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GX推進やEV普及を支えるパワー半導体の進化。その土台を支える素材開発の現状に迫る
生成AIの普及による電力消費をパワー半導体が抑える
安部:付け加えるとすれば、エネルギー削減という大局のニーズもありますか?
南川:そうですね。世界中で電力削減は喫緊の課題です。特にモビリティのEVシフトは重要です。
EVの動力であるモーターを制御するパワー半導体の需要が今、急増しています。特に中国が世界のEV市場を牛耳ろうと動いていることも拍車をかけています。
2030年には、新車販売におけるエンジン駆動とモーター駆動の比率は凡そ半々になると予測しています。
EV成長率は少し鈍化していますが、その分をHVやPHEVがカバーしているので、xEV(電動車)トータルの予測としてはあまり変わらないと思います。
ちなみに普通の内燃機関のクルマの半導体搭載金額は、1台あたりで約600ドル(9万円)程度、最近のテスラなどのEV車は、だいたい1600ドル〜2500ドルと3〜4倍にもなります。動力のモーター化とADAS等による電装化がその要因です。
安部:モビリティ以外のパワー半導体の動向について、用途や市場ニーズをお教えいただけますか。
南川:モビリティに次いで期待されている市場が再生可能エネルギーです。例えば太陽光発電の送電や電力貯蔵の際に必要なパワー半導体がコンバーターです。また今後期待されるマーケットとして、クルマ以外のモビリティ、例えば飛行機や船も内燃機関からモーターにシフトする流れが出るでしょう。
さらに、スマートホームやスマートビルディングも有望です。家やビルの機能をスマート化してCO2と使用電力を削減する、その際もパワー半導体が活躍します。
センサーで感知して、無人になれば照明を落としたり、エアコンの温度設定を自動的に調整したりといった具合です。
安部:それは身近な話題です。
余談ですが、2024年4月に移転した田中貴金属グループの新社屋は、従来の建物で必要なエネルギー消費量の51%削減が評価され「ZEB(Zero Energy Building) ready」の基準をクリアした建物なんですよ。
安部:最近電力消費量で話題のデータセンターの動向についてお伺いできますか。
南川:大切なポイントです。生成AIはインターネットが導入されたときと同じぐらいのインパクトがあると言われています。インターネットによって我々の生活や仕事の仕方も大きく変わりましたが、それと同じようなことが起こると思われます。
現在GAFAM(Google、Amazon、Meta 、Apple、Microsoft)は生成AIのサービスを一般に使えるレベルにするために、自社のデータセンターで膨大な学習をしています。
例えば学習用のAIデータセンター1棟で、原子力発電所の約半分の電力が使われています。おそらく今後2〜3年がデータセンターの建築ラッシュになる見込みです。現在、世界全体の消費電力の約5%がデータセンター向けですが、2030年頃には約8%まで上がると予測されています。
3%の上昇は決して小さいものではありません。電力の需要と供給のバランスの余裕がなくなると、停電が起こりやすくなり、各国に影響が出てくるでしょう。だからこそ、電力削減は重要な技術課題なのです。
安部:生成AIの学習は、演算処理が多いから膨大な電力が必要ということでしょうか?
南川:それももちろんですが、発生した熱の冷却で全体の30〜40%程の電力が使われています。
空冷、水冷のいずれもモーターが必要で、その回転制御をパワー半導体が行っています。また電力消費の大きいデータセンターですから、電源は大きく、交流と直流の変換が常に行われています。
電力の変換効率は現在95〜96%と言われており、5%程が熱として失われています。この電力変換効率を上げるのも、パワー半導体の技術課題の1つです。
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