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田中貴金属 半導体前工程 ルテニウム成膜 適用へ

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2021年9月24日 化学工業日報

田中貴金属工業は、半導体前工程用にルテニウム成膜材料の実用化を進める。ALD(原子層堆積)/CVD(化学的気相体積)用の前駆体材料(プリカーサー)で、先端ロジックのコンタクト配線層やDRAMのキャパシター電極で試作評価が進行。ロジックのナノメートルノードなど次世代品以降を念頭に材料開発を推進する。リサイクル技術も並行して確立し、持続可能なプロセスとして数年後の量産適用に備える。
金属種や線径などフルラインアップを持つ強みを生かし、銅の採用が始まるパワー半導体に加えて次世代通信、車載など成長市場を捉える。リチウムイオン2次電池(Lib)などの非デバイスや、ワイヤー技術を生かした新領域開拓も推進する。世界5拠点体制によるBCP(事業継続計画)確保も生かし、長期的に右肩上がりの世界市場を捉えていく。

前駆体材料(プリカーサー)

ロジック・DRAMで有望視
最先端の半導体では配線の低抵抗化や立体構造対応などが求められており、従来のアルミや銅、コバルトに加えてルテニウムの利用が注目されている。同社は材料開発、量産技術確立を進めており、複数種類でサンプルワークを推進。基幹となる材料の開発と用途に応じたカスタム化の両面を進めている。
「ロジック向けでは、トランジスターと多層配線をつなぐコンタクト配線での評価が進行。現在はライナー層への適用が有力視されているが、銅配線の上部に析出させるキャップ材としても注目されており、まずはライナー層、次にキャップ材のルテニウムの適用を期待する。絶縁層となる低誘電材料(low-K)に反応せず銅配線上のみ析出する選択性など、必要仕様に応える材料開発を推進する。
DRAM向けではキャパシター電極で研究が進行。窒化チタンをルテニウムに置き換えることで誘電体特性の向上が報告されており、ルテニウム導入の気運があるという。電極層は薄膜になるためALDの利用も想定する。またEUV(極紫外線)の導入など細線化も進むことから、DRAMの配線層へのルテニウム導入も念頭に置く。量産ラインへのルテニウム導入はロジック向けからを想定する。
ロジック向けは低抵抗、DRAM向けは立体形状への適用や高いアスペクト比などロジックと異なる要求があり、大学などとの連携やサンプルワークを通じたニーズ把握も進める。韓国・嶺南大学校との共同開発も継続し、ロジック、DRAMの両面で「いつでも量産供給ができるように準備を整えていく」(同社)方針。ルテニウムは年間20〜40程度用いられ、主用途のソーダ電解電極に加えて燃料電池の触媒、ハードディスクドライブ(HDD)の磁性層下地層・磁性層合金などに利用の幅が広がっている。ロジウムはプラチナやパラジウムと合わせて採掘されるバイプロダクト元素で、安定供給性も課題になっている。
リサイクル技術も重視する。既存用途で培った貴金属の回収や精製を行うリサイクル技術を応用することで、グリーン供給や調達価格平準化などにつなげる。まずは成膜時のリサイクルを想定するが、埋め込み工程など関連工程での連携も視野に入れる。競合に対して、材料だけでなくライフサイクルマネジメント・持続的利用においても差別化し、新たな貴金属の用途先として事業化につなげていく。
(佐藤大希)