃料電池における電解質膜の耐久性を4倍に高めることができます。排ガス浄化触媒にも同社の貴金属が使われています。より持続可能性を追求することで、田中貴金属は既に必要量の白金等の25~30%を触媒のリサイクルによって調達しています。今後数年間の目標は明確に示されており、リサイクル率は上昇するでしょう。- 文: ベルント・ミュラー:フリー・テクニカルライター、ボン近郊メッケンハイム在住

触媒がなければ、持続的な未来は考えられない。非常に多くの期待が寄せられている水素経済も、触媒なしでは成し遂げられない。水素を電流に変換する燃料電池は、よく知られているように、水素を空気中の酸素で燃焼させ水に変える。これによりエネルギーが発生し、電動モーターに供給され車両を駆動させるのだ。化学反応は、触媒をコーティングした膜上で行われる。ここ数年で大きな進歩があったものの、まだ克服すべき課題が残っている。その一つは、高分子電解質膜を備えた燃料電池の電解質膜の耐久性だ。

劣化原因を「減少」させ、耐久性を「向上」
田中貴金属はこれをナノ粒子/炭素触媒用の白金‐コバルト合金触媒によって解決させた。貴金属の使用量が少なく、電解質膜の劣化の原因となる過酸化水素の発生を半減させる、燃料電池にこの触媒を用いることにより、市販の白金水素極触媒を使用した場合と比較すると、電解質膜の耐久性を4倍以上に高めることができる。
本田技研工業は性能と耐久性を評価し、田中貴金属の触媒を自社の燃料電池車両:クラリティに採用することを決定した。
田中貴金属工業株式会社 取締役常務執行役員 新事業カンパニー プレジデント(取材時) 庄司 亨氏は「この新たな触媒に関する研究開発の加速」を目的に、既に3000万ユーロを投じて
敷地面積3000㎡の製造・出荷棟を増設、生産能力を7倍に増強したと語る。


「未来」に向けて
この貴金属専門企業は単に触媒を製造しているだけではなく、複数の企業の開発パートナー企業としても役立っている。同社は特にドイツとヨーロッパには非常に大きな可能性があると考えている。
田中貴金属インターナショナル(欧州)GmbHのマネージングディレクター 湯浅 健氏は 「触媒の開発段階で企業を支援したい」と語る。
燃料電池と水素社会の可能性と展望を示すため、田中貴金属は水電解に関する研究開発を促進する新たな取り組みを始動させている。水素を作り出すためには、燃料電池の逆、つまり電解槽が必要だ。電解槽は水を水素と酸素に分解し、まさに燃料電池とは逆方向に働くのだ。水電解は触媒をコーティングした膜(
CCM:Catalyst Coated Membrane)によって行われる。この新たな取り組みにおいて、水電解電極触媒評価用CCMのサンプル提供を開始している。

排ガス浄化は今後も問題に
確かに電気自動車や燃料電池自動車は未来を語るものだ。しかし、内燃機関自動車は少なくともこれから10年間は ― 多くはハイブリッド車として ― まだ製造され続けるので、特に、規制がますます厳しくなっている当地(ドイツ)では排ガス浄化は依然として問題であり続ける。
これに伴い、触媒に使用される貴金属の白金、パラジウム、ロジウムへの需要が指数関数的に増加している。これらの物質に代わるものが存在しないからだ。このため再三にわたって原料取引において激しい価格変動が引き起こされている。特に白金とパラジウムでは、デリバティブを取引する投機家によって価格が部分的に決定される市場もある。これはメーカーにとっては問題だが、それだけには留まらず、全ての関係者を苛立たせ、供給上の制約につながりうるのだ。このことは持続的技術への転換が遅れる要因になりえるという点において致命的であるように思われる。

触媒は燃料電池内の化学反応を促進するが、消費されることはない。
田中貴金属は触媒に含まれる貴金属をリサイクルし今日では必要量の25〜30%をカバーしている。


触媒のリサイクルが注目の的に
激しい価格変動に対処するための一つの方法は、リサイクルだ。田中貴金属では既に1980年代後半より自動車分野の排ガス浄化触媒のリサイクル事業に参入している。触媒を搭載した最初の自動車が、その寿命に達した時期からこの事業に参入しているのだ。
理論的には、使用された貴金属の全量を触媒のリサイクルによって回収することは可能だ。触媒は、化学反応を加速するものの、消費されることはないからだ。前述3つの貴金属の処理が金や銀の処理より費用がかかるのは、それらが触媒中には非常にわずかな量しか存在ためだ。これらの回収プロセスでは破砕された材料を溶解し、次に貴金属を銅製の回収器に吸着させ、銅を再び除去する。
田中貴金属では現在必要量の25~30%を触媒の回収によって調達している。この割合を今後数年で高めることが求められており、同社は40~50%は現実的な数字であると考えている。「当初は市場価格の変動に左右されないようリサイクル事業を開始しましたが―」、同社の事業戦略担当マネージャーのアンドリュー・ファリー氏は「今日では我々が資源を無駄にしない技術を開発していることのみならず、この事業自体を持続的に運営していることを示しています」と語った。

お問い合わせ:
Tanaka Kikinzoku International (Europe) GmbH
Kirchnerstr. 6
60311 Frankfurt/M.